LMKW23
前回とは逆に前半は会話少なめです。
[3日目]
「取り敢えず、どうする?」
「見てて........」
「良いのか?」
「うん........」
俺は一歩後ろに下がり傍観する事にした。
「行きます..........」
そう言ってワリシュナに突っ込んで行くフェイ、今回は投げナイフを使わないらしい。突っ込むフェイの進行方向を遮るように根が5本出てきた。根はしなりながら、鞭のように振るわれる。当たったら結構ダメージ喰らうだろうな。1本目を銀のナイフで切り裂くフェイ。普通は切れないのだろうがそのナイフは俺が作った特別製だ。焔翔の付加の1つ目の効果は斬った個所を発火させる能力だ。草系のモンスターには相性最高だろう。
そのままどんどん根を切り裂いてく、否燃やして行く。フェイは根を5本すべて切った所でワリシュナの茎にスリングカットを決める。斬られた茎が発火し、炎が少なくないダメージを与えていく。
この時、気が付いたがマシュロンを発火した時の俺はこの位に残虐だったのだろう。軽く頭を抱えたくなった。閑話休題。
1撃でワリシュナのHPを2割程削ったフェイは反撃を喰らわないように一時離脱する。間合いは元の距離に戻った。だがやはり付加ナイフにも欠点はあるらしい。フェイのナイフが砕けた。やっぱり問題は耐久値か・・・
次にフェイが取り出したのは爆裂を付加したナイフ。ワリシュナ目掛けて投げるが下から生えてきた根に阻まれてしまう。どうやら根は一定の間隔で復活するらしい。あと、根を破壊してもワリシュナにダメージは無い。
続けざまに2本のナイフを投げるフェイ。1本は真っ直ぐ高速でワリシュナへ、もう1本は狙いを外したかのようにボスの上へ投げる。真っ直ぐ投げたナイフにはウィンドシュレッドが付加されている。風を切り裂きながら飛んでいく。分かり易く言えば高速で飛ぶ貫通特化ナイフだ。ワリシュナは根を4本重ねて防御するが、ウィンドシュレッドを付加したナイフはワリシュナの防御をいとも簡単に突き抜けていく。そしてワリシュナの5枚の花弁の内1枚を貫通する。
そしてフェイの攻撃はまだ続く。外れるように投げたナイフには焔翔が付加されている。ワリシュナの真上に位置した瞬間に飛ぶ方向を真下に変える。何故そんな事が可能かと言うと焔翔を付加した時の2つ目の効果、炎の逆噴射だ。この効果を使ってフェイは敵の頭の上からも攻撃する事が出来るのだ。・・・やっぱり俺要らなくね?
「はあ..........はあ......」
ワリシュナに突き刺さったナイフが発火し花弁を2枚燃やす。なんかもう酷いな・・・
そして怒り狂ったワリシュナが花の中央部にある黄色い雄蕊の位置から液体を飛ばす。っと、危ない危ない。俺の方にも液体が飛んでくるが、結構LV差が有るのでこの程度は軽く回避できる。一方でフェイは・・・浴びてしまったらしい。
ブーーン。
遠くから羽音が近づいて来る。この羽音は・・・やっぱり蜂か。どうやら匂いでモンスターを呼び寄せる攻撃だったらしい。飛んできた蜂の名前はデッド・ビーこちらもボスモンスターでLVは 35 だ。良かった、俺にも出番はあったらしい。
「こいつは俺がやっても良いのか、フェイ?」
「........ユキさん...........お願い。」
「ん。任された。」
さて、どう戦うか。まだ飛んできている途中なので広場に入らせないように倒す事にした。フェイも俺も混戦は望んでいないのでそれで良いと自己完結する。
「焔よ来い【焔翔】!!」
俺は焔翔を使って広場の周りを囲っている森の上で戦う。デッド・ビーも俺の姿を確認したらしく俺の方に寄ってくる。この時、もう俺の中での戦闘のイメージは出来上がっていた。
まずデッドビーが針を飛ばしてきた。十中八九、毒針だろう。俺はそれを回避しながら右手に魔力を溜め飛ばす。それを少し左に放つ事でデッド・ビーに右回避を選ばせる。そこにたたみ掛ける様に爆裂を放つ。回避先を失ったデッド・ビーは空中で止まる事しか出来ない。そこに俺は、
「【ウィンドシュレッド】!!」
