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「んもーっ! いったい何でなーのよー!」
その日の昼休み、嫌な予感がしていたのでさっとどこかへ逃げようと思っていたミサナは、講義棟を脱出するどころか、講堂の出口ですでに捕まってしまった。捕まえたのはノカである。
「なんで? どうしてミサちゃんが一位なの?!」
「えっと」
答えようにも答えられないでいると、畳み掛けるように、
「そんで、どーしてあたしは選外なのよ! 十票以上でノミネーションなのに、なんであたしにはたったの十票すら入ってないのよー!」
やはりそっちが問題だったのだ。これはミサナにはどうしようもない。
「そりゃミサちゃんは確かにカッコいいしさ、射撃だってすごいしさ、背高いし、男っぽいしていうか男より頼りがいあるし、それでいて実は美形だしあたしだって付き合うならミサちゃんがいいとは思うよ?」
なんか気になる言葉が最後に付け加えられた気がしたが、ノカはさらに言い募る。
「でもね? ミスコンだよ? ミスのコンよ? 可愛い女の子が一位にならなくてどーするの? でしょ?」
昼間から絡み酒娘登場。ミサナはがっしりと上腕をノカに取られ、「う、うん…」と曖昧に相槌を返す。
「でしょ? ミサちゃんもやっぱりそう思うでしょ? やっぱりミス星流花には星のようにきらめいて花のように可憐な女の子がなるべきだと思うでしょ?」
それはそうだが、それが自分だと図々しくも言うつもりか。
「なのに、このあたしがノミネートすらされてないなんて! 実行委員は能なしばかりね! 投票のシステムもおかしいんだわ! きっとコネとか組織票とか、お金とか身体とかで買った黒い票を集めたメス●●どもがランキングの上位に恥ずかしげもなく醜い汚れた身体を晒してるのよ!」
ミサナは普段のノカからは想像もできないダークマター溢れる言葉の本流に圧倒され、言葉を発することもできない。そしてノカは、もはや目の前のミサナのことなど見てはいない。
「そうだよ! きっとそう。出来レースの茶番に皆付き合わされてるだけなんだよ!」
その茶番の速報で一位になってしまった自分はどうすればよいのだろうかとミサナは思ったが、そこで、ぎょろりとノカの大きな瞳が横に動いてミサナを見た。
「だいたい、ミサちゃん人前で水着審査とか大丈夫なの?」
思わずミサナは、凍りついていた。
「え?」




