LMKW1
「おい佑真、明日朝から並ぶよな?」
「もちろん!遅れんなよ!」
「当たり前だろ、いつも遅れてんのはお前じゃねぇか。」
明日は待ちに待った、VRMMOの発売日だった。そして俺、皐月 黒夜は親友の二木 佑真と幼馴染の浅葱 摩耶と3人で一緒にゲームを買いに行く約束をしていた。
初のVRMMOの発売と言う事で、ゲーム機の本体は即日売り切れ、俺達3人と妹の嘉月は運良く本体を買う事に成功した。そして明日はそのソフトの発売日なのだ。
ソフトの名称は『LUCK and MAGICIAN and KNIGHT the WORLD』、意味は(運と魔術師と剣士の世界)だ。β版が抽選形式で本体に入っており、既にβ版を引き当てたプレーヤーが攻略サイトまで立ち上げている。因みに俺たちの中では俺以外の3人が引き当てていた。ちきしょう・・・・・
まあ、そんな事は置いておいて、ついに明日はソフトの正式なサービス開始日なのだ。あと、なぜダウンロード版は販売されないかと疑問に思った人もいるかもしれないが、その理由は単純で本体の容量が圧倒的に足りないという訳だ。
「そういえば嘉月ちゃんも一緒に来るのか?」
「ああ、嘉月も『私も一緒に行きたい~!!』って言ってた。」
「ふ~ん、そっか。じゃあ明日、朝の7時にお前ん家に集合な。」
「りょ~かい」
そう言って佑真と別れた。俺も今日は特にやることも無いし、早く帰って明日に備えることにした。
家に帰るとソファーでテレビを見ながら妹がだらけて居た。
「お兄ちゃん、おかえり~」
「うん、ただいま」
「嘉月、お母さんとお父さんは?」
「今日も仕事だって~」
「そっか、嘉月夜ご飯何がいい?」
「え、決めていいの?」
「ああ、いいぞ。ただし『LMKW』の事、β版やってるお前からレクチャーして貰いたい。」
「それだけなら、安いものだよ!私、ロールキャベツとカレー食べたい!!」
またなんと微妙な組み合わせを、まあ良いんだけどさ。後、『LMKW』は『LUCK and MAGICIAN and KNIGHT the WORLD』の略称だ。
「因みになんでロールキャベツとカレーなんだ?」
「両方好きだから?」
「それだけか?」
「それだけだよ?」
「・・・そうか。」
そうして俺は『LMKW』のレクチャーを妹から受けながら、カレーとロールキャベツという謎の組合わせを作った。
[1日目]
昨日10時に寝た俺は、6時半に起きても全然元気だった。いつも、7時起きなので少し心配だったが、余計な心配だったらしい。親も帰ってきていたようで、玄関に靴が無造作に置いてあった。親を起こさないように気負つけながら、嘉月を起こしに向かう。
ドアをノックして、起きているかどうか確認する。返事がない。
「嘉月起きてるか?」
「・・・・・」
「寝てるなら入るぞ?いいな?」
「・・・・・」
ガチャリ
ドアを開けると嘉月がベットの上で寝ていた。あと妹の部屋なので緊張したりはしない。それと折角の、毛布がベットからずり落ちていた。おそらく、嘉月が暑くて蹴り落としたのだろう。
確かに今日は、7月15日はかなり暑い。
「おい、嘉月。おーい、嘉月ー。」
「・・・・・」
軽くゆすりながら声をかけても反応がない。
「おーーい。嘉月ーー。起・き・ろ!!」
「ん・・・お兄ちゃん?」
今度はかなり強くゆすると嘉月は目を覚ました。
「ああ、おはよう。」
「おはよう。お兄ちゃん・・・それで何でいるの?」
「ハァ、7時に佑真達が来るんだよ。お前も一緒に買いに行くんだろ『LMNW』?」
「あ!そうだった。」
「お兄ちゃんちょっと待ってね!!佑真さんたちが来る前に、顔洗って服着替えちゃうから。」
「ん、いってら。」
もうダッシュで階段を駆け下りて行ってしまった。まあ、起きたから良いんだけどさ。
ピーンポーン
数分後チャイムが鳴った。ドアを開けるとそこには摩耶がいた。
「黒君きたよー」
「ああ、おはよう摩耶。相変わらず時間ピッタリ10分前だな。」
「えへへ」
「それで佑君はもう来た?」
「来てると思うか?」
「アハハ、佑君だもんね。来てるわけないか。」
「そういう事だ。」
と、そこに
「何、朝っぱらから人の悪口言ってんだよ。」
「よっ、佑真。」
「おはよー佑君。」
佑真がやってきた。そして俺の後ろからは、
「あ、摩耶さん佑真さんおはようございまーす!!」
嘉月がやって来たのであった。
「おはよーカズちゃん。」
「おう!おはよ、嘉月ちゃん!」
「珍しく遅刻無しだな。」
「め、珍しくねぇよ!!」
「よしじゃあ全員そろったことだし、『LMKW』買いに行くか!!」
「「おー」」
「人の話聞けよ!!!」
皆でお店の前まで行くと3つ程テントが建てて有って、その後ろに25人くらいの列が出来ていた。
「俺らも並ぶか。」
そう言って俺達は列の一番後ろに並んだ。因みにお店の開店はいつも10時なのだが、今日だけは8時半になっているらしい。
俺達は待ち時間の1時間ちょっとで『LMKW』の登録後、皆で何処に集合するかなどを話し合う事にした。
「そういえば、β版から容姿だけは引き継げるんだよな?お前らは引き継ぐつもりなのか?」
「俺は今の容姿のままで行くつもりだぞ。」
「私もそのつもりだよ」
「私も私もー」
「ふーん、そっか。確かこのゲームって容姿は自動決定なんだよな?」
「そうなんだよなー俺も、自由に設定できたらもうちょっとかっこいい容姿にしたのに!!」
「そっかーどんなのになるんだろ。」
色々考えては見たものの、自分ではあまり想像できなかった。
「俺は、茶色髪に身長は170センチくらいで、名前は「ユウ」だ。まあ名前見れば一発でわかると思うわ。」
「私は金髪に身長は同じで170㎝くらい、名前はそのまんまで「摩耶」だよ。」
「お兄ちゃん!私はピンクの髪色で140センチくらいだよ。名前は「ミカヅキ」忘れちゃダメだよ!」
なんというか皆そのまんまだった・・・
「お前は何時も通り「ユキ」か?」
「まあ、そのつもり。」
「分かった。とりあえず皆、初期設定終わったら1の町の噴水前集合で良いよな?」
「わかった。」
「良いですよ。」
「はいはーい。」
上から、俺、摩耶、嘉月である。
「そういえば、俺等の職業ってどうなるんだろうな?」
「皆β版の時は何だったんだ?」
「俺は槍使い。」
「私は弓使い。」
「私は剣士だったー。」
「なんか色々あるんだな......」
「ユニークジョブもあるらしいぞ。」
「このゲーム、キャラの作り直しはできないですし。1発限りの運ゲー要素が強いのよね。」
「良いのひけるかなー?」
「俺は何でも楽しめると思うけどな」
「「「甘い!!!」」」
あまりの声の大きさに、視線が集まって痛かった。まぁそんなこんなありながらも俺達は無事『LMKW』を買う事が出来たのであった。