だから……誰がオーガよ!!
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「そうだ!お互いの腰はくっつけたまま、優雅に、情緒深く、妖艶に微笑む!」
「にー」
私とディックは、夕日が照らす屋上にいた。
「はい!ワンツー!ワンツー!」
ディックのペースに身を任せ、転ろんだり足が絡まったりしないように私は足の運びに集中する。しかし足を動かすことにばかり気を取られていると、
「ダンスの優雅さは咲き誇る花のような笑顔で演出するんだ! 気を抜くな!」
ディック先生から厳しいお言葉が返ってくる。
「……少しくらいいいじゃない」
そんなディックに聞こえないように愚痴をこぼす。
「返事はどうした!」
「はぁ……」
「バカもの!ため息なんぞつくな!笑え!」
ぐっ……うるさい。
「笑えって言われて……笑えるかぁぁ!!」
「そうだ!とにかく笑えい!」
咲き誇る花を枯らせる般若の笑顔を浮かべ、ディックのリードに合わせてクルクルと優雅に回る。
そのとき、
「今から屋上は私たちが使うので出て行ってくださいまし」
屋上の扉を開けて、
「ほら早く」
エルナとその取り巻きの令嬢達がゾロゾロと入ってきた。
「はあ?」
しかし、今の私はディックの扱きによって不機嫌である。そしてその笑顔は、
「ひっ……」
「お、オーガ!?」
咲き誇る花を枯らせる般若の笑み。それを目にした令嬢達は悲鳴をあげた……って、誰がオーガよ!
「ふ、ふん!そんな顔をしても全く怖くありませんからね!ここは私たちが使いますので出ていって下さいまし!」
「そうですわ!」
「出ていきなさい!」
屋上を埋め尽くすほど人がなだれ込んできた。その人達は、私の笑顔を見て、
「ひっ……!」
「な、なんでこんなところに……オーガ!」
悲鳴をあげた……って、誰がオーガよ!!
「チッ……まあ、予想していたことだしな」
昨日、理事長が私たちに、
「ダンスパーティーで決着をつける。ダンスで観客を多く魅了した方の勝ちとする。そして負けたペアは退学だ」
それじゃワシは忙しいからこれでな……と一方的に言い残して理事長は去っていった。
「……マジか」
理事長は言ったことを曲げない。言ったことは必ず実行に移す。「冗談」という言葉から1番遠い人だ。
その為、何がなんでも私とディックの練習の妨害行為にはしるだろうと予測していたら案の定だった。
「いくぞ、オリヴィ……オーガ!」
振り返り、私の手を掴もうとしたディックも私の顔を見て悲鳴をあげた。
「だから……誰がオーガよ!!!」
ディックにツッコミを入れると、彼の手を握り、
「いくわよ!」
「おっ、おう」
握った手を引いて、屋上を出た。
それから私達は空き教室に移動し、練習を始めようとして……
「ここは今から私たちが使うのでどこかへ行ってください!」
と、エルナの取り巻きが現れ、教室から追い出された。
「……仕方ない。次に行きましょう」
今度は校舎裏に移動……したのだけど、
「ここは僕たちの場所だ!邪魔だからどこかへ行け!下手くそ!」
今度は、ノクトスの取り巻きが五十人現れ、校舎裏を占拠した。
「……意外とあいつって人望あるのか?」
「ノクトスに人望……ないない。ああやって言いなりになっているとお金をはずむからお金が欲しい人たちが群がってるだけよ」
「密に群がるアリってことか……意外と寂しいやつなんだな」
「いや、お金が余って余って仕方ないし、大金を使う趣味もないからああやって散財してるだけよ。確か月のお小遣いが金貨五百枚とか言ってたわ」
ノクトスの懐事情について話すと、隣を歩くディックが動きを止めた。
「ご、ごご五百枚!? しかも金貨!!」
「そんなに驚くこと?」
「当たり前だろ!一体いくつバイトをすれば……」
ディックは指を折りたたんで、何やら計算し始めた。
「あなたバイトなんてしてるの?」
「仕方ねえだろ!この目つきの悪さのせいで何もしてねえのに停学になったり、真面目に授業受けてんのに赤点に」
「赤点は自己責任」
「……はい。ただ、停学10回に、赤点を取りまくっても、なんとか理事長に土下座して進級を許してもらったってのにうちの親父ときたら『性根を叩き直せ!』って小遣いは銀貨一枚しか送ってくれなくて」
ぎゅううう、と鳴くお腹をさする。
「自業自得」
「……そりゃそうだけどよ」
珍しく弱々しいディック。どんどん白く色あせていく彼は、今にも灰となって消えてしまいそう。
「銀貨一枚じゃ学園の売店のパン一つしか買えないわね。しょうがない……夜ならダンスの練習の邪魔もしてこないでしょうし、寮を抜け出してこっそり練習しましょう」
「えっ……夜はバイ」
「お弁当を持って行くって言ったら?」
拒否しようとするディックに、そう提案したら、
「何なりとお申し付けくださいませ。オリヴィア様」
釣れた。あっさりと釣れた。
「集合は21時に噴水広場で」
「ハハァ!1時間前から待機しております!」
わざとらしいほどに媚びてくるディックを見ていたらだんだん腹が立ってきて、
「いった……何しなさるんですか!オリヴィア様!」
気がついたら頭を叩いていた。
「……なんとなくむかついて」
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