を放つ。そして俺はデッド・ビーの4枚羽を全て切り裂き落下させる。そして羽を切り裂かれ攻撃手段が毒針しか無くなったデッド・ビーは俺の攻撃に成す術無くやられた。
フェイの方に戻ってみるとフェイのHPが残り4割、ワリシュナのHPが2割と言ったデッドヒートになっていた。
「フェイ、行けるか?」
「【爆裂】1本、【ウィンドシュレッド】2本..........ギリギリ行ける!!」
「分かった、最後まで頑張れ。」
ホントはすぐにでもワリシュナを倒してしまいたいのだが、此処はフェイの為にも見守る事にした。
フェイは右手に2本、左手に1本ナイフを構え。右手側のナイフを2本共を投げた。ナイフは直列にボスに向かって飛んで行く。飛ぶ速度はほぼ同じ。ワリシュナはそのナイフ2本の防御を諦めフェイの手に残っているナイフを止める事だけに集中する。そして凄まじい速さでナイフがワリシュナを穿つ。1発目でワリシュナのHPを7%程削る。2発目で5%程削るがワリシュナのHPは8%程残ってしまった。そして歓喜したようにうねうねと根をうねらせるワリシュナが爆発した。
『ウィキュイイイイイィィィ........』
断末魔を上げながらワリシュナは光の粒となって消えていった。
「勝った........」
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戦闘終了
「撃破ボーナス」
・0 EXP+0 EXP 0/0
「BOSS撃破ボーナス」
・3200 EXP+832 EXP 1/2
「ドロップアイテム」
・蜂蜜×3 ・蜂の毒針 ・茨のチョーカー ・茨の根×2 ・ワリシュナの花
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「フェイ、最後のはどういう事だ?」
「【ウィンドシュレッド】の裏に.........【爆裂】を重ねて..........投げたの......」
「ああ、成程。風の影響を受けないから飛ぶスピードも上がったのか。」
「今ので........分かったの?」
「え?ああ、まあな。」
「私........勝ったよ?」
「ん?ああ、そうだな。」
「..........お願い。」
フェイが女の子座りをして頭を向けてくる。その行動で俺はフェイの言いたい事に気付き、要望通り頭を撫でた。
「.........ん.......」
「それで?欲しがってた素材は落ちたのか?」
「1つ足りない........」
「アイテム名は?」
「ワリシュナの........花」
「あ、それなら俺がドロップした。」
「貰っても......良い?」
「おう。」
そう言って俺はイベントリから小さな花を取り出し、フェイの渡した。
「........ユキさん.......ありがと......」
「おう。」
「後は.........宝箱開けて戻るだけ......」
「宝箱?」
フェイの指差す方向を見ると確かに宝箱が有った。
「あんなの有ったか?」
「うん........あった。」
「そうか・・・」
どうやら俺が気付いて無かっただけらしい。俺はフェイの頭から手を離し、宝箱に向かう。そう言えばこのゲームで初の宝箱発見か。少しわくわくしながら、宝箱の前に立つ。
「開けるぞ?」
「.......うん。」
フェイが少し俺の右手を見ていたような気がするが、今回は敢えてスルーする。宝箱を開けると見慣れたものが入っていた。
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『宝箱報酬』
・黄泉の衣
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「ユキさんが........使って.......」
「良いのか?結構優秀なアイテムだから売ったら良い額になるだろ?」
「私.......もうすでに.......薬師で結構......稼いでる。」
「・・・・・因みにどの位か聞いても良いか?」
どうしても気になってしまった。そしてフェイに耳打ちされた額に目を見開く。
「3,000,000G.......だよ。」
今回はいつもより400字多いです。