007_6
審判のミナト、ボイコット中のソウガを除く全員が試合を経験したところで、昼食となった。
今日はいつもの食堂ではなく、校庭の隅の木陰で食べることになった。
カオルが様々な味のバゲットサンドをテーブルに並べる。
思い思いの場所で食事をする生徒たち。
ユウには、食堂でのいつものメンバーから変化が起こっているように感じられた。
自然にチームメイトが近くにいて、会話をしている。
レクリエーションは成功だったかも知れない。そう思うと顔が自然にほころんだ。
ノクス(あいつらは例外か?)
ノクスが意地悪な声を出した。
ユウの笑みに若干の苦みがさす。そして順に視線を向けた。
生徒の一団からやや離れたところで、1人で黙々と食事をするエレナ。ユウを挟んで、ましろに途切れることなく話し続けるこはく。
2人は試合の合間にも距離を取っていた。
今日はあと2回ずつ、今のチームで試合をする予定だ。
少しでも、2人が歩み寄るきっかけが出来れば良いけど……
ノクス(ハッ。無理だろ)
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ユウ(ノクスが、正しかったかも知れない……)
次の試合では、あわや取っ組み合いの大ゲンカに発展するところだった。
こはく「あ・た・し・が!攻めるって言ったでしょうが!」
エレナ「言っただけだ!私は承諾していない!
第一、幻覚対策をせずに突っ込むな!考えろ!」
ののしり合う2人の間で、リュカがフラグを手に、立ち尽くす。
試合開始直後、こはくは異能力「テンアゲモード」を発動してフラグに向かって走った。
テンアゲモード中のこはくは、筋力5倍の超人となる。
しかしテンアゲモードは長続きしない。いや、続けられない。
1秒、長くても3秒ほど。ピンポイントで使う能力だ。
こはく「はあ?アンタ、かぐらっちの試合見てた?
全部タッチして消せば良いじゃん!ばかあ?」
エレナ「バカはお前だ!あんな脳筋対策、長続きするわけないだろうが!」
かぐら「……脳筋、ッスか……」
口論のとばっちりを受けたかぐら。しおんが、その頭をなでなでした。
エレナ「しかも、だ!なぜ突然立ち止まって、私にぶつかりに来るんだ!?妨害か!?」
こはく「あかりんが進路に入ってきたからじゃん!テンアゲのまんまぶつかったらケガ必至なワケ!分かる?」
あかりも所在なさげに立ち尽くす。
エレナ「ああそうか、私はケガしても良いってわけだな!よく分かった!」
こはく「……!ンなこと、言ってな……!」
ユウ「ちょちょっと、待って。待ってって」
トーマ「落ち着いて!」
見かねたユウとトーマが間に入った。
こはくとエレナは、じっと互いをにらみ合う。
エレナ「次に足を引っ張ったら、容赦しないからな」
こはく「こっちのセリフですけどぉ?」
ノクス(最高だ!この2人、最高すぎる!)
ノクスだけが楽しそうだった。
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エレナとこはくの最後の試合は、サキとルイが相手だった。
エレナ「私が最初に攻める。お前は守れ」
こはく「偉そうに指図しないで欲しいんですけど?」
エレナ「……お前の力ならサキの壁を壊せる。後半で不利にならないよう、壁を壊していただきたい……の、で、す、が!」
こはく「ふえーい」
エレナ「返事は『はい』だ」
こはく「ふええーい」
エレナ「……っこの……」
ルイは苦笑いしながら、2人のやりとりを聞いていた。
ルイ「ぶっちゃけ、エレナとこはくの2人……最強のコンビだと思ったんだけどさ」
サキ「……」
ルイ「なんか、勝てそうじゃね?」
サキ「油断すんじゃないよ。自分に出来ることをしっかりやる。それだけ考えな」
ルイ「分かったぜ、あねご!」
サキ「あねご呼ぶな」
審判であるミナトが、コートの中央に立った。
ミナト「感情的になりすぎないようにしましょう。
両チームとも、ケガには気をつけて」
ゆっくりと4人の顔を見回した。
ミナト「では始めます。
……開始!」




