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ステージに上ったミサナは改めて周囲を見渡した。上から見てみると、思ったほどの人出でもない。何しろ、五年もやっていなかった学園祭を訪れる来場者数そのものが少ないし、生徒の絶対数もさほど多くはない。当然ここだけに人が集まっているわけではない。
観客の内訳で言うと、意外にも外部の来客の方が若干多いように見える。仮にも女子校であるため、若い男性の姿も結構ある。
そもそも野外の、しかも急ごしらえの会場ゆえに、当然客席だの通路だのといったものは皆無である。これではさぞやステージまで到達するのに苦労したかと思うだろうが、実際にはそんなことはなかった。遊園地のファストパスのごときだった。
と言うのも、何しろここは女子の学校とは言っても軍の教育機関であり、体育教師よりも屈強な男たちが前後と両脇を四人で固めての入場だったので、一部の熱心なファンたちでさえも大人しいものだった。だいたい本物の格闘技ファンなら選手がリングに上がるのを邪魔するわけがない。これは格闘技に似た別の競技ではあるが。
ステージの上には太さ十五センチくらいの赤い円が描かれている。この円の中で試合を行う。この赤線にはセンサーが埋め込まれており、踏むと特殊スーツに埋め込まれたセンサーのうち、いちばん足に近いセンサーから順に点灯する仕組みだ。線を踏んだだけではポイントを失うことはないものの、自主的に王手のかかったセンサーを増やせばそれだけどんどん不利になっていく。円の外はロープまでだいたい二メートルくらいずつはあるだろうか。ステージは約二十五メートルの正方形ということになる。
ちなみにこの競技にはステージに一緒に上るレフェリーはいない。判定はすべてセンサーで行われるし、だいたい一対一ならともかく合計四名もの人間が入り乱れるのだ。レフェリーなどいても邪魔なだけだろう。
赤髪キラ先輩もさすがに絡んでは来ない。何か言われたところで歓声がうるさすぎて聞き取るのは難しそうだが。
ファン、と高いサイレンの音が一度鳴る。「待機」のサインで、この二十秒後に試合は開始する。
三秒前からカウントが始まり、そして、試合が始まった。




