道案内の悪魔
同時投稿になります。しなもんといいます。
同時投稿である『センドリレポート』はレポートと思ってくださいな!
……そろそろだろうか。自宅アパート(激安)から歩き始めて約30分。目的地……不明。ある日届いた手紙を開いたのが運の尽き。その手紙に入っていたウイルスソフトに自分の長年の相棒である古くさい端末(12年間使用)を侵され、ファイルやアプリをさんざん荒らし回られたあげく次の日には跡形もなく消え去っていた。……唯一つ『charderssystem』(チャーダーシステム)という名前の謎のソフトを残して。
他に何もできないので、そのアプリソフトを開くと、例によって住所などなどが表示され、他に手掛かりもないので、その住所の場所に向かうことにした。
……さてさてどうしたもんか。案外面白いかもな。……なんて考えていると、いつもの如く……迷う、迷う、迷う。くだらない思想回路を巡らせていると必ずと言っていいほどにこうやって迷ってしまう。……とっくにあんよのお勉強は終わったはずなのに。
沈みかけていたはずの夕日は沈み、人気もだいぶなくなった頃。改めて状況を確認した。もう人気がない。……ということは、道を聞けない、ということだ。つまり僕は抜け出せない迷宮の中に入りこんだも同然、ということになる。……実際は簡単に抜け出すことは可能なのだが、なぜかその方法を試す気にはなれなかった。何故かは知らないが、そんな方法を使うことがおこがましく感じられたのだ。などと、おかしな思想をめぐらしていると不意に声をかけられた。
「どうしたんです?こんなスラム街にきて。」
とても綺麗な声だ。第一声を聞いた瞬間はそう思った。だが、その後に続いた言葉に疑問が募る。……スラム街?普通の街だったはずなのにスラム街だと?あまりに信じられない言葉に耳を疑った。だが、そのあとに続けられた言葉の方がさらに衝撃的だった。
「……もしかして、迷ってます?」
やばい…!!とてもまずい。確実にこの女性は、僕が迷っていることに感づいている……!そう感じた僕は早急に対処しようと試みた。……が
「あ、う……その、迷っているわけでわなくてですね、その─────そう、ただ、散歩しているだけなんです……!」
ダメだった。口下手な部分が思いっきり初めて会った人にさえも露見した瞬間だった。……初対面の、しかも(たぶん)気遣ってくれた女性に対していうような言葉ではない…!そう感づいて数瞬後、女性(おそらくスラム街にすんでいる)が僕に哀れむような視線を向けつつ話しかけてきた。
「あ、あの、強がらないほうがいいですよ。味めての人はみんな迷いますから……。───どこから来たのか、どこに行きたいのかもわかりませんけど、教えられる限りならお教えしますので……」
……女神だ。まさに女神としか言いようがない。哀れむような表情をしていたことはひとまず置いておくとして、とにかく女神のような女性だ。この状況で、しかも初対面で、ここまで優しい人間など、これまでにいただろか?この女性は本当の女神なのではないだろうか?……などというくだらない思想を僕は相変わらず巡らしていた。最近、こればかりだ。困ったものだと自分でも思う。とりあえず、この女性のはなった言葉に報いるべく、懇願(?)してみることにする。
「えっと、その、お願いしてもよろしいんですか?」
間伐入れずに目の前の女性は即答する。
「はい、任せてください。迷って……じゃなかった、道を探すんでしたら私に任せてください。こう見えても、ここらの地理は頭に入ってるんですから!」
……完全に気を遣わせてしまっていた。完全に『迷って』といったあとで訂正している。もう、泣きたいところだが、ここは男らしく我慢する。……女性に気を遣わせている時点で男らしさも何もないかもしれないが、少しだけ残った男らしさのために我慢する。きっと、そうなんだ。うん、そうに違いない。そう考えつつ、できるだけ自然な動作で自分の腕にはまったお気に入りの時計(モトカノからのプレゼント)に目を向けた。時刻は、出発した時間から、1時間とちょっと経過していることを示していた。……制限時間あと約20時間。……そう、あの『charderssystem』なるアプリソフトの表示時間には制限時間がついているのである。物騒なことに、画面には時限爆弾のような画像が表示され、その画像の中のディスプレイではカチ、カチ、と音を立てながら、時間が自然減少している。推測する限り、その表示時間が、制限時間なのだろう。細かく僕の端末の状況を説明するならば、中心に時限爆弾のような画像が表示され、画面の下部にはアプリ名『charderssystem』と書かれていた。また、その上には、例の住所が表示され、それを頼りに歩いた挙句、このスラム街(?)にたどり着いたのであった。……そのほかの細かい表示(バッテリ残量など)は置いておくとして、この女性についていくことにする。なので、目的地(詳細不明)の住所を伝えなければならなかった。……正直面倒くさい。心底面倒くさい。画面を見せれば早いのだが、なんとなく、僕のポリシーが邪魔をしている。邪魔をしてくるポリシーなど投げ捨てて素直に見せれば早いのに……。
