十三話 存在未満
僕は怪異が好きだ。
だからといって、遭いたいわけではない。
遭いたいわけではないのだ決して。
最近、日常という日常が崩壊していっているような気がする。
何やら今、世間では『おかしな投稿』や『知らない写真・動画』など、怪異現象とみられる事象が幾つも発生しているのだ。
だが、そんなのを追っている暇は僕にはない、なぜなら僕、間駿河は、中学3年生。即ち受験生なのである。
僕はクラスの副委員長だが、クラスの人から推薦されただけで、勉強ができるというわけではない。『クラスの責任を持つ立場』イコール『頭がいい』というのは単なる先入観というか、思い込みに過ぎない。
まぁそういうわけで、勉強をしなくても点を取れるような天才ではない僕は、どうにかして勉強内容を定着させないといけないのだ。
────疲れた。
椅子を回す。
止まった先に、ラジオがあった。
「最近は全然聞いてないな」
ラジオ<ボッ
ラジオからいきなり、小さい爆発でも起きたのかと思うような音が出た。
『…続いては…ラジオネーム梨口さん!』
『いい名前っすねぇ』
『えっと質問は…こッ…はとッ……』
『んーとこれムズイ…ん?なんか言ってるよ』
『はい、はい…ちょっと声がおかしくなってたらしいです』
『あ、あ、あ、あー。OKです。続けましょう』
『えーとじゃあ、もう一回読みますね────』
「なんでいきなりついたんだ?」
コンセントを確認してみる……プラグは接続されていない。
「あれ、2電源方式だっけか?」
プルルルル────
プルルルル────
プルルルル────
プルルルル────
発信者不明とスマホに表示されている。
「はい」
『────────────────────────』
とても不気味だ。
この電話の先に、何もない、無限の闇が広がっているような。そんな感じだ。
いや、音がしないわけではない。
多分、そんな気がする。
なんというか本題に入る前の間がずっと続いているというか。
何を言っているかわからないだけで、何を言っているか聞こえないだけで音を発しているのではないだろうか?
いや違う、誰かが言えてない?
可能性がありすぎる。だが僕にはそれを決めることができなかった。
段々と恐怖が蓄積してきたので電話を切った。
このあと一日中、特に何か起こるということはなかった。
──────
中休みの学校は騒がしい。
そんな中僕は、相手はどうだか自分がそう思っているだけかもしれないが、親友と呼ぶことができるであろう友達と、中庭で話していた。
「ねえ、間」
「どうした」
「昨日、電話鳴った?」
「鳴ったよ」
「だよね、クラスのみんなも鳴ったって言ってる」
「そんなことあるんだな」
「あ、その電話には出た?」
「うん、出たよ」
親友はわかりやすく驚いた。
「間が初めて出たって言ったよ」
「まじか」
「どういう感じだった?」
「なんか、表現しずらいんだけど……言えてないっていうか読めてないっていうか。なんきゃ……」
「いつも噛むね」
そう、いつも噛む。あらゆる原稿を頭の中で用意し、それを選ぶ作業が、喋る速度に追い付いていないからだ。
「あっ、原稿が破れてるみたいな、読めない状態っていう感じ」
「んー?あー……なるほど」
「……というか電話以外にもラジオとかいきなり鳴らなかった?」
「いや、ラジオ持っていないからなぁ」
「あーそっか」
キーンコーンカーンコーン──────
「じゃあまたあとで」
多少の会話を交わし階段の先で二手に分かれた。
学校の階段からは校庭がよく見える。
そういえば、少し前に一学年下で騒ぎがあった。
名前までは覚えていないけど、確か──蓬莱、だったか。
次の瞬間に僕は、それを完全に思い出した。




