第十三話 「接敵」
初投稿です。
砦の見張り台から、緊迫した声が響いた。
「敵軍、接近!!」
報せを受けた朔也は、すぐさま砦の上に駆け上がる。そこから見えたのは、百人は下らぬ兵たちが進軍してくる姿だった。
その中でも異様な存在が、一際目を引いた。
黒い軍勢の中で、ただ一人――鮮やかな青髪をなびかせた男が、堂々と馬に跨っている。
「……あれは……」
朔也が呆然と見つめていると、隣に来た宗二が険しい顔でつぶやいた。
「あいつは、久遠院雷堂。領内でも屈指の剣豪だ。しかも、領内で唯一特別な力をあいつは持っていると言われている……」
「雷堂も特別な力を持っている…どんな力を使うか知ってる?」
「ああ。噂によれば、雷の力を纏うという。並の兵では触れることすらできないらしい」
宗二の言葉に、朔也は背筋を冷たくした。
ただ存在しているだけで、周囲を圧倒する気配。
雷堂と目が合った瞬間、朔也は本能で理解する。
(こいつは……今までの敵とは、まるで格が違う)
雷堂は、にやりと口角を上げただけで何も言わない。だが、それだけで十分だった。
威圧感が波のように押し寄せる。
「怯むなよ、朔也様!」
下から声が飛ぶ。
振り返れば、砦の仲間たち――元村人たち、元兵士たちが剣や槍を握りしめ、こちらを見上げていた。
「俺たちは、朔也様に命を預けたんだ!」
「この砦は、絶対に渡さねえ!」
朔也は胸が熱くなるのを感じた。
まだ拙くとも、皆の心が一つになっている。
(俺が、守る。みんなを、この砦を……!)
その時、茜が駆け寄ってきた。
「朔也、これ……!」
茜の両手の間に、小さな狐の式神が浮かび上がる。
「式神契約」のスキルによって召喚されたものだ。
狐の式神が朔也に触れると、身体がふわりと軽くなった。
同時に、剣を握る手に、力が満ちていくのを感じる。
「私あれから特訓を重ねて、いつでも狐を召喚できるようになったよ...! 朔也...私、あなたの力になれてるかな...?」
茜は不安げに微笑む。
朔也は力強くうなずいた。
「十分だ。ありがとう、茜!体がすごい軽くなって、力も湧いてきたよ」
心強い支援を受け、朔也は剣を抜き、砦の仲間たちへと叫んだ。
「行くぞ! この砦は、絶対に守り抜く!!」
「おー!」
風が唸り、地を揺らし、敵軍が迫ってくる。
そして、砦防衛戦の火蓋が――今、切って落とされた。
面白かった!続きを読んでみたい人はぜひコメント、高評価よろしくお願いします!