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途中からすっかりミサナが観客になってしまい、やめるにやめられないまま最後は掴み合いの「女子同士のケンカ」になって掴み合いが取っ組み合いに変わるあたりでようやく二人は我に返った。
「これが…仮面を被る、ということか。役者は舞台の上では自分ではなく役のその人物の人生そのものを生きるという…そのことをまさに思い知った…」
「あたしはもう疲れたー。なんか冷たいモノ飲みに行こうよー」
芝生の上にミサナと並んで座っていたエミが、
「ね、やっぱりここ、練習にはぴったりの場所でしょ? ふたりとも、まるで本物の舞台に立ってるみたいだったよ」
「え、じゃあ、練習場所っていうのは…」
「ここー? こんなとこ、草しかないじゃん。もっとちゃんとしたミラールームとかあるようなとこじゃないと練習なんてできないよー」
「でも、ここって、外からは見えないし」
「そりゃそうだけどー…」
「誰も来ないし」
「まあ、確かにそうだな…」
「静かだし」
「ほんと、不思議よねー。キャンパスこんなに近いのに」
「まあちゃんとした練習場所を借りるお金もアテもないからな。しょうがない、ここでやってみるか」
リーンがそう言ったので、すでに周囲を緑の壁に囲まれたこの空間に愛着を覚えていたミサナは表情を変えずに微笑んだ。