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神の手は祈りの形をしていない /異能力を使って将来犯罪をおかすと隔離教室に入れられたボクら(でもボクの異能力、幻聴が聞こえるだけで……)  作者: 陽々陽
008_失くした記憶と恋

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008_1

エレナ「……誰も、芹沢トーマの居場所を知らないんだな?」


 エレナは教卓からクラス全体を見渡した。

 ここには、ボイコット中の鷹野ソウガとトーマ以外の16人全員がいる。


 午後の授業の開始時、トーマが教室に戻っていないことが分かった。

 エレナは大きく息をついた。


エレナ「……トーマが授業をサボるようなことは考えにくいが……」


ユウ「一緒に昼食を食べました。

 その時、トーマは用事があると言って、先に食堂を出ました」


エレナ「どんな用事だ?」


ユウ「それは聞いたけど、教えてくれませんでした」


エレナ「ふむ……」


 昼食後、午後の授業までの時間に行う用事……一体なんだろう?

 仲の良いユウ達に、聞かれても答えなかった用事。


 少し、嫌な予感がする。


エレナ「私は校内を探してみる。

 諸君は動画を見て……」


こはく「水くさいよ、エレエレ」


エレナ「エレエレではない」


こはく「クラスメイトがいなくなったんならさ、クラスみんなで探したら良いじゃない」


ユウ「ボクも、探します!」


エレナ「……」


 こはくは、おそらく勉強から逃れるための口実だろうが、ユウは純粋にトーマを心配しての発言に思える。

 むげにはしにくい。


エレナ「……では、校舎内と外とで手分けをして探そう。何人かは教室で待機だ」


 エレナはテキパキと生徒たちをグループ分けした。


********


エレナ「……いない、な……」


 この木造校舎は、それほど広くない。

 各男子生徒の寝室に使っている2階部分も見て回っているが、まだトーマを見つけることは出来ていない。


エレナ「それにしても、なんだ、これは……」


 2階の廊下の天井。

 かろうじて読める崩れた字で、あちこちに小さな文字が書かれていることに、エレナは気がついた。


 どの順で読むか迷ったが、おそらく……


 「お」「ま」「え」「だ」「け」「い」「ら」「な」「い」


エレナ「……気味の悪い……」


 よく見ると、黒というよりは赤黒い色で書かれている。


こはく「ひー……ガチホラーじゃん。やばあ」


レイン「この字、女子寮の廊下にもある」


こはく「マ?」


レイン「マ」


こはく「やめてえ」


エレナ「ふん、気にするな。いたずらか、なにかだ」


こはく「いたずらじゃない、なにかって何?」


 その時、地鳴りのような、うめき声のような音がどこからか聞こえ、こはくが悲鳴を上げた。


エレナ「……この部屋か」


 一人冷静に、エレナは音の出所を突き止めた。


エレナ「開けるぞ」


 エレナはドアノブに手をかけた。こはくが、レインとあかりの背中に隠れて、なにごとか叫んだ。

 エレナの開けたドアの先には……


 いびきをかいて眠る、ソウガ。


エレナ「ふざけるな!バカモノ!怖いだろが!」


 いらだったエレナが、ソウガの頭にスリッパをたたき込んだ。


こはく「……エレエレも怖かったんね……」


 文字通りたたき起こされたソウガが、不満の声をあげた。


ソウガ「……んだよ!?」


エレナ「学友が勉学に励んでいるというのに、良い気なものだな」


ソウガ「知らねーよ。せんせーごっこは他でやれ」


エレナ「あ?」


 あかりはため息をついて、エレナとソウガの間に割って入った。


あかり「ちょっと、ケンカしてる場合じゃないでしょ。


 ……芹沢トーマくんが行方不明なの。なにか知らない?」


ソウガ「……血液操作の?」


 ソウガは天井を見上げて、記憶を探った。


ソウガ「あー……見たかも……」


あかり「えっ!すごい。教えて」


 頭をかきながら、ソウガは答えた。


ソウガ「……昼飯の時間にさ、校庭の向こうに歩いてくヤツがいて……

 この時間に珍しいなって思ったんだ。

 

 多分、トーマってヤツだったと思う。ちがうかもしんねーけど」


 あかりは窓の外を指さした。


あかり「あっちの方ね?一人だった?」


ソウガ「いや、もう一人いた」


あかり「だれか分かる?」


ソウガ「……小柄だった気はする……


 わりいな。ちらっと見ただけで、わかんねーわ」


 エレナは不満げな声で、こはくにボヤいた。


エレナ「……私の時と態度が違わないか?」


こはく「あかりん美人だからね。


 ワンチャン狙ってンのよ、男の子だからね……」


ソウガ「うるせえな、ちげえよ!」


あかり「ありがと、ソウガ。助かったわ。


 昼寝に飽きたら、教室来ても良いんだからね」


ソウガ「はっ。行かねーよ」


 部屋から出て、エレナはもう一度言った。


エレナ「……絶対、態度違うな……」


こはく「エレエレとあかりんも、けっこー違うから……」


 こはくは、フォーローになっているかよく分からないフォローをした。

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