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氷雪の狙撃手  作者: ゆうかりはるる
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3-3

 いまさら説明するまでもないことであるが、「銃」と呼ばれる武器について、いくらか説明しておこう。

 かつて銃という兵器は、いわば金属パチンコであった。硬い物体を標的にものすごいスピードでぶつけることで殺傷するという、その点において、原始時代から人類に親しまれてきた狩りの手段であると言える。

 しかし、文明の発展した現代において金属は貴重な資源となり、かつ、無尽蔵にあると言うにはその用途が拡大しすぎてしまった。結果として、命中精度の低い武器の消耗品にまで充分な材料が回ってこなくなってしまった。

 同時に、倫理的な観点から金属銃弾の使用の禁止を求める声が次第に世界中へと広がっていった。

 その結果、対人兵器および地対空兵器、迎撃ミサイル、魚雷等のいわゆる「飛び道具」における金属銃弾の使用の禁止条約が国連加盟国の承認で実現した。殺人とか戦争とかを禁止すればいいじゃないかという指摘はまさしくその通りであるのだが。

 ともあれ、金属の銃弾が使えないことになって、銃という武器が廃れたかというと、結局武器とは手段であって目的ではないためか、それとも人類のDNAのなかに眠っている狩猟本能が呼び覚まされるのか、たかだか金属弾が禁止になったくらいで、銃が戦場や裏社会の表舞台から去ることはなかった。

 まず最初に試されたのは木の実だった。ほとんど冗談のような実験であり、単に、大して加工をくわえなくても仕えるんじゃないかとか、現地調達の可能性を夢見たとか、そんな程度であるが、いわゆるどんぐりと呼ばれる硬い皮に覆われた種子を一定の規格に研磨成型したものが、金属弾にとってかわるものとして最初に期待された。

 結果は惨憺たるものだった。

 まず、言うまでもなく、たとえ形状を整えたところで重心が均一ではないため、ただでさえさほど高くなかった命中精度が死亡した。さらに、一定以上の距離を出そうとすると、抵抗やら圧力に種子が耐え切れず、発射と同時に破裂するか、あるいは空中分解してしまうことがわかった。

 ここでようやく研究者たちの目が醒めたらしい。要するに、金属を使わず、均一で表面の硬い環境に優しいものをつくればいいのだ。

 そうして最終的に開発されたのが、現在も制式に採用されている光学式銃である。

 これは端的に言うとレーザー銃である。銃の内部構造は電気的エネルギーを高密度に変換し弾丸のように発射するのだ。

 要するに高温高圧の電気のカタマリが飛んでくるようなもので、貫通精度が高く人体に命中すると弾痕は金属弾よりもよほど鋭利で致死性が高い。一方で他の電気や磁力の干渉を受けやすいため命中精度そのものは金属弾とほとんど変わらない、相変わらず個人の技量に左右される武器のままである。

 しかし弾丸が電気である利点として、出力量を調節することによって、殺傷性能を下げることができる。

 この低出力モデルを訓練用として用いることによって、演習や訓練中の事故をなくすことができるようになり、こうして未成年のための軍事学校においても銃を用いた訓練が行われるようになったのだ。

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