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神の手は祈りの形をしていない /異能力を使って将来犯罪をおかすと隔離教室に入れられたボクら(でもボクの異能力、幻聴が聞こえるだけで……)  作者: 陽々陽
010_刃は教室にある

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010_1



 朝課題の時間。エレナは、あかりが見当たらないことに気がついた。


エレナ「……あかりはどうした?」


 あかりと同室のしおんに尋ねる。


しおん「あ! そうだった。伝言頼まれてたんだった!」


 エレナに声をかけられて、しおんは両手をぱちんと打ち合わせた。


しおん「あかりちゃん、調子が悪いから今日は休ませて欲しいって!」


エレナ「ふむ……」


 あかりは二日連続でトーマの夢に潜って、問題を解決してくれた。きっとその疲れが出たのだろう。

 かくいうエレナも、少し寝不足だ。


エレナ「今日は、紹介したい人が来ているが……仕方がないな」


しおん「えー? だれ? だれー?」


 目を輝かせたしおんに、エレナは笑顔で答えた。


エレナ「すぐわかる」


********


エレナ「これまで、私一人でこのクラスをみていたが……

 少々オーバーワーク気味でな、座学を担当する教官を追加してもらうことになった」


こはく「エレエレ~、その先生って男~?」


 こはくが手をヒラヒラさせながら尋ねた。

 その馴れ馴れしい態度に、エレナは眉をひそめた。

 夜、部屋に来ることを許してから、少し距離を近くしすぎたかも知れない。


エレナ「いや、女性だ。まだ若いが優秀な教官と聞いている」


こはく「イケメンじゃないなら、もう、いいわ……」


 興味をなくしたこはくは、机につっぷして窓の外に目を向けた。

 ただでさえ、トーマとアリスの顛末を聞いてテンションが下がっているところだ。


ルイ「若い女性というのは、大変、結構なことですね!」


 逆にテンションが上がったのは、ルイだった。


ルイ「その先生というのは、その、エレナさまより、あの、女性らしい方でありますか?

 体型的に!」


エレナ「質問の意図がよく分からんが……私などより全然おとなの女性だと言っておこう」


 おお……と感嘆の声を漏らして、ルイは改めてエレナを見た。

 正確には、エレナの突き出した胸と引き締まった腰とスラリと伸びた足を見た。


ルイ「聞いたか、ユウ! これは、凄いことが起きるかも知れないぞ!」


ユウ「ボクを巻き込むなよ」


 肩を組んできたルイをユウは手で押しのけた。


エレナ「実は、早朝ヘリで到着しておられて、もうそこの廊下にいらっしゃる」


ルイ「おお! それなら、もったいつけずに、すぐ来てくれたら良いのに! やったな、ユウ!」


ユウ「だから巻き込むなって」


エレナ「では、紹介しよう。鈴木光代先生だ」


ルイ「光代……じゃあ、みっちゃんかな~!」

 ……


エレナ「先生? どうぞ」


ルイ「みっちゃーん!」


 ……


エレナ「……ちょっと、待っていろ」


 エレナが廊下の外に出た。なんだか揉めているような声が聞こえる。

 少し経って、エレナが教室に入る。その背に隠れるようにして、もう一人、女性が。


ルイ「おば……」


 ルイは言葉を飲み込んだ。

 全然おとなの女性って、そういう意味か……ルイはため息をついた。しかし、彼は気を取り直し、彼にとって最高のフォローを口にした。


ルイ「たしかに、期待は下回りました。しかしそれは不当に高い期待でした。

 よく見ると肉感的で可愛いので、ボク的にはアリです。気を落とさないで」


 鈴木光代はツカツカとルイの元に近付いた。

 そして肩に手を置くと、ギリギリと力を込めた。


みっちゃん「お前、顔おぼえたからな……」


ルイ「ごめん! ごめんて、みっちゃん!」


********


みっちゃん「ええと、鈴木光代です。教師生活15年。これほど入りにくい空気にされた教室は、初めてでした」


ルイ「いやあ、みっちゃんの初めて、奪っちゃったなあ!」


みっちゃん「……お前、マジでいい加減にしろよ」


 ルイはしゅん、と小さくおとなしくなった。


みっちゃん「私の異能力はないようなものだから、気にしないで」


ノクス(ないようなもの、ね……)


 つまり、あるのだ。なにかの異能力は。


みっちゃん「ちょっと、名前と顔を確認したいから、名前呼んだら手を上げてね」


 みっちゃんはそう言うと、手元の紙に目を落とした。


みっちゃん「斑鳩ミナト……いかるがって何よ。どこまでが一文字目でどこからが二文字目なのよ」


ミナト「え?」


 手をあげたミナトは、名前の後にブツブツと続いたつぶやきを聞き返した。

 みっちゃんは気にした様子もなく、続ける。


みっちゃん「鳴神サキ……神て。中2全開じゃない。

 早乙女アリス……溢れんばかりの少女趣味。

 常磐しおん……ギャルゲーかと思ったわ」


エレナ「せ、先生?」


みっちゃん「あら、ごめんなさい。みんなの名前があまりにもこまっしゃくれてたので、つい……

 気にしないでね」


 うふふ、とみっちゃんは口に手を当てて笑った。


みっちゃん「百瀬こはく……と、百瀬ましろ……百をももって呼ばすのはかわいこぶってるわ」


こはく「……みっちゃん、鈴木だから、珍しい名前にコンプレックスあったりする?」


みっちゃん「そんなことないわ。ただ同じクラスに3人鈴木がいたときの気持ちについては、教えてあげたいわ」


こはく「うける。みっちゃん、おもろ」


みっちゃん「葛城ルイ……クズの字がマッチしてるわね」


ルイ「オレだけちょっと違わない……?」


 ユウはクスクス笑った。


ユウ(ボク、この先生好きだな)


ノクス(油断すんなよ、このトンデモ学院の教師なんだからな……)


みっちゃん「リュカオルフェウス……アニメ見過ぎか」


リュカ「良いのですよ……光代オルフェウスになっても。

 ああ、私は熟れたその実に引き寄せられる1羽の小鳥……」


みっちゃん「お前、この歳に結婚ちらつかせるとか、一生分の覚悟背負ってんだな……?」


リュカ「……えーと……」

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