幼馴染* = [NullReferenceException]
子ども2人が砂場で遊んでいる。炎天下にも関わらず元気で砂のお城を作っているようだ。
「大きくなったらりょーくんと結婚する!!」
「結婚……いいよ!約束だね!」
女の子が宣言し、男の子が答える。微笑ましい問答と共に砂の城は少しずつ完成へと向かっている。
どこか懐かしい景色を眺めていると突然世界が色を失っていく。
がばっと布団を跳ね除けて上体を起こした俺は、体を纏う不快感に眉を顰めた。身体を見ると汗がびっしょりだ、シーツも洗わないといけない。
「……悪夢を見たかな。」
夢の内容は覚えていないが、この嫌な汗のかきかたは相当な悪夢を見たとしか思えない。
今日は予定のない休日だし、家で休むかと思っていたが気分転換に外に出たほうがよさそうだ。そう考えると俺は外に繰り出すべく、朝食のパンをトースターに突っ込み出かける準備をし始めた。
電車で揺られて30分、学校近くの繁華街へとやってきた。休日だけあって流石に人が多い。少しばかり外に出たことを後悔していると、何やら携帯と電光掲示板を交互に見比べているキャップを被った少年が目に入った。この駅はこの鉄道の中で一番大きい駅なのだがホームの形と乗り方が特殊で初めてだと迷いがちだ、恐らくその罠にかかったのだろう。
「君、困ってそうだけど、なにか手伝えることはあるかな?」
そう声を掛けると少年は眉をひそめてこちらを見た後、ハッとしたように目を見開いた。
(どうやら驚かせてしまったみたいだ。それにしても、すごく中性的な顔のイケメンだな……)
「ごめん、驚かせちゃって。困ってないのならいいんだけど。」
「いえ、助かりました。この駅に行きたいんですけどどこから乗ればいいかわからなくて……。」
見せてくれた画面には俺の地元の駅名が表示されていた。
「俺の地元だよそこ、偶然なこともあるもんだな。こっちのホームから緑色の看板が出ている列に並ぶといいよ。」
「やっぱり……。」
「やっぱり?」
「いえ、ありがとうございます!」
そう言うと少年は小走りでホームに向かおうとする、そのとき足をすべらせてしまったのかバランスを崩してしまう。
「あぶない!」
俺は少年を引っ張り転ぶのを阻止しようとし、実際少年は転ばずに済んだのだが代わりに俺が転んでしまい階段を転げ落ちる羽目になった。
階段を転がるのも久々だな……なんて呑気なことを考えながら立ち上がる。
「大丈夫ですか!?ごめんなさい私を助けてくれたばっかりに……」
「大丈夫、慣れてるからね。そっちは怪我はなかった?」
「慣れてるって……。大丈夫です、本当にありがとうございました。今度お礼をさせてください。」
「いや、いいよ。大したことでもないし。そっちが無事で良かったよ。じゃあ俺はいくね。」
「え、あの!」
このままだと延々と続きそうだったので、別れを告げた俺は人混みに紛れるように改札を出たのだった。