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氷雪の狙撃手  作者: ゆうかりはるる
34/40

4-8

 建物から出てきたのは、学園の最上級生、すなわち六回生であるようだった。

 星流花祭の期間中、生徒は制服を着用することが義務付けられている。もちろん、特定のイベントや販売員などは例外として認められているが、それらは事前申請ということになっており、つまるところ、大概の生徒は制服を着用しているわけである。

 軍という組織の特性として、階級というものが組織マネジメント上極めて重要になってくる。すなわち、面と向かった相手の立場が上か下か、瞬時に視認できる必要がある。そして、軍所属の学園において絶対的な階級とはすなわち学年ということになる。

 実際のところ、一回生から五回生までは、かなり近く、数メートルの距離まで近づかないとはっきりとはわからない。識別ポイントは、胸元のポケットのラインの本数と、襟に付けた各学年を示すバッジである。

 しかし、六回生だけは別である。彼らはいつでも最上級生、すなわち上官であることがそれとわかるように、前述のポケットのラインとバッジに加えて、片腕に真紅の腕章が縫い付けられている。なお、生徒会役員や部活動の部長などは、これらの他に、メダルが右胸上部に付いたりする。ちなみに、制服のカスタマイズは校則違反として厳しく罰せられる。最低でも懲罰房行きは決定で、ヘタをすれば将来の出世にも影響がある。学園生は卒業後の進路は軍に配属されることが決まっており、これについては例外は認められていない。配属の最初から下士官となり、いきなり一般兵卒を部下として持つことになる。学園生は軍のエリート予備軍として将来の国防を担っていくことが入学の時点からすでに確定しているのである。

 そのため、将来軍のなかでのし上がっていこうという野望を持つ者は、生徒会や部活連などの課外活動にも注力し、人脈づくりや組織の幹部としての立場の構築など、熾烈な競争は、学園生のうちから始まっている。

 そんなわけで、ノカの見張っていた建物から姿を現したのは、全員腕に真紅の帯を付けた六回生だった。三回生のノカより三学年も上の六回生は、ほとんど大人と言ってもいいくらいだ。十代半ばから後半の三、四歳の違いは、他のどの年齢層とも比べられないほどに大きいのである。

 とは言え、六回生を示す真紅の帯を目にしてもノカは特に怯んだりはしていない。親友の安否に関わるかもしれないし、元々そこまで考えるタイプではないのだ。

 ノカは六回生たちの視界から自分が外れるのを待って、彼らの後をつけようと思いつつ、一応さりげない感じで佇んでいたが、急に背後から声をかけられた。

「ねえ、ここで何してるの?」

 さすがに驚いたノカがさっと振り向くと、思わず「あっ」という声がノカの口から漏れた。

 見るとノカが背にして立っていた建物の入口の戸が開いていて、ニッコリと微笑む学園の堕天使の姿があった。

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