「あの、場所が分からないと道案内することもできないので、住所いただけません?ずっと手に持ってるから、きっとその端末に表示されているんでしょう?」
……しまった、完全に怒っている。顔は笑っているが、目は『道案内してあげるんだから早くしなさいよね?』と言いたげな目をしている。……前言撤回。この人は女神ではなく、普通の人間です……。
くだらない自分の思想は置いておくとして、見せよう。道案内してもらわなくてはいけないのだから。
「あ、あのこれなんですけど……場所、わかりますか?」
我が愛すべき長年使用の端末を見せながらそう尋ねると、彼女の表情&態度が豹変(急変)した。
「……はあ、あのクソ上司、またハッキング使って勧誘したのか。まあ、私なら、詳しすぎるぐらい詳しいから、安心なさい。…………付いてきなさい。」
………言葉を失った。あまりもの豹変ぶりに、まるで、声帯が抜き取られてしまったかのように言葉が出なかった。先程までの女神っぷりはどこへやら。まるで、どこかの女上司みたいな口調になってしまった。だがしかし、この言葉に意味するところは別にあると感づく。このような言葉遣いであるということはこの女性には上司がおり、向かうところは『知りすぎるほどに』知っているのだ。……結果論、向かう場所は、何かしらの組織または会社であり、(正直、後者であることを願う)僕は勧誘および招待されたということになる………はずだ。
簡単に誰でも思いつくような推論を脳内で並べ、今から向かう場所はどんなところだろうか?などと空想をめぐらしていると不意に女性(こちらも詳細不明……ということにしておこう)に声をかけられた。
「どうしたの、そんなに黙りこけって?うちの上司に選ばれたんだから、多分かなりの人材でしょうけど、話でもしてみないとどんな人間かわからないでしょ?何か話しましょう。いや、あなただけが喋りなさい。私はあなたのくだらない身の上話とかとかに耳を傾けてあげるから。」
───とかとか、ねぇ……。やはり、女神などとは真逆、まさに悪魔だ。この世に転生してきた悪魔……とでも言っておこうか。
「悪魔みたいな女だ……。女神だとか思っていた自分が馬鹿に思えてくる………」
小声で、極力聞こえにくいように言った。だがそんな努力は無意味、この目の前の女には悪魔だけに、、地獄耳がついているらしかった。
「あらあら、案内してもらう側でその言い分はひどいんじゃない?もっと、感謝してみてはどうなの?……ていうより、最初は私を、女神だと思っていたと、その事実まで暴露しているわよ?」
……迂闊だった。後悔先に立たずとはこのようなことを言うのだろうか?小声であっても、口に出していったのは間違いだった。やはり、日本語の勉強をやり直したほうがいいのかもしれない。僕は、自分で言うのもなんだけど、一応、学年トップ付近の成績を残し続けていたんだぞ?なのに、日本語の再勉強をしなければならないことを再確認させられるとは……悪夢みたいな日だ。
「まあ、あなたのくだらない戯言は置いておくとして。……早く付いてきなさい。行く場所もわかったことだ死ね」
何か今、文字化けみたいな感じで誤字が出てきたんですけど。“死ね”だけ、大きく強調されていることについてこんな形容しかできないとは。我ながら、呆れてしまう。……はあ、相当テンパってるなあ、僕。
「まあ、付いていくことにするよ。じゃあ、案内お願いします。」
できるだけ、傲岸不遜に聞こえるように言ってみた。結果、
「あ、そう。まあ、迷ってたことがもどかしくなるぐらい近いとこにあるから心配しなくてもいいわよ、お・こ・さ・ま・く・ん」
……つくづく失礼な女だ。初対面の人間だというのにここまで毒舌を吐ける人間を、僕は未だ見たことがない。いや、あるはずがない。
「………」
返答は無言。その後、僕も女も無言で目的地へと向かった。
この先も見ていただけると嬉しいです。




