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ド田舎無職の俺の近所に異世界の国が引っ越してきた件  作者: 藤原湖南
第14章 「汎調」委員長 ハンス・ブッカー
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14-15


「シェリー・クドウの居場所を確認してもらいたい?」


「ああ。追われている可能性が現状高い。睦月に頼んでもらえないか」


山下睦月は丁度席を外している。ノアやシェイダたち魔術師団の面々に、基本的な魔法を習いに行っている最中だ。


「今彼女は少し席を外している。30分以内には戻ると思うが……」


「急ぎの案件だ。睦月をすぐに連れてきてくれないか」


「急ぎ……」


さっきの大河内議員からの連絡に関連するものか。東京ドームで何か化け物が出現し、被害が発生しているという話だった。正直、町田からの連絡があってようやく胸をなでおろしていた所だった。

とりあえず奴が無事だというのはよかったが、開口一番どういうことなのだろう。


「理由を説明してくれないか」


「サマーズが実はここに来ている。協力の条件として、彼女の身柄の確保を言ってきた。クドウが向こうの手に落ちれば相当危ないことになる。勿論、殺害されるのは論外だ」


サマーズが東京ドームに?詳しい事情はよく分からないが、事態の収拾に彼も一枚噛んでいるということか。


「それさえ実現できれば、アメリカは無条件でこちらと組むということか」


「と認識している」


アメリカの支援が得られるのであれば朗報だ。断らない理由はない。


「分かった、至急調べさせる。分かったら誰か援護に向かわせる感じか」


「場所によっては。こっちも向かうつもりだが、そっちからも誰か行かせた方がいいと思う。多分、その方が早い」


「誰かか……」


追っ手は誰か。大魔卿や王自らが追うことは少し考えにくい。万一返り討ちにされたらそこで終わりだからだ。となると、その部下ということになる。

東京ドームにいない面子だと、この前ノアやアムルを襲った連中——少女と魔族の男か。どちらもかなりの使い手と聞く。下手な人間を向かわせるわけにはいかない。


「……無難なのはノアか。戦力面で言えば、高松も一緒の方がベターだな」


しかし、町田の答えは予想外のものだった。


「いや、ノアはやめてくれ」


「……何?」


「……万一イルシア本国を直接狙われたらマズい。ただでさえ俺が不在で手薄なんだ。ハンスも重傷を負っててそっちに行けないらしい。駒が少ない中でも、誰かは残さなきゃいけない」


確かにその通りだ……が少々引っかかる。


イルシアにはシェイダら魔術師団が健在だ。ガラルドたち近衛騎士団もいる。魔法を使うのに制限があるとはいえ、市川とジュリもいる。いかに大魔卿たちが強大とはいえ、数の上では圧倒的にこちらが優位だ。

正直、ノアが抜けたとしてもそこまで致命的とは思えない。むしろ、相手が2人であることが濃厚な以上、ノアと高松というコンビが一番自然のように思える。


何より……町田の様子が少々おかしい。商社時代、あいつは嘘をつくことがとにかく下手だった。嘘をつくときには大体妙な間が空く。


「別の理由があるな」


「今、そこにノアはいるか」


「いや、山下と一緒だ。呼んでくるか?」


「……少し考えさせてくれ」


いよいよおかしい。町田の性格上、隠し事はほとんどしない、いやできない。その町田が、ここまで言い淀んでいる。何か重大なことがあるに違いなかった。


「……とりあえず、僕に説明を聞かせてくれ。どういう理由だ」


「……平たく言えば、俺たちはハメられた。全ては大魔卿の掌の上だった」


「は??」


町田が絞り出すような声で説明を始めた。ノアに付けられた魔紋は先代御柱と大魔卿の手によるものであった可能性が高いこと、そして異常に高まった魔力は極めて制御が難しく、いつ暴走してもおかしくないということ。そして、その暴走の結果何が起こるか分からないということ。

ひとまずは核爆発並みの大爆発か、過剰な魔力を制御できないことによる「変異体」への移行が考えられるらしい。どちらにしても、破滅的結果になることは間違いなかった。


一通りの説明が終わった後、僕は天を仰いだ。


「……洒落にならないぞ、それは」


「分かってるさそのぐらいっ!!!」


町田が珍しく語気を強めた。相当焦っているのが僕にも分かった。


「……すまなかった。対処方法は」


「……魔法を使わせないことぐらいだ。世良教授は俺が鍵になると言っていたが、具体的なやり方は教えてくれなかった。というより、教えられる前に逃げなきゃいけなかった」


「ノアを前線に出したくない理由は、そういうことか」


「……ああ」


スマホからエンジン音が聞こえる。どうも車の中であるらしい。あまり長く喋っていられる状況ではないようだった。


「分かった。今のことは、ノア本人に」


「俺が直接言う。俺が言わなきゃいけない」


確かにその方がいいだろう。ただ、クドウ捜索のメンバーに加えないことを、彼女が不審に思わないだろうか。

勘が鋭く、自尊心の強い彼女のことだ。自分がイルシアに残されることを不自然と思わないわけがない。そして、仮に怒りの感情が高まれば……それ自体が、暴走の切欠ともなりかねない。


参った。難儀なミッションを僕はやらなければいけないらしい。


「……了解した。後は僕に任せてくれ。クドウの元に誰を向かわせるかも、僕が決める」


「……恩に着る。とりあえず、居場所が分かり次第俺たちも向かうつもりだ。ひとまず、これから所沢の米軍基地に移る」


「すまない。……やれるだけのことはやろう、お互い」


「ああ」


そう言って、電話は切れた。



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