表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

第11話 桐葉と部活2

「一条、お前! こんな可愛い妹居たのか?」


「え、あなた達兄妹なの? 桐葉ちゃん良かったわね。こんなお兄ちゃんに似てなくって」


 俺と桐葉が兄妹だったことが余程衝撃的だったのか、悠斗と水蓮寺はしばらく俺に質問し続ける。しかし俺にはそんな質問に答える余裕は無いことを察知したのか、代わりに桐葉が返答をした。


「私とおにいは義理の兄妹なんです。春に両親が結婚した関係で……」


「ああ、そういうことか。てっきり一条が何年も妹のことを隠してたのかと思ったぞ」


「はい! じゃあこの下り終わり! ねえ、じゃあもうそろそろ桐葉ちゃんの依頼を言ってもらってもいい? 私もう楽しみで仕方なくって!」


 俺の話を続けるのが耐え切れなくなったのか、水蓮寺は強引に話を切り替える。すると桐葉は急に元気が無くなり、真剣に悩んでいるような素振りを見せた。家でも元気で明るい桐葉の悩み事か。俺も少し考えてみるが、全く思いつかない。そのうちに桐葉は目をうるませながら話し始めた。


「その……、実はですね……。私には義理の兄がいて……。1か月間二人暮らしをしてるんですが、全然仲良くなれないんです。私は自分から積極的に話しかけるようにしてるんですけど、兄は全然心を開いてくれなくて……。だから……、隷属部の皆さんに兄と仲良くするお手伝いをしてほしいんです……」


「分かった。それで桐葉ちゃんはどうやってこのクズ野郎と仲良くなるつもりなんだ?」


 いつの間にか悠斗は黙って俺の首を腕で締め、水蓮寺は汚物を見るような視線を向けていた。もう、俺は隷属部の中でも底辺になってしまったか……。兄が人権を失い絶望する姿を見て、桐葉は昨日と同じように悪戯っぽく微笑んだ。





「おい、桐葉。これは一体どういう状況なんだ?」


「おにい、今は勝手に話すのはダメだよ。おにいは奴隷で私はご主人様なんだから」


 俺が四つん這いになり桐葉を背中に乗せた状態で問いかけると、桐葉は上機嫌に物騒な内容を口走った。そうか、俺はもう奴隷になってしまったのか。俺はもはや歯向かう気力もなく、こんなおかしな状況をすんなりと認めてしまっていた。


「分かりました。ご主人様、私は何をしたらいいでしょうか?」


「おお! おにい分かってるね。じゃあ、とりあえずこのまま旧校舎一周行ってみようか!」


「え、流石にそれは……」


 俺は正気を取り戻し、抵抗しようとする。しかし、後ろを振り向くと水蓮寺が鬼のような形相でこちらを見ていることに気がついた。俺は観念して大きくため息をついた。


「分かりました。やります」


 俺は桐葉を背中に乗せて廊下を進み始める。兄が従順に従う姿に、桐葉は静かに笑い声を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