十二話 告知宣伝
町中で話題になっている。
人々のスマートフォンの画面には「告知」が映し出されていた。
内容について言及している者はいない。
正確には──誰も、言及できていない。
いや、解釈を広げればいるということになるだろう。
────
あいうえオラウータン
「なんか結構前に消した投稿が復活してる」
あいうえオラウータンさんへ
梨口
「それ自分もなってます」
○○
「自分もです」
××
「なってる」
────
猫どろ
「電話が勝手になるんですが?出てみたら何言ってるかわかんねぇし」
猫どろさんへ
水色カイト
「それ大丈夫?詐欺電話の一種かな()」
猫どろさんへ
梨口
「それ自分もなってます」
×○
「皆、なってるっぽい」
────
梨口
「これ、自分が鳴ってます!」
梨口さんへ
梨口
「鳴ってますよね!」
────
ナズナはスマホとにらめっこしていた。
おそらく、このSNSの異常に気がついたのは、怪異事務管理所の中でナズナが初めてだろう。
なぜならこの現象が起きているのは午後二時半。
今日のこの時間、怪異事務管理所では全体事件調査が予定されている。
そう。つまりナズナは今この瞬間──堂々と、サボっていた。
────数時間後
「所長!」
「うん?ああ、ナズナ君か。どうしたんだい?」
「あの、これ見てください」
「ん?どれどれ…」
ナズナは投稿から返信欄まで、特に異質なものを、
半ば無理やり────とまではいかないが、
まぁかなり強引に所長の脳裏に刷り込ませた。
「これはつまり…七告が始まったという認識でいいのかい?」
「まぁそう考えていいでしょうね」
「なるほど…」
「おそらくなんですが、この第一告目の現象は、幻聴や会話の不成立などが主軸のものだと思われます」
「おお、もうわかってるんだ」
「この前勧誘したセイカおかげですよ。自ら調べてくれました」
「偉いね…中学生なのに…。君にもそのくらい働いてほしいよ」
「え?」
「だって今日、事件調査。サボったでしょ?」
「いや…まぁ…はい。すみません」
この後ナズナは数十分説教された。
所長としてはかなり厳しめに行っているようだが、
果たしてその厳しさはナズナに伝わっているのだろうか。
────
「セイカちゃーん、やばいかもー」
「ナズナさん、どうしたんですか」
「なんか七告発動の可能性について?会議でいろいろ取り決められたんだけど。『現に起こっていたとしても被害が今のところないため保留』ていう結論に至っちゃったんだよね」
「それっていきなり暴走でもしたときに被害がやばくないですか?」
「そうなんだよ、だから異議申し立てたんだけどちょっと祭務局と祓務局の局長が怖くて。結局下がっちゃった」
このナズナさんを怖がらせる人がいるとは思ってもいなかった。
いや、人だとは限らない。もしかしたら怪異の可能性だってある。
しかし、ナズナさんは怪異に怖気づかといわれると、そうではないと思える。
なんなら人に怒られるほうが怖くて萎えそうだ、この人は。
「とりあえず、セイカちゃんは学校のこととかあるだろうから今日はとりあえず帰っていいよ」
「ありがとうございます。!」
───自宅
『…続いては…ラジオネーム梨口さん!』
『いい名前っすねぇ』
『えっと質問は…こッ…はとッ……』
『んーとこれムズイ…ん?なんか言ってるよ』
『はい、はい…ちょっと声がおかしくなってたらしいです』
『あ、あ、あ、あー。OKです。続けましょう』
『えーとじゃあ、もう一回読みますね────』
確定だ。少なくとも、私の中では確定だといえる。
もう七告は始まっているんだ。
私には今はっきりと聞くことができた。
今のは機材トラブルなんかじゃない。七告、すなわち怪異の影響だ。
そう、明らかな幻聴だったということだ。
今回は『音』という現象だったから私がいち早く気が付くことができたが、次はそうだとは限らない。
カスミさんの夢視が一番に異常に気が付くかもしれない。
いや、いま考えるべきはこのことではない。
『どうすればこの七告を終わらせれるか』だ。
いや、そもそもの話。終わることはあるのだろうか?




