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n:1の恋慕  作者: Rivers
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喜多羅結衣の後悔4

 最初はりょーくん最近部活で見ないなってぐらいだった。

 度々姿を見ないことは今までもあったけど1ヶ月ぐらい姿を見ていなかったのが少し気になっていた。


 りょーくんと蓮太郎君が仲良くなったのを知ったのは、1ヶ月と1週間が過ぎたあたりだったと思う。

 部活に向かいながら蓮太郎君と話していると、りょーくんが現れ、仲良さそうに話し始めたのだ。

 その時の私の混乱具合といったら、到底言葉で表せるような範疇になく、他人から見ると背景に宇宙が見えていたと思う。


 どうすることもできなくなった私は、お手洗いをいくかのようにそれとなく離脱し、後々蓮太郎君に話を聞くことにした。


「俺が事故で階段から落ちるところを助けてくれてな。左手と左足がかなりひどい骨折で、しばらく入院することになってしまったし、部活もやめちまったから申し訳なくて……。俺ができることはできる限りやろうと思っていろいろ手伝ってたんだ。それはそれとして、ウマがあって今では親友だと思ってる。」

 そんなことを言われた私は、いままでずっとずっと逃げ続けていたあの日が、眼を背き続けていたかったあの日が、いつの間にか自分のすぐ前に先回りしていることに恐怖した。


 そんなこともあり私は、積極的に話しかけるまではできなくても、りょーくんが困っていそうだったら積極的に助けるようにして、それをきっかけに謝る覚悟を決めた。


 そう決めてからすぐチャンスは訪れた、階段を登っているりょーくんに肩を貸したのだ。

「だ、大丈夫?」

「大丈夫だよ、ありがとう。」

 そう聞いた私にりょーくんはなんでもないように答えた。その瞳には憎しみも、気まずさも、なんの感情も灯っていないように見えて、私の決意はいとも容易く消し飛んでしまった。

「そ、そっか、それはよかった!何かあったら言ってね、手助けするから!」

 りょーくんの瞳に怖気付いた私は、そう言い残しして脱兎のようにその場を逃げ出したのだった。


 そのあたりからりょーくんは劇的に変わっていった。

 ボサボサだった髪は整えられ、メガネはコンタクトになり、制服も軽く着崩すようになった。

 なにより以前のような陰鬱な雰囲気は無くなっていた。

 以前のようなクラスの中心になるような明るさまではないまでも、「陰キャのキモ園君」なんて言う人は全くいなくなっていた。


 同時に、男バスと女バスから派生して学年内で今まで薄っすらとあった、原因のわからない緊迫感というかピリピリした雰囲気が霧散していることにも気がついた。

 これについては結局原因がわからないまま今に至るのだけれど、蓮太郎君ならなにか知っていたのかな……。


 理由のわからないことの多いまま、私は保留の選択肢を選び続け、謝ることも決別されることも叶わず、ついに卒業の日を迎えた。

 受験が忙しくなるとりょーくんところか蓮太郎君とも少し疎遠となって、勉強一直線になった。勉強をしていれば、余計なことを考えなくて済むからという逃げの理由もあったけれど……。

 そんな事もあって蓮太郎君の進路なども聞かないまま、受験を迎えることになる。


 受験も終わり、進学先は隣の県の大学付属の私立高校に進むことになった、学力が高く勉強に力を入れているのと、付属大学への推薦も存在することが大きな決め手だった。

 もう一つ加えて、隣の県ならばウチの学校の人間も少ないだろうからりょーくんとも蓮太郎君とも離れるんじゃないかなとか、そんなことを考えていた。

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