戦場の心得① おなかはパワーの源ですもんね…
「それは……おそらく、お師匠さまがお茶に毒を……」
心配して窓から顔を出したマールムが、神妙な面持ちで言った。
「茶に? 毒!?」
ジュノは驚いた。思い返しても、あの時ゴーシュ様は自身と同じポットからその茶を飲んでいたはずだ。
「……ジュノさんのカップのほうに仕込んであったのでしょう。ヒマを」
「まじか! いや、マジですか……!」
「私も、初めての授業でやられましたから、間違いないと思いますよ……」
マールムは表情を曇らせながら、そして口を不服げに尖らせて告げた。彼女曰く、どうやらこの先、ジュノは半日、トイレの往復が続くらしい。
「でも……入門は叶ったということですかね……」
顔を青くしながらジュノは微笑んだ。腹を押さえ、痛みをこらえながら。
戦場では、敵がどこにいるかわからない。時には自陣にも。
だから口に入れるものには最大限の注意を払え──。
と、言うことだろうか。
「そう思うほかありませんね……」
ジュノは、失礼!……と、またトイレのある母屋の裏手へ向かった。
初めての教導は、マールムが一つまみの塩を加えた白湯とともに、ジュノの身体へと深くしみこんだに違いない。
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寒くて静かな砦の暮らしも、誰かに読んでもらえると少しだけあたたかくなります。
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