第二十六話 入学適性検査
人も入ったし生活基盤も整えた。『工房の里』はいよいよ動き出した。
魔鉱石の採掘と販売もあるので、別の名前が良いんじゃないか?という話もあったけど、これはそのままって事で押し通した。
だって、ここは連結飛空艇の生産拠点なんだ。
バクミン工房に手伝ってもらって生産ラインを飛空艇機関部を一ライン、客室艇と貨物艇を三ライン増やした。里の規模が大きくなったら増便も考えなくちゃいけない。後、マンレオタから皇都までの径路の開発も進めたい。
工房の差配は基本、あたしなんだけど、外見幼女のためにどうしても軽く見られたりする。そんな時、辣腕を発揮するのがタオ兄ちゃん。
一応、「工房の里」の総支配人という肩書きを持っている。
ちゃんとお話出来るか心配だったけど、却って短いやりとりで仕事を進められるので好評だったりする。
年齢や子供っぽい容姿が心配だったけど、元皇子だというのが効いてる。肩書きもそうだけど、元皇子らしい振る舞いや威厳が年齢を相殺してしまうらしい。そしてゾラの使い手というのが最後のだめ押しだ。
ゾラの威圧には逆らえる者なんか居ない。
そこであたしの出番だ。間を取り持って調整をする。
外見可愛いマスコット幼女。ほんの少し妥協を引き出しておいて感謝させる。
こういう役割分担って結構うまくいくらしい。
そんなこんなで連結飛空艇は順調に台数を増やしていき、里とマンレオタ直通便は日に二本を運行させ、さらに一本が就航可能になった。
これは新しい航路開拓に使おう。
で、なにが良いかと考え中に帝国学園から手紙が届いた。
入学適性検査を受けに来いという知らせ。
なぜ貴族学校でなくて帝国学園か?貴族学校は領地と武技に関する学科はあっても魔道具科が無いからだ。しかも平民は入学できない。
帝国学園には魔道具科と魔法科があり、充実しているし平民も受け入れている。
帝国学園は帝都にある。よし、帝都まで航路開拓とデモンストレーションだ!
帝都までの連結飛空艇デモの構成は、機関艇一、客室艇一の二輌編成。
実際の運行ではこれに貨物艇がぞろぞろくっつく。
航路開拓というのは、航路の途中の街に駅を設定し、魔法のビーコンのような物を設置する。
飛空艇はこのビーコン目がけて直進する。ビーコンが無いと、常時飛空艇の位置を確認しなければならない。これでは飛空艇の構造も複雑になるし、運用も面倒だ。
このビーコン、“呼び珠”の応用で機構も運用も単純だ。ニニの発想だ。さすが。
入学適性検査まで一ヶ月以上ある。
そこで選定した街を飛空艇で訪れながら、ビーコンを設置することにした。
街の選定には父様や宰相、トワンティの領主なんかに相談の上、決めて貰った。
取り敢えずは三つ決めて貰い、最初は携帯端末と“呼び珠”で連絡し合いながら街へ向かう。
向かった所でビーコンを設置。次に向かう。
一ヶ月掛けてビーコンの設置は終わり、帝都に到着した。
実際の運用では客室艇で宿泊できるようにし、街には一時停泊する事で帝都~マンレオタ間は片道三日で到着できる。
馬車で一ヶ月以上掛かる行程がたった三日になるんだよ?凄くない?
駅の建設には二、三ヶ月かかるそうなので、正式な運行開始には半年くらいかかりそう。
飛空艇の製造もあるから、ま、そんなところかな。
デモンストレーションは大成功だった。
あらかじめ携帯端末で到着を知らせておくと、駅の予定地は黒山の人だかりになっていた。
飛空艇が到着すると、わあっと歓声が上がる。
その街の領主さんが出迎えてくれて、歓迎の演説をぶってくれた。
盛大な歓迎会も催してくれ、そこで質問攻めに遭った。
そんなこんなで一ヶ月掛けて帝都に到着。マンレオタ館に到着した時はヘトヘトになっていた。
三日ほどお休みした所で、いよいよ入学適性検査。
ニニと二人で帝国学園に向かう。引率はサラダン父様。
実はニニも帝国学園に通う事になったんだ。
帝国学園には魔道具科があるので、あたしやロダ師匠の勧めでニニも同意した。
領主の子弟が大半という事もあって最初は尻込みしていたが、魔道協会工房の相談役を持ちかけられるとやっと腹を決めた。魔道協会工房に通うとなると、どうしても帝都滞在が必要になる。
あたしは魔道具科の他に魔法科、領政務科、教養科を履修する事になっていたけど、ニニは魔道具科と魔法科だけを履修する。あたしには領政務科、教養科が里の運営に必要な知識になるからだけど、ニニには必要ないので、その時間を魔道協会工房に当てられるわけだ。
費用はマンレオタで持つと言ったが、魔道コンロや携帯端末の収入で十分賄えると固辞された。
帝国学園は華美な貴族学校と違い、質実剛健といった佇まいだ。
石造りのがっしりした建物に余分な装飾は無い。校舎の裏は広い演習場があって、魔法や剣技の実習に使われるそうだ。
演習場を挟んで校舎の反対側には寮がある。
あたしとニニはマンレオタの屋敷から通うので関係は無いけど、遠隔地の領主の子弟や平民は安価で利用できるため、利用者は多いとの事だ。
ごっつい門をくぐると石畳が校舎の入り口に続いていて、入り口に入ると広いロビーになっていた。十数人くらい若い男女が居たので、彼らも入学適性検査を受ける人達だろう。
係員らしい人が声を掛けて会場に案内してくれた。
途中の廊下なども飾りっ気が無く、いっそ清々しい。
「まずは魔力量を測定します。魔力量が一定の基準に達していないと魔法科は受講できませんのであらかじめ了承しておいて下さいね」
係員の人が身も蓋もない事を言う。一斉に緊張が走った。
測定室に入る。部屋の真ん中に台座に乗った石版があり、その回りを皆で取り囲んだ。
順番に石版に触れ、魔力を流し込む。流し込めなくなった時点で測定が終わる。
係員の人がその時間を計っているようだ。
ニニは意外に魔力量があるらしく、最後の方まで残った。
さて、困った。あたしの体内魔力量は大したことないけど、一定値まで減ると亜空間に溜まった魔素が自動的に補充されるんだ。終わらないっ!
係員さんの顔が段々おかしくなってきて、とうとう声がかかった。
「マンレオタさん、そこまでで結構です」声がヒクヒクしてる。
次の部屋では現時点でどれだけ魔法が使えるかのチェックだった。
「現時点で魔法が使えなくても問題はありませんよ。クラス分けの参考にするだけですから」
係員さんの言葉に安堵のため息を漏らす人、多数。ニニもその一人。
あたしはショボい水生成をお披露目した。ちょっと恥ずかしい。
でも、何だか皆にガン見された。えっ?どうして?
実際に魔法が使えたのはあたし含めて五人。他の四人は結構年長さんだった。
七歳のあたしが魔法を使えたのがよっぽど意外だったのかな?
次の課題は魔方陣を魔晶石に刻み、それを稼働させるまでの課程を見るものだ。
これはニニが圧観だった。複数の光りの幻影をくるくる入り乱らせて幻想的な景色を見せつける。
誰しもがため息をついた。
あたしはちょっと悪戯っけを出して、板きれに重力魔法の魔方陣をくっつけ、スケボーみたいに走って見せた。あー、なんかごめん。皆を呆れさせたみたいだ。
「この馬鹿」ニニが呟いたのが聞こえた。
なんかやらかした?




