第十六話 「雷鳴一閃(前編)」
初投稿です。
雷堂が肩を軽く回すと、空気がびりつく。
黒衣に青髪の侍が、静かに剣を構えた。
「遠慮は無用だ。全力で来い、小僧」
鋭くも静かな声に、朔也はぐっと剣を握り直す。
(怖い……けど、俺がやらなきゃ誰がやる)
仲間たちの顔が脳裏に浮かぶ。
砦も、村も、守りたい。——その一心だった。
——刹那、雷堂が地を蹴った。
「速いっ……!」
朔也は必死に剣を振るい、防いだ。
だが、一撃ごとに全身が軋む。雷堂の剣は重く、鋭い。
一歩、また一歩と押し込まれていく。
(このままじゃ……!)
後退しながら、朔也は必死に考える。
そのとき、脳裏に宗二の言葉が蘇った。
——「力の差を覆すのは、技でも力でもない。胆力だ。絶対に折れない心だけが、奇跡を呼ぶ」
(負けるな……折れるな……!)
そう自分に言い聞かせたその時だった。
「朔也っ!」
駆け寄る影。
茜だった。必死の顔で、小さな狐の式神を呼び出していた。
「お願い……少しでも力を!」
白い光が朔也を包み込む。
(身体が、軽い……!)
感覚が鋭くなり、全身に力が満ちたのを朔也は感じた。
自然と足が前に出る。視界も、世界も、鮮やかに見えた。
茜が叫ぶ。
「朔也! 負けないで!」
その声に押され、朔也は剣を高く掲げた。
「戦闘領域・展開!」
霧のような気配が周囲に広がる。
雷堂が目を細めた。
「……こいつ、やはり」
二人の気配が、ぶつかり合う。
ここからが本番だ。
朔也は決意を胸に、再び雷堂へと踏み込んだ——!
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