十四話 他愛もない話
学校の中休みは、少々居心地が悪いと感じる。
この居心地の悪さが怪異現象だとしたらまず、ナズナさんに報告したほうがよさそうだ。まぁそんなわけないだろう。
友達がいないとか、決してそういうわけではなく、だけどもいつも話す友達がいるかと言われれば、そうでないと言えるのだろう。
それはともかくとして、この居心地の悪さというのがどこから来ているのかというのは、ある程度の見当はついている。例えば、音がしないことだ。
七告の影響かどうかはわからない。
そう、一切わからない。
本当に、何もない。
そして最近何かとつけられている気がする。
階段の踊り場とか、背中がぞわぞわするというか、もはや痛いくらいだ。
なぜつけてくるのだろう?本当に……正直言っちゃえば気持ち悪いのだけれども。
まぁこういった所以があり、中休みは本当に居心地が悪い。
『ビ ー ン ボ ー ン バ ー ン ボ ー ン』
放送機器が古いせいだろうか、音割れがひどい。
『isa;n?i‘tuk@先生、至急、職員室まで……』
誰先生といったのだろうか?
もう音割れとかそういう問題ではなく、逆再生のようになっている感じだったけど。
すると、耳に馴染んだチャイムが鳴った。
教室に戻り、窓の外を見てみる。
校庭からぞろぞろと人が、波のように校舎へ押し寄せてくる─────そして、校庭には誰もいなくなった。
そう思っていたのに、いつの間にか、校庭のど真ん中に誰かいた。
一目見た感想はくねくねだ……が、よく見たら違った。
白い喪服を着ている少女だ。まぁ普通の少女だ。
いやまぁ、少女が喪服を着て中学校の校庭に独りでポツンと立っているということが、そもそも普通ではないのだが。
「おーい、お前ら授業始めるぞー。席着けー……」
数学の先生がそう言った瞬間、「はーい」と、かなりの余韻を残しながら、何人かが返事を返した。
私がもう一度窓を覗くと、もう少女はいなかった。多分、私の見た限りでは。
何だったんだろう?
偶然何かを見てしまったのだろうか───
それとも少女は自分という存在を私に見せつけていたのだろうか───
ふと「はぁ」と、ため息を漏らす。
いや、今は五限目だ。
今日は月曜だから、もう後は清掃をしたら学校は終わりなんだ。
あと、ひと頑張り。
そういう風に、私は勝手に思っていた。
────学校は終わったが、私は先生に呼び出されていた。
カウンセリングについての話をされた。
授業一コマ分くらいの時間をそれで消費してしまった。
正面玄関から校門にかけて、人は誰もいない。何もない、実にシュールな風景が出来上がっていた。
鞄を担ぎながら俯いた状態で歩く。
皮肉なことに、あまりにも静寂な環境に、音を求めてしまった。
足音を立ててみる。
ザッザッザッ───
うん、良い。
ザッザッザッ───
ザッザッザッ───
ザッザッザッ───
「楽しい」
音を聞いてこんな感情になれたのは久しぶりだ。
地面の色が変わった。
どうやら校門を抜けたらしい。
顔をあげてみると、目の前の横断歩道の先には、ナズナさんがいた。手招きをしている。
信号は赤だ。
目の前を車がビュンビュンと走り抜けていく。
やがて信号は青へと変わった。
そういえば青信号というのは、所によって多少の色は異なるが、基本的には緑色をしているのに、なぜ青色をしているのだろう。
青虫とか、青汁とか、青りんごとかも全部緑じゃないか。
そんなどうでもいいことで頭がいっぱいになる。
横断歩道を渡り終えると、そんな考えは一気に抹消────というか上書きされた。
目の前にいたのはナズナさんではなく二輪のクチナシだった。
さっきまで手招きしていた場所に、それはいた。




