第十五話 「雷堂を目指して」
初投稿です。
戦場は、なおも激しさを増していた。
砦軍の兵たちは必死に剣を振るい、宗二の指示のもと、劣勢を跳ね返していた。
宗二は高台に立ち、冷静に戦況を見つめながら的確な指示を飛ばしていく。
「左翼、少し下がれ!中央を押し上げるんだ!」
宗二さんの声が飛ぶたびに、兵たちの動きは的確になり、じわじわと領主軍の陣形にほころびが生まれていった。
朔也もその中心で、茜のかけた式神の加護を活かしながら剣を振るう。
体の切れが普段とは段違いだった。
「……これ、すごい。体が、勝手に動くくらい軽い!」
彼はその軽さを実感しながら、次々と敵兵を打ち倒していく。
——だが、敵の数は多い。
「くっ……!」
目の前にはまだ、分厚い兵の壁。雷堂へ辿り着くには、この壁を突破しなければならなかった。
そんなとき——
「朔也、もう一度、お願い……!」
茜が震える声で呼びかけた。
振り返ると、彼女は再び小さな狐を呼び出し、必死に祈るような目でこちらを見ていた。
再び身体に力がみなぎる。
心臓が高鳴り、視界が開けたような感覚。
——これなら、行ける!
「ありがとな、茜!」
朔也は剣を握り直すと、仲間たちに声をかけた。
「道を開くぞ!俺に続け!」
「おう!」
「ついてく!」
声が返ってくる。砦の者たち、村の者たち。かつては寄せ集めだった彼らが、今や一つにまとまっていた。
そんな中、朔也はふと後方を見やった。
そこでは、村人たちが驚くべき粘りを見せていた。
戦闘経験こそ浅いものの、彼らは互いに声を掛け合い、宗二の指示をしっかりと守りながら防衛線を支えていた。
特に一人、がっしりとした体格の若者——庄兵衛が、人々をまとめながら戦っていた。
「おい、下がるな!後ろから援護するぞ!」「怪我人は下がれ!」
的確に仲間を動かすその姿は、まだ粗削りながらも、指揮官としての素質を垣間見せていた。
(あいつ……きっと、これからの砦を支える存在になる)
朔也はそう確信し、再び前を向く。
——突破しなければならない。
朔也を先頭に、砦軍の精鋭たちは一直線に敵陣を切り裂いた。
敵兵たちは、朔也の速度と剣技に追いつけず、なす術なく倒れていく。
そして——
ついに、雷堂の前にたどり着いた。
青い髪を風になびかせ、静かに立つ男。
その双眸が、興味深そうに朔也を見据えていた。
「ここまで来たか、小僧」
雷堂の口元に、わずかな笑みが浮かぶ。
その瞬間、空気が一変した。
雷堂の周囲から、バチバチと雷鳴にも似た音が漏れ始める。
(なっ……これが、宗二さんの話していた雷の力……!)
思わず、朔也は一歩足を止めた。
皮膚にまとわりつくような空気の重み。
耳鳴りのような音圧。
そして、肌に刺さるような静電気の気配。
宗二から話には聞いていた。
だが、実際に目の当たりにすると、想像を遥かに超えていた。
(あれほどの力を持つ相手に……俺は、勝たなきゃならないんだ)
剣を握り直す手に、自然と力がこもる。
雷堂との戦い——それは、これまでの戦いとは次元が違うことを、本能で悟っていた。
そして、戦いの火蓋は切って落とされた。
面白かった!続きを読んでみたい人はぜひコメント、高評価よろしくお願いします!