第九話 七告
私はここ数日間で起こった事象を完全に理解していないのにもかかわらず、ナズナさんは次々と情報を頭に埋め込んでくる。
閑話休題、この御影カスミという女性はナズナさんに似ていた。この場合の「似ている」というのは性格や外見がほぼ同じという意味合いではなく、どことなく同じような雰囲気を
放っていることに対して言っている。というか、外見に関しては反転していた。本当に反転していた。
まず、ナズナさんの場合だが、銀髪に小さな「!」マークの髪飾り2つ、白のワイシャツに黒の外套。
次にカスミさんの場合、黒髪にリボンのような髪飾り、黒のワイシャツに白の外套。
やはり似ていた、どことなく。
「カスミさんとナズナさんって似てますね」
するとナズナが言った。
「そうでもなくない?カスミちゃんちょっとチャラいし」
そう言われてもう一度カスミさんの全体を見直すとへそ出しコーデだった。
まぁ確かに。チャラい。だかそれ以外は似ている。
「ナズナ先輩、ちょっと」
カスミが手招きする。
そして二人は部屋で少しの間会話を交わした。
「……わかった」
ナズナさんがそういうと二人はこちらへ戻ってきた。
「セイカちゃんは、不思議な音が聞こえるんだよね?」
「はい──なんか、いろんなものが混じり合わさったような音です」
「カスミちゃんは夢で怪異と繋がれるように、セイカちゃんも音で繋がっているんだ」
まぁ筋が通る話だと思った。
すると、ナズナさんは何か思い出したのか口を開いた。
「ところで、セイカちゃんは黙示録のラッパ吹きを知っているかな?」
「はい…なんか聞いたことはあります」
「あれはね───ガチでマジなんだよ」
「ガチでマジ…?」
「そう、現代でも起こりうる怪異の一種──というか、怪異の枠は超えているかな。この世界自体のプログラムみたいな感じ?」
「それってなんで起きるんですか」
「この世界のバグ、怪異の存在を世界が受け入れてくれないからだと私たちは考えている。この現象を七告と呼んでいる」
「ラッパ吹きって確か七回ですよね…?全部なったらどうなるんですか?」
「黙示録だと天変地異とかその他諸々だったけど……現代だと尋常じゃないくらい怪異の発生率が高いから、世界が終わる可能性もあるね」
世界が終わるというのは、私にとって規模が大きく、安易に想像できるものではなかった。
「世界が終わるのが嫌だから、プログラムが処理する前に怪異を処理するのが怪異事務管理所というわけ」
「なるほど」
「まぁ七告がラッパ吹きへの恐怖から派生した怪異の可能性もあるから何が起こるかわからないんだよねぇ…。あっそういえば──セイカちゃん、音を聞こえるって言ったでしょ」
「はい」
「多分その音、七告の前段階みたいなやつだと思うんだ。」
「じゃあ、もう少しで七告が始まるということですか?」
「うん、多分っていうか絶対起こるんじゃないかな。セイカちゃんが体験した通り、きさらぎ駅派生型怪異のような甲種の場所的怪異の報告が後を絶たない」
「それはつまり、強力なバグが大量発生して、この世界に負荷がめっちゃかかっているということですか?」
「おぉ~!よくわかってるね。そういうことだよ」
一番正解したくないものに、私は正解してしまったのかもしれない。
「それでねセイカちゃん、私たちはその音が聞こえないんだけど、この管理所の職員に、怪異の存在を察知できるのと同じように、セイカちゃんは七告の発生を察知できると思うんだよね」
「私もナズナ先輩と同意見です!」
「ええ…できるのかな…」
「セイカちゃんはナズナ先輩が見込んだ存在なだから、そういう才能があると思うよ!」
「なんか…役に立てるようで嬉しいです」
「じゃあセイカちゃんに必要なのは実戦経験かなぁ」
そのあとナズナさんから言われた言葉は、私の運命を大きく変える────いや、言われなくとも同じ道を、運命をたどっていたと思う。もう運命ではなく、宿命というべきだろう。私が生まれた時から、もしくは私が生まれる前から宿命として、因果として魂に刻まれていたのだろう。絶対に変わることのない人生の道。その道を少し大きくジャンプして進んだだけなのだ。




