1:1の親友
「やっぱこっちの方は遊ぶとこたくさんあるな、これだけでも今の学校来てよかったわ」
二人で歩いていると蓮太郎がそう呟く。
今日は美波と結衣が二人で出かけるとのことで、折角なら俺も蓮太郎と二人で遊びに行こうとなり放課後に学校近くのターミナル駅に来ていた。自転車で数十分走らないとゲーセンすらなかった地元と違ってカラオケやゲーセン、映画館もあって遊ぶことに事欠かなそうだ。
「今日は久々にゲーセンいくか、入学してから行ってないし都会のゲーセンってやつを見てみようぜ」
「それいいな、筐体数多いんかな。気になるところだ。」
蓮太郎の提案に俺は即座にのった。中学時代は二人でゲーセンで遊ぶことも少なくなかったが、そういえば高校入学からは行く機会がなかったな。
近くのゲーセンを調べた後、少し歩いた先にある映画館や飲食店と併設したゲーセンに入った俺たちはその広さと綺麗さに圧倒されていた……。
「ゲーセンなのにタバコ臭くない……。」
俺は思わず呟いた、地元のゲーセンは狭い、暗い、たばこ臭いの三拍子が揃っており、1日いると体からタバコのニオイがするぐらいだった。
「ゲームの数も多いし、何より清潔感があるな……。」
二人でゲーセン内を回っているとバスケでシュート数を競うゲームが目に入り、蓮太郎が足を止めた。
「……やっぱりバスケには復帰しないのか?」
「バスケをやめたのは蓮太郎のせいじゃないよ。ミニバスから惰性でやっていたからいいタイミングだったんだ。」
俺は中2の春に階段から足を滑らせる蓮太郎を助けて右足を複雑骨折した、そのタイミングで所属していたバスケ部を退部したのだ。その事故がきっかけにここまで仲良くなることができたんだが、バスケをやめたことが蓮太郎の心の棘として引っかかっていたのだろう。
今言ったように惰性で続けていたのでいいタイミングだっただけなのだが……。
「トレーニング自体は続けてるし、復帰しようと思えば高校で復帰できたのにしなかったのが全てだよ。本当に部活としてやるほどの情熱はもうなかったんだ。もう気にしないでくれ。」
「そうか……。わかった。ところで、なんのゲームで遊ぶよ?」
蓮太郎はまだ晴れない顔をしていたが、軽く顔を振ると明るく言い放った。
「音ゲーやろうぜ、先月に新作でたじゃんね。まだやってなくてさ。」
俺はそう答えて筐体を指差し歩き出すのだった。
ゲーセンで遊び終えて外に出るとすでに暗くなっていた。暗くなって気がついたが建物の屋根の上が明るくなにかの施設があるようだった。
「なんか照明がついてるな、屋上になにかあるのか……?」
「あぁ、ここの屋上フットサルコートがあるんだよ。この間部活の先輩と来たんだ。」
「へぇ、フットサルコート……」
「フットサルがピンときてない声だしてやがる。」
そういって蓮太郎はくっくと笑い声を上げる。正直フットサルとサッカーの違いがわかっていなかった。
「部活はどうだ?馴染めそうか?先輩とフットサルしにくるぐらいだから良好ではあるんだろうけど」
蓮太郎はサッカー部に入っている。180センチほどの恵まれた身長と筋肉質な体、恵まれた運動神経で活躍し中学のころはそれはもうモテていた。
「そうだな、今のところは大丈夫そうだ。めちゃくちゃ強いわけじゃないが、みんなやる気があるしな。」
蓮太郎はあまりに活躍し、モテていたため結構やっかみを受けていて中学時代は結構大変だったみたいだ。それでもやめずに続けていたのは間違いなく蓮太郎の強さで格好いいところだろう。
ちなみに、俺と美波は帰宅部で結衣は女子バスケ部だ。今日は体育館もグラウンドも業者のメンテナンスが入るから運動部は休みの日だった。
そんな話をしていると分かれ道へと到着していた。
「あんまり力になれないかもしれないけど、なにかあったら言ってくれよ。」
気がついたら俺はそう言っていた。中学の時の蓮太郎のしんどそうな顔が頭に浮かんだのだ。
「……ありがとな、そのときは頼らせてもらうよ。じゃあ、また明日な。今日は楽しかったよ。」
「おう、また明日。今度また遊びに行こうぜ。」
skebの期限がやばい