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第4話 ファミレス作戦会議3

 告白。どうやら先輩は、本気で悠斗のことが好きだったらしい。確かに先輩が悠斗と付き合ってしまえば、現実的に水蓮寺が悠斗と付き合うことはできなくなるだろう。でも、それならどうして先輩は()()告白のことを言ったんだ?


 頭の中で混乱がひた走る。しかしそんなことには構うことなく、先輩ははにかみながら顔をかしげていた。


「一条君はどう思う? 私が悠斗に告白したら上手くいくと思う?」


「そりゃあ、先輩は美人ですから上手くいくんじゃないですか」


「そういうことじゃなくて……、ラブコメでいったらこの告白が上手くいくのかなって聞きたくて……」


「なるほど。そういうことですか」


 ここが普通の世界じゃなく、ラブコメの世界なのであれば、おそらく先輩が思うように展開が進むことはないだろう。物語の序盤でヒロインの一人が告白して、それが主人公に上手く伝わらないのはもはやお決まりの流れだ。


 だが、先輩はそんな答えは望んではいない。先輩が望むような展開にするにはどうするか……。それが俺に託された使命なのだ。俺は久しぶりに腕を組み、思考を巡らせた。


「先輩が普通に告白しても、上手くいかないと思います。でも、ラブコメのテンプレート的な展開が発生しないように調整すれば……」


「私と悠斗は付き合えるの!?」


 途端に満面の笑顔になり、勢いよく立ち上がる先輩。俺は思わず顔をしかめる。それに気づいた先輩はそっと席に座り直した。


「ごめん……、一条君には関係ないのに勝手に盛り上がっちゃって……。一条君も私と同じでまだこの変化に慣れてないのに、こんなこと頼んで……」


「いや、大丈夫です。俺も悠斗のことが気になっていたので。先輩の告白、俺にも協力させてください」


 俺は先輩にいらぬ心配をさせないように、即答する。実際は悠斗のことを真剣に気にかけてなんていないが、こんな美少女が依頼人なら断るわけにもいかない。


「ありがとう。じゃあ、どうやったら私の告白が上手くいくか教えてもらってもいい?」


「まず、告白をする場所は人通りが少なくて静かなところにしてください。大体ラブコメの主人公は周囲がうるさくなくても難聴になりがちなんで。あとは先輩がはっきり好きと言ってくれれば大丈夫です」


「本当? それだけで大丈夫なのかな? 何か他に対策したほうが良い気がするけど……」


「本当のことを言うと、告白を邪魔する手段は予測できないと思います。人でも物でも自然現象でも、告白を妨害する手段なんてラブコメではなんでもありなんで」


 俺は仕方なく思っていたことを正直に答える。そうだ。現実では起こらないような出来事が平然と起きる世界で、完璧な対策を考えろという方が難しい。先輩もそれを認識したのか、頬杖をつきながら雨が降りしきる窓の景色に目を移していた。


「しかも、この告白が失敗したら先輩はだいぶ不利になります。あくまでラブコメ的な展開であればですけど……」


「つまり、私がすぐに告白するのはやめた方がいいってこと?」


「……そういうことになります。それにまだこの世界が完全にラブコメのテンプレートに従って動いているとも言えないので、しばらく様子を見たほうが良さそうですね」


「そうね。私も今日は動揺しすぎていたみたいだわ。もう少し冷静になって、じっくり考えたほうが良いわよね。一条君、気づかせてくれてありがとう」


 先輩の顔からはさっきまでの緊張が消え、いつもの落ち着いた雰囲気を取り戻していた。それを見て、俺は安堵のため息をついた。

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