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氷雪の狙撃手  作者: ゆうかりはるる
28/40

4-2

「あぢっ…」

 照りつける陽光を薄目で睨んだノカの唇から、思わず乙女らしからぬ声が漏れる。

 もっとも、それは、普段の彼女のイメージからして違和感のないものであるが、意外とひとりのときほど人目が気になるというか、帯を正そうという気持ちにもなるものだ。それだけ気のおけない仲間というのは貴重なものだ、ということも一人にならないと実感が湧くものでもなく、だいたい学園祭という花のイベントにおいて、何が哀しくてひとりでうろうろする羽目になっているのか。

 それもこれも、太陽がすべて悪い。

 あと、このアホみたいに多すぎる人出(というか、人入り?)と、そして、射撃大会にミスコン、そしてのど自慢大会、もとい、音楽フェス。その三大イベントのすべてに見事出場を決め、一秒たりとも普通の客として楽しむヒマのないスペックの高すぎる友人のせいだ。

 それに、いつもなら二人ずつに分かれる場合には必ずミサナとリーン、自分とエミ、という組み合わせになるのだが、今日に限っては、エミが射撃大会に教官推薦枠で出場したため残り物には福があるということでリーンとコンビを組むことになったわけだが、はっきり言ってこの組み合わせ、常にリーンに説教されている気分になるのでノカとしてはかなり御免被りたいところなのだが。

 しかも、そのリーンすらもいまはいない。

 射撃大会が押しに押しまくっているせいでミスコンが始まる三十分前になってもミサナが現れず、心配したリーンが「わたし、ちょっとミサナのとこ行ってくる」と言うなり止める間もなく行ってしまった。リーンはミサナのマネージャー的なポジションで準備を手伝うことになっていて、当初の約束では、ミスコンの始まるちょうど一時間前である十二時ちょうどに出演者控室の入口で待ち合わせていたのだ。

 リーンが去ったいま、ミサナの準備を手伝うわけでもないノカは、完全に部外者となってしまい、このままではただ、人の出入りの激しい場所に置かれた等身大のすごく邪魔な置物でしかない。と言っても、ノカの全長は、「都市」に出ると未だ初等科の学生と間違われるほどではあるが。

 ということで、こんなとこにいつまでもいたところでラチがあかないぜと、とりあえず野に出てみた、というところで冒頭の「あぢっ…」という声にようやく繋がった。

 どこへ行ってもとにかく人が多いので、少しでも人影のまばらな方へ方へと流れていく。

 いくら人出(というか、人入り?)がものすごいとは言っても、元々が学校という枠を超えた広さを持つキャンパスである。多少の勘を無意識レベルで働かせて、程なくしてノカは、一般客のほとんど来ないエリアまで辿り着いた。何の施設かわからない、コンクリートの普通の建物の陰に入って日陰の壁にぺたりと背中を付けると、ひんやりとした壁がノカの背中から熱を吸収していってくれる。

「はあっ、つかれた…」

 とりあえず人心地ついたノカは、少し離れたところから聞こえてくる喧騒を聞きながら目を閉じる。

 額に浮いた汗を日陰に入って来た風が優しく撫で、ノカはあっという間に眠りに落ちていく。

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