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神の手は祈りの形をしていない /異能力を使って将来犯罪をおかすと隔離教室に入れられたボクら(でもボクの異能力、幻聴が聞こえるだけで……)  作者: 陽々陽
012_歪む世界

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012_9

ユウ「突然なんだけど……今日から、座学担当の先生が来ます!」


 朝のHRで開口一番、ユウが大声で発表した。自分で拍手する。


ルイ「女? 女?」


 ルイが前のめりに聞いた。


こはく「んー、女の先生」


ルイ「なんでお前知ってんだよ?!」


 意外なところから回答があって、ルイはおどろいた。


こはく「食料補給のとき会って、一緒にここまで来た」


ルイ「あー、朝の?

 で、美人? 美魔女? フェロモンは?」


こはく「マジかわ」


ルイ「そっちか! いいぞ、大丈夫!」


 ルイのテンションはうなぎ登りだ。


ルイ「ユウ! その先生の……体型は……」


ユウ「ま、まあ……おとなの女性……かな……?」


 おお……と、ルイは感嘆の声を漏らした。


ルイ「ソウガ、どうする?! 凄いことが起きるかも知れないぞ!」


ソウガ「巻き込むんじゃねえよ」


 振り返ったルイから、ソウガは視線を逸らした。


ユウ「では、田中道子先生! どうぞ!」


ルイ「道子……じゃあ、みっちゃんかな~!」


 ……


ユウ「先生? どうぞ」


ルイ「みっちゃーん!」


 ……


ユウ「……ちょっと、待ってて」


 ユウが廊下の外に出た。なんだか揉めているような声が聞こえる。

 少し経って、ユウが教室に入る。その背に隠れるようにして、もう一人、女性が。


ルイ「おば……」


 ルイは言葉を飲み込んだ。

 ちょっと、おとなの女性過ぎる……ルイはため息をついた。しかし、彼は気を取り直し、彼にとって最高のフォローを口にした。


ルイ「たしかに、期待は下回りました。しかしそれは不当に高い期待でした。

 よく見ると肉感的で可愛いので、ボク的にはアリです。気を落とさないで」


 田中道子はツカツカとルイの元に近付いた。

 そして肩に手を置くと、ギリギリと力を込めた。


みっちゃん「お前、顔おぼえたからな……」


ルイ「ごめん! ごめんて、みっちゃん!」


********


みっちゃん「ええと、田中道子です。教師生活19年。これほど入りにくい空気にされた教室は、初めてでした」


ルイ「いやあ、みっちゃんの初めて、奪っちゃったなあ!」


みっちゃん「……お前、マジでいい加減にしろよ」


 ルイはしゅん、と小さくおとなしくなった。


みっちゃん「私の異能力はないようなものだから、気にしないで」


ノクス(……)


みっちゃん「ちょっと、名前と顔を確認したいから、名前呼んだら手を上げてね」


 みっちゃんはそう言うと、手元の紙に目を落とした。


みっちゃん「斑鳩ミナト……いかるがって何よ。どこまでが一文字目でどこからが二文字目なのよ」


ミナト「え?」


 手をあげたミナトは、名前の後にブツブツと続いたつぶやきを聞き返した。

 みっちゃんは気にした様子もなく、続ける。


みっちゃん「鳴神サキ……神て。中2全開じゃない。

 久遠ユウ……詩人か。

 結月あかり……ギャルゲーかと思ったわ」


ユウ「せ、先生?」


みっちゃん「あら、ごめんなさい。みんなの名前があまりにもこまっしゃくれてたので、つい……

 気にしないでね」


 うふふ、とみっちゃんは口に手を当てて笑った。


みっちゃん「百瀬こはく……と、百瀬ましろ……百をももって呼ばすのはかわいこぶってるわ」


こはく「……みっちゃん、田中だから、珍しい名前にコンプレックスあったりする?」


みっちゃん「そんなことないわ。ただ同じクラスに8人田中がいたときの気持ちについては、教えてあげたいわ」


こはく「うける。みっちゃん、おもろ」


みっちゃん「葛城ルイ……クズの字がマッチしてるわね」


ルイ「オレだけちょっと違わない……?」


 ユウはクスクス笑った。


ユウ(ボク、この先生好きだな)


ノクス(ケッ……)


********


ノクス「ククク……」


 短い通話を終えたノクスは、笑いをこらえることが出来なかった。


ソウガ「……どうしたんだ?」


 ソウガはベッドから身を起こした。

 今は昼休憩の時間。食料補給のために早朝から活動していたユウとソウガは、襲い来る眠気にあらがえず、自室で仮眠を取ることにした。


 ユウは一瞬で意識を失ったのだろう。ベッドに入るなり、ノクスに切り替わった。

 そしてノクスは、猛然とタブレットPCをいじりだす。さらにタブレットPCを介して、だれかとの通話を行っていた。


 ソウガは本当は少しでも睡眠を取りたかった。しかし、ノクスがここまで上機嫌なのは珍しい。反応しなければ悪いような気がした。

 

ノクス「やっとだ! やっと全てがつながった!」


 よほど嬉しいのだろう。ノクスは部屋の中で天を仰いだ。

 睡眠が必要ないというのはうらやましいことだ、と、ソウガはぼやける頭で考えた。


ノクス「ユウのバカには焦らされたが、異能力さえ残れば問題ない!」


 ソウガには、ノクスが何を言っているのか、さっぱり理解が出来ない。


ソウガ「だれのことだ?」


 質問はしたが、ソウガは答えを期待していなかった。ノクスは秘密主義だ。

 これまでも、思わせぶりにはぐらかす言葉しか、返ってきていない。


 だから、ノクスが揚々とタブレットPCの画面を見せつけて来たのは、意外だった。


ソウガ「これ……今日来た先生か……?」


 ソウガは、画面に表示された文字を目で追った。


 田中道子

 異能力:対象者の異能力を消去する

 ※特定禁止能力

  学院の壊滅的な危機を避ける場合に限り、使用を許可。


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