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4人がコート中央に集まった。
かぐら・しおんチームは、かぐらがミドリ、しおんが赤の尻尾をつけている。
対するあかり・リュカチームも、あかりがミドリ、リュカが赤となっている。
ミナト「では、始めましょう」
4人の顔をミナトは見回した。
ミナト「開始!」
トーマ「デュエル・クロッシンッ!」
試合開始直後に動いたのは、しおんだった。
しおん「いっくよー! どーん!」
4人の真ん中の地面に向けて、両手の手のひらを向ける。
その瞬間、地面が爆発し衝撃が広がる。
あかり「いつもながら、凄まじいわね」
しおんの能力は爆発だ。
両手を向けた先の一点を爆発させることが出来る。
爆発とはいっても炎や熱は伴わず、音と衝撃のみだが、距離があっても身がすくむほどの衝撃がある。
この爆発をいつでもどこでもその身一つで起こせるのだ。危険人物扱いも仕方がないのかも知れない。
かぐら「もらいッス!」
爆発の衝撃をものともせず、かぐらはリュカの元につっこんでいた。
リュカの尻尾を掴んだ、かに見えたが、リュカの姿は煙のように霧散した。
リュカ「それは幻さ……」
本物は爆発に驚いて、腰を抜かしてへたり込んでいる。
リュカの能力は幻覚だ。自分の姿を様々な場所に映し出すことが出来る。
触れれば消える淡い幻像だが、複数の自分を様々なポーズや動きで投影出来る。
あかり「すぐ立つ!」
あかりは、かぐらとリュカの間に割り込んだ。
かぐら「ナイスフォローッス!」
かぐらは後ろに飛び退き、あかりから距離を取る。
しおん「まだまだ行くよー! どーん!」
あかりとリュカの近くの地面が爆発した。
衝撃で動けない2人を尻目に、スキップするような足取りでしおんがフラグに向かって走る。
リュカ「すまないね、少女よ」
しおん「うきゃっ!?」
突然、横に現れたリュカに、しおんは驚きの声を上げた。
しおん「て、幻覚でしょ?」
しおんは思い直して手を伸ばした。
幻なら触れれば消えるはず……
しおんの伸ばした手に優しくタッチすると同時に、リュカはしおんの尻尾をするり、と抜いた。
リュカ「また踊ろう。爆ぜる星粒の姫様」
しおん「う……」
しおんは悔しさに顔をゆがめた。
そして、負け惜しみにつぶやいた。
しおん「キモい」
リュカ「……フフ……ボクにそんな、フフフ……」
リュカは口の中でもごもごつぶやいて、地面に腰を下ろした。そして両膝を抱える。
リュカ「あかりくん、後は任せたよ……」
あかり「遊んでないで、たたみかけるわよ!」
コート中央を挟んで、かぐらとにらみ合っているあかりが声を荒らげた。
かぐら「絶体絶命ッスね!」
かぐらはむしろ嬉しそうに言った。
しおん「ごめんなさい! 甘く見てた~!」
かぐら「どんまいッス! こっから勝ってみせるッスよ!」
リュカ「やれやれ……弱い者いじめは、好きではないのだがね……」
コートの両端に2人のリュカが現れ、かぐら・しおんチームのフラグに向かう。
反復横跳びのような身のこなしで、2人のリュカをかぐらは瞬時にタッチした。幻覚は煙に帰す。
リュカ「……おや?」
かぐら「まだまだ行けるッスよ!」
かぐらはコート中央に陣取り、幻覚が自陣に入るや否やタッチして消した。
あかり「……すご……」
驚嘆すべき動きで、次々と、かぐらは幻を打ち破る。
かぐら「どうしたッスか!? 幻覚だけじゃ勝てないッスよ!」
リュカ「キミを弱者と呼んだのは撤回しよう」
5人のリュカが現れ、一度にフラグに向かって走る。
かぐらは次々とタッチして幻覚を消し、さらに自陣内に突如現れた2人のリュカにも順に手を伸ばし……
かぐら「……キミ、ほんと良い動きするッスね!」
あかりが、身を挺して1人のリュカを守る。
かぐらは次の一瞬で、あかねのミドリの尻尾を取るが---
リュカ「さあ、もう休みたまえ。跳ねる戦舞の巫女よ」
あかねの影を走った本物のリュカが、フラグを掲げた。
大きく息をついて、かぐらは座り込んだ。
かぐら「……確かにちょっと、キモいっすね……」
しおん「かぐらちゃん!」
しおんが、座り込むかぐらに飛びついた。
かぐら「めんぼくないッス。勝てなかったッス。
……汗だくだから、くっつくと汚れるッスよ」
しおんは、ぎゅっとかぐらにしがみついた。
はにかんだ笑いを浮かべて、かぐらはしおんの頭をなでた。
……それにしても、最後のあかねの動き……どのリュカが本物か分かっていたような……
かぐら「ホント、このクラス……退屈しないッスね」
ちなみに、かぐらの最後の負け惜しみは、しっかりリュカに効いてた。
リュカ「……キモい……のか……」




