高校生の恋愛ってこんなもん
それは委員会の仕事終わりに本屋に寄って帰ろうとした時の事。
俺−月宮海斗−は見てしまった。
彼女である高田志穂が見覚えはあるものの名前は知らない男と腕を組んで歩いているのを。
いや確かに最近ちょっとそっけないなぁなんて思ったりもしたけどさぁ
「これ浮気じゃね?」
口からそんな言葉がポツリと出てくる。
幸い?彼女らには気づかれてないっぽい。
「はぁぁぁぁ」
もう本屋にも行くような気分じゃない。帰ろ帰ろ。
ほぼ一睡もせずに朝を迎えた。
そもそもだ。今回浮気という形になってはいたがそれには俺にも原因はいくつかあるのだ。
最近あまり話せてないなぁと思った時に連絡を入れなかったり。
学校でもクラスが違うからと言って彼氏なら会いに行ったりもできただろう。
高校生なんてのは嫌でも人との関わりはできるものだ。
少し距離が遠くなれば必ず間に人は入ってくる。
それが美人な彼女なら尚更だろう。
俺たちのカップルは別に隠していたわけでもないから知ってる人はそれなりにいたはずだ。
その上であんなに堂々と腕を組んで歩いているのならば、それはもう彼女の中では俺たちは別れたってことになっていたりするのではないか?
十分にあり得る。
自然消滅なんて珍しい話ではないだろう。
うんそう。俺たちはもう別れた。
自分の中で一晩中ぐるぐる回っていた思考が少し落ち着いたところで俺は学校の準備を始めた。
それから一週間ほど経った学校で隣の席のそれなりに仲良くしている女子−谷口都−が
「そういえば最近彼女とあまりいないな」
と昼飯を食いながら話しかけてきた。
「まぁ別れたしね」
「は?」
「ん?」
「え?」
え?どうかしたか?
俺たちはお互い困惑したように顔を合わせる。
「え?別れたのか?」
「うん」
「いつ」
「まぁ一週間前ぐらいじゃない?」
「なんでまた急に?」
「いや志穂に好きな人ができたっぽくてさ」
「え?」
いや何をこんなに驚いているんだこいつは?
「まじ?」
「まじまじ。前あいつが腕組んでデートしてたとこ見たし」
「いや他人事すぎない?」
確かに他人事かもしれない。それなりに俺は真剣だったし志穂も遊びって感じはなかったと思いたい。まぁうん
「そんなもんだろ」
この一言に尽きる。
別にお互い将来がどうのとか考えていたわけじゃない。お互いがお互いをたまたま好きになって、付き合って、気持ちが冷めたら別れる。
重たい契約をしたわけじゃない。お互い楽しく過ごすために付き合ったんだ。楽しくなくなったら別れるのは何もおかしくない。
振られた俺としてはいい人生勉強になったと切り替えるしかないのだ。
「じゃあ」
と緊張した面持ちで話しかけてくる都さん。
「今はフリーなのか?」
あー
「いや厳密にはまだかな」
「え?どういうことだ?」
「いやただ俺がたまたま男と腕を組んで歩いてるあいつを見て、まぁそうゆうことかってなっただけだから正式には別れてないんだよ。」
「それ浮気じゃない?」
「まぁそうなんだけどそんな騒ぎ立てるようなことじゃないでしょ」
俺としてはこの一週間で結構吹っ切れたから未練もない。
「別れようって言わないのか?」
「俺としてもさっさと別れたらいいんだろうけどなんか俺から言いに行くのも違う気がするんだよな?」
「いやなんで」
「俺の気分としては振られたって感じなんだよ」
「あーなるほどね。うん。わからん。」
安心しろ。俺もわからん。
「じゃあもう彼女のことは好きじゃないんだね?」
「ああ」
「ふーん」
なんか深みを持たせたような笑みを浮かべる都さん。
どういう感情?っとなったところで休みの終わりを告げるチャイムがなった。
それから二週間ぐらいして俺たちは別れた。
それもスマホで一言別れようと言われただけの随分そっけないものだった。
もちろんそれを了承した。
独り身になって少し経って、前よりも都さんと仲良くなった気がする。
今も一つの席で向かい合って弁当を食べている。
都さんは身長が高く、とても美人だ。
こうも距離が近いと少しドキッとくるものもあるがあくまで俺は気にしていないふりをしていた。
別れてから気づいたことだが、都さんはむちゃくちゃモテる。
俺は煩悩を振り払うようにして一心不乱に弁当を食った。
「何をそんなに焦って食べているんだ?」
そんなことを聞いてから都さん。
あなたのせいだよ!というわけにもいかず、
「なんでもないよ」
と無難に返事をする。
「そろそろ言おうと思っていたんだが......」
と何かを言い淀む都さん。
「どうした?」
「私はお前が好きなんだ。付き合ってくれないか?」
................................ん?
................................え?
「.................................は?」
「どうだ?」
いやいやいや待て待て待て。え?何、突然?俺告白された?
え?嘘でしょ?まじかよ。
俺はあまりの突然の話に思考がショートしていた。
都さんが言う。
「実は一目惚れだったんだ。ただ、その時には彼女がいると聞いたから諦めていたんだが、別れたって聞いて...」
一呼吸おいて
「アタックかけてみたんだが全く気づいてないみたいだし、最近は結構モヤモヤしてて、でもこの気持ちに嘘はつきたくなかったんだ」
俺は考える。
都さんはとても美人だ。俺も彼女と仲良くできて嬉しかったし、楽しい時間は過ごせていたと思う。
ただ俺の中に彼女に対する恋愛的な好意はあるのだろうか?
彼女を見る。
ショートヘアに切長の目。身長も高く、スタイルは完璧だろう。
内面はこれまで仲良くしてきた中では嫌なところ一つない。
顔を真っ赤に染め、少し下を向いている彼女は、うん、とても可愛らしかった。
「うん、俺も好きだよ。付き合おう」
気がついたら口が動いてた。
「本当か!」
嬉しそうにはにかむ都さん。
ずっと大切にできたらいいなと俺は思った。