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n:1の恋慕  作者: Rivers
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1:NULLのN/A

 昼休み。蓮太郎は部活関連で用事があるそうで席を立ち、美波もふらりと教室を出て行った。

ひとりぼっちの俺はそろそろ中間試験が近づいてきたこともあり少し憂鬱になりながら参考書に目を通しつつ、昼飯のシリアルバーを齧っていた。

 「りょ……西園君」

 「……喜多羅さんか。蓮太郎なら部活の呼び出しでいないぞ」

 「うん、知ってる。美波ちゃんもいないみたいだから、折角だしご一緒しようかなって。」

 「折角……?」

 結衣がクラスにやってきた。俺に話しかけてくるなんて珍しいこともあるもんだな。

 

 「……まぁ、いいんじゃないかな。」

 「やたっ、美波ちゃんの席借りちゃうね」

 結衣が美波の席に座りお弁当を広げ始めた。相変わらず美味しそうなお弁当だな……。


 「西園君って美波ちゃんは美波って呼ぶし、蓮太郎君は蓮太郎って呼ぶよね。私はいつまで喜多羅さんなの?」

 「いつまでって……喜多羅さんとは4月がほぼはじめましてだろ?一応中学で骨折したときに蓮太郎と一緒に手助けしてくれたけど、それから大して交流があったわけじゃないしな。」

 「……そっか、そうだったね……。ちょっと勘違いしちゃった。」

 

 「……怒ってる?」

 「怒ってなんかいないよ。」

 沈黙の前に具体的な単語のない会話が降ってきた。おそらく意図するところは間違えていないだろう。

 少し気まずい空気となってしまった中、ポキリとシリアルバーをかじる。

 結衣も弁当を食べるかと思ったが、まだこちらを見ていた。

 「お昼、いつもそういうのだよね。そんなんで足りるの?」

 「シリアルバーな、作るのも大変だから。結局これが一番楽なんだよ。」

 「お腹空かない……?栄養偏らない……?」

 「俺はもう運動とかしてないしね、こんなんで十分。」


 そのとき教室に入ってくる小柄な人影がみえた。その人影は自分の席に座っている結衣を見ると首をかしげ、こちらに近寄ってきた。

 「おかえりみな…みっ!?」

 結衣に声をかけるとばかり思っていたがそのまま俺の膝へと座った、あまりの驚きに続く言葉がでてこなかった。

 「美波ちゃん!?なんで!?」

 「……席空いてなかったから。結衣こそ、珍しい?」

 「わ、私はなんとなく来ただけだから!今どくね!!」

そういうと結衣は弁当を片付けて慌てて出ていった。一体何しに来たんだ……?


 「美波、席空いたよ?」

 一向に膝の上から退かない美波に声を掛けるが、もう小説を読んでいて返事もなかった。


 昼休みが終わるまで美波を膝に乗せて過ごす羽目になった俺は、自分と結衣はどういう関係なのか少しだけ思いを馳せることにした。

 出た結論は「未定義」「該当なし」。女友達でもない、もちろん恋仲でもない。ここからなにか名前がつくことなどあるのだろうか。


 その問に対する結論はついぞ出なかった。

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