第十一話 「新たな力と砦の未来」
初投稿です。
さらに数日が過ぎた。
砦には、活気が満ちていた。
「ふっ……!」
「よし、そこだ、もう一度踏み込め!」
広場では、宗二が剣を握る若者たちに指導を行っていた。
村から来た農民たちも、今では槍を手にし、訓練に汗を流している。
彼らの顔には、不安よりも、確かな希望の色が濃くなっっていた。
朔也はその様子を見ながら、ふと広場の隅に目を向けた。
そこでは、茜が一人、深呼吸を繰り返していた。
「茜、調子はどうだ?」
朔也が声をかけると、茜は顔を上げ、はにかんだように笑った。
「うん、たぶん、少し……感じられるようになったかも... でも、式神ってどういうものなんだろうね」
茜は胸に手を当てながら答える。
「確かに...何かわからないものを召喚するのは難しいんじゃないか...? 何か守り神みたいなものとかあったりしないのか?」
「うーん... そういえば、村の近くに祠があって、そこにはお狐さまが祀られていた気がする...!」
「そしたら、狐を想像してみるのがよさそうだ」
朔也と茜が試行錯誤しながら、話し合っている姿を見て、
近くで腕を組んで見守っていた宗二が、うなずいた。
「確かに、式神の姿を想像するのは大切だな。お前の【式神契約】は、感覚がものを言う。まずは、何を呼びたいのか想像して、そして契約する流れをつかめ」
「はいっ」
茜は真剣な表情で再び目を閉じる。
呼吸を整え、集中する──。
やがて──彼女の背後に、ふわりと白い光が集まった。
小さな狐のような霊体が姿を現す。
「……!」
朔也は思わず声を上げそうになったが、ぐっと堪えた。
「まだ微かなものだが……契約の第一歩だな」
宗二が静かに言った。
「やった……私、できたんだ……!」
茜の瞳に、喜びと涙が滲んでいた。
───
その夜。
朔也、茜、宗二、砦の古株たちで、集会を開いていた。
「……皆、よくここまで頑張った。
砦の修繕も進み、見張り台もできた。
畑も広げられたし、十分やれている」
宗二が静かに告げると、兵士たちも村人たちも、誇らしげに胸を張った。
「みんな、ここまで砦や村を発展させてくれてありがとう。これからもより一層力を合わせてやっていこう!」
(ここまで来られたのは、一人の力ではない..... 皆が力を合わせたからだ……)
「おぉ!」
ふと、隣を見ると、茜が式神の小さな狐を指でつついて遊んでいた。
無邪気な笑顔に、朔也も自然と頬を緩める。
(だけど──)
朔也の胸には、わずかな不安もよぎっていた。
この砦の噂は、やがて周囲に広まるだろう。
変わった連中が砦に集まっていると、警戒もされるはずだ。
「……気を抜くなよ、朔也」
宗二がぼそりと呟いた。
「前の襲撃から一ヶ月以上が経った...。そろそろ、次の戦いがあってもおかしくないぞ。おそらく、前回以上に激しい戦いになるだろう」」
「……はい」
朔也は真剣な顔で頷いた。
───
その翌朝。
見張り台に立っていた兵が、慌てて走り込んできた。
「お、お頭! 砦の北で、見慣れない兵がうろついているとのことです!」
「……来たか」
宗二が低く呟いた。
「間違いないな。近隣の領主が、こちらの動きを探りに来ている」
朔也は拳を握った。
(この砦は、まだ小さい。それでも──この場所を、皆を守り抜く)
砦に、新たな試練が迫っていた。
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