第二話「野盗と決闘」
初投稿です。
倒した妖獣の肉を焼き、腹を満たしてから三日が経った。
朔也は山中で暮らしながら、スキルの性質を自分なりに探っていた。
——【決闘領域】。
一対一の空間を強制展開し、勝つか負けるかがはっきりする戦いを創り出す能力。
ただし、発動には「心からの覚悟」が必要。
ふざけ半分では起動しない。それは、あの夜の経験で身に染みていた。
加えて、領域内で使える力があることも判明した。
——【勝機視界】
数秒間だけ相手の防御の隙・心理的動揺を色で視覚化してくれる能力。
しかし、実力差や相手に隙が生まれなければ簡単には発動しないようだ。
「これは使い方を誤れば……死ぬ」
だが、同時に思う。
(このスキルさえあれば、俺はどんな強敵にも誰からも邪魔されずに勝つ可能性が作れる)
生き抜く鍵。それが今の彼にとっての「決闘」だった。
———
山を下り、小川沿いに進んでいたときだった。
「よう、小僧。随分と物騒な顔してるな」
木々の陰から現れたのは、野盗の一団だった。
五人。全員が刃物を手にしている。
「ほう……竹槍か? それで抵抗するつもりか?」
「別に。逃げるつもりもない」
朔也の声は冷静だった。
だがその目には、あのケモノと戦った夜と同じ色が宿っていた。朔也はもう戦い抜く覚悟が決まっていた。
「おいおい、冗談だろ? 一人で五人と……」
「こいつは何を言ってるんですかい...?一人で五人相手できるとか自分の実力もわからないんですか、こいつは」
野盗たちが好き勝手に笑っている中、ふと朔也にだけ聞こえた。
——発動条件を確認。対象:知性あり。
——スキル【決闘領域】、展開。
「なんだ……!?」
突如、世界が凍りついた。
動いているのは、朔也と——その中で一番凶悪そうな男、野盗の頭だけ。
「おい!お前、ここは……何だ?おい、お前たちおれの声が聞こえねえのか!?」
「お前と俺は、今この場で決着をつける。逃げも隠れもできない。……覚悟しろ」
「ふざけやがって!」
男は大太刀を振り回す。
朔也は冷静に見極め、足を滑らせるように前へ出る。
(想像以上にできるのかこいつ。速い……でも、あの獣と比べれば、遅い!)
熊との戦いを経た体が自然と動く。
そして、ほんの一瞬。
男が見せた“隙”が、朔也の視界に浮かんだ。
——《勝機視界》、一時的発動。
——相手の隙を視覚化:左腰の下、赤。
「もらった!」
朔也の竹槍が、男の脇腹に深く突き刺さる。
息が漏れ、男の目から力が抜けた瞬間——
——スキル解除。勝者:神谷朔也。
世界が動き出す。
野盗の残りの四人が目を見開いた。
「急に頭とあの小僧が消えたと思ったら......お前、カシラに何しやがった!?
「か、頭が……!?」
「まさか、こいつ術でも使えるのか!?」
「に、逃げるしかねえ...... こいつは只者じゃねえ!」
「あのぉ......女は置いてくんすか?」
「馬鹿言うな!俺たちの命の方が大切だろが!置いてけ置いてけ」
と言い出して、野盗たちは逃げ出した。
————
残されたのは、朔也と、倒れた男。そして——木の陰からそっと覗く一人の少女。
服は泥と血で汚れ、足元は縄で擦れた痕が赤く腫れていた。しかし、その髪色は綺麗な橙色であった。
怯えた目で、だが一歩だけ、彼女は朔也に近づいた。
「怖いけど……でも、一人は、もっと怖い。お願い……一緒にいさせてほしいです」
朔也は無言のまま、彼女の足に残る縄を解いた。
そして、ごくわずかに、微笑んだ。
「……わかった。とりあえず、安全な場所に行こう」
その一言に、少女の瞳がふるえた。
そして、かすかに光を宿した。
少女の名は——茜。
これが、朔也の最初の“仲間”との出会いだった。
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