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n:1の恋慕  作者: Rivers
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1:1の幼馴染

 地元の駅から電車に乗って30分、駅から徒歩10分ほどで俺達の通う高校に到着する。

結衣だけ別のクラスのため、クラスには俺と蓮太郎と美波の3人だけだ。


 蓮太郎は入り口付近の席で、俺と美波は教室の隅で隣の席。しかも俺も美波も交友関係はそこまで広くない。

 だからか朝は蓮太郎のみがクラスメイトとわいわいやっているのをぼーっと眺めているのが常だった。

 顔もよくコミュ力が高い蓮太郎は男女ともに人気がある。名実ともにクラスのスターみたいな感じだ。


 「レン君おはよー!」

 「おう、おはよう」

 「なぁ蓮太郎、今日カラオケいかね?」

 蓮太郎とクラスメイトが集団で話しているのが聞こえる。あんな人数と話していると会話が訳わからなくならないのだろうか、あとすぐ体力使い果たしそう……。

 人と話すのってなんであんなに疲れるんだろうか。


 右側から視線を感じて顔を向けると美波がこちらをじっと見ていた。蓮太郎達を見ている俺を見ている美波、何がなんだかわからないな……。

 なんで見ているのかわからずに固まっていると美波が口を開いた。

 「りょーた。ラムネあげる。」

 「おう、ありがとう。」

 「ブドウ糖、大事だから。」

 これから勉学に励むにあたってブドウ糖を恵んでくれたらしい。俺がラムネを受け取ると美波は気持ちばかり満足そうな顔をして手に持っていた本に視線を戻した。


 佐伯美波は蓮太郎の幼馴染で、どうやら幼稚園からずっと一緒らしい。

性格はかなりマイペースで口数が少ない、個人的には猫のようだと感じている。中2の春、俺が蓮太郎と仲良くなってすぐ紹介されたが、当初は警戒するように近づいてこなかったのをよく覚えている。

 俺と蓮太郎と美波の3人で遊ぶうちに次第と警戒を解いていってくれて、今では蓮太郎ほどではないが仲良くなれたと思っている。


 蓮太郎との距離感はさすが幼馴染と言えるほど近く、恋慕の情を抱いているのではないかと俺は考えている。聞いたことはないから実際のところはわからないけど。

 ただ基本的に人が苦手で人混みなんて以ての外のようで、人気者である蓮太郎の周りに人がいる際は彼の近くにいないということが多い。基本的に一人は苦じゃないのかそういうときは本を読んでいるか寝ているか散歩をしているかといった具合のようだ。

 恋のライバル(?)と思われる結衣との仲は良好のようで、よく二人で出かけているらしい。そういうのって割り切れるものなのかと思わなくもないけど、自分にも似たようなことがあった記憶もあるので意外とそういうものなのかもしれない。


 仲睦まじい2人の恋模様はというと、通学風景からもわかるように結衣を優先して一歩引いていることが多い美波が少し不憫に思えるといったところかな。俺としては美波を応援する気持ちが強いんだけど……。幼馴染は物語だとなんだかんだ当て馬とされて負けがちなんだ、現実では順当に勝ってほしいと思うわけだ。


 「西園君、おはよ。」

 そんな役体もないことを考えていたら女生徒から声をかけられた。前の席に座っている……一ノ宮と……岩倉……だったか……?

 教室で本を読んでいるか、ぼーっとしているかしかしていない陰気な人間に話しかけくる珍しい2人だ。

 「一ノ宮に岩倉か。おはよう。」

 「はい、おはよ。今日もクールだねぇ。友達の東城君はとは真逆だよね。」

 「ほんとそれ、ちゃんと元気してる?」

 一ノ宮と岩倉がそれぞれ声をかけてくる。クールうんぬんの発言をしたのが一ノ宮だ。

 「別にクールって訳じゃないし、それはそれとしてめっちゃ元気だけど……」

 「そっかそっか!それはそれとしてめっちゃ元気か、それはそれはいいことだよね。」

 「そんな元気な西園君に相談なんだけど、今日の放課後デートでもどうよ?東城君も連れてさ!」

 「いや、毎度毎度急すぎるだろ……当日は無理かな」

 「また振られた!わかってて誘ったんだけどね!でも都合が合うときは本当にデートして欲しいんよ。」

 「そう言いつつ頑なに日程をすり合わせないのどうなのよ……。」

 岩倉さんは毎度毎度そんな感じで遊びに誘ってくる、多分蓮太郎とお近づきになりたいとかそんなだと思うんだけど。蓮太郎と仲良くなってからというものそういう女子は後を経たない。


 ふと視線を感じて隣に目を向けると美波がじっとこちらをみていた。心做しか機嫌が悪い……?

 「おっと。私達は授業の準備をするとするよ、邪魔したね西園君。」

 その視線に気がついたからか、そう言い残すと一ノ宮さんと岩倉さんは席に戻り授業の準備に取り掛かっていた。


 「……りょーた、ラムネあげる。」

 「え?…むぐっ」

 美波はおもむろに立ち上がると俺の口にラムネを突っ込んでくる。情けない声をだした俺に満足したのか、席に戻って自分もラムネを食べ始めるのだった。

 

 まるで猫のようにきまぐれでいまいち考えていることがわからない。そんな親友の幼馴染との朝のひとときだった。

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