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第10話 桐葉と部活1

「ねえ、おにい今日のご飯はどう? おいしい?」


「ああ、おいしいよ……」


 義理の妹との夕食。いつもと同じように俺は黙々と食べ進める。しかし、なぜか桐葉は不服そうな様子だ。


「おにいってさあ、今まで私とまともに目も合わせてくれたことないよね? 何で私のほうを見てくれないの? ねえ、なんでなの!?」


 桐葉はいきなり椅子から立ち上がると、重心をテーブルに乗せて俺に顔を近づけた。おおっと、危ない。俺はいつものように視線を下げる。しかし、そこには……、胸だ。プライベートモードで無防備な状態の〇《まる》二つが直接俺の目に飛び込んできた。


 ああ! ダメだ。ダメだあああああ! 俺は反射的に逃げようと躍起になる。その瞬間、椅子は後ろに倒れ、俺は頭を強打した。


「おにいってさ、急に動きがダサくなるよね……」


 俺が頭を押さえて床を転げまわっていると、桐葉の哀れむような言葉が浴びせられる。うう……、妹よりも自分の未熟さが憎らしい。俺は数分間苦悶した後、何食わぬ顔で夕食を再開した。


「……おにいって、私になにか隠してることあるでしょ?」


「ええ!? い、いや別に…………」


「ほらー! やっぱりなにか隠してるじゃん! 早く私に教えてよ。なに? なにがあったの?」


 勢いづいた桐葉は俺に質問攻めを食らわせる。ああ、完全に主導権を握られている。今日はもうダメだな……。俺は仕方なく隷属部のことについて話した。桐葉は俺の話がいつもより長かったからなのか少し意外な様子だったが、丁寧に相槌を打ってくれた。


「へーじゃあ、おにいはその隷属部っていう部活に入ったんだ。で、隷属部ってなにするの?」


「まだ具体的な活動内容は決まってない。というか、隷属部を作った部長ですらよく分かってない感じだった」


「どんな活動するかも知らないのに入部したの? え~、なんか怪しいな~」


 桐葉は腕を組んで少しの間考えるようなしぐさをすると悪戯っぽい笑顔を浮かべる。俺はなんともいえない嫌な予感が一瞬背中を走ったような気がしたが、食事を終えてしばらくするとすっかり忘れて思い出すこともなく、そのまま一日を終えたのだった。





「隷属部の部員のみんな朗報よ。なんと活動初日から依頼人が来てくれました!」


 昨日と同じように空き教室に集まった途端、水蓮寺はもう待ちきれないといった様子で切り出した。そして、俺たちが反応してもないのにもう水蓮寺は扉に手を掛けている。


「じゃあ、みんな準備は良い? 私依頼人を連れてくるから盛大に出迎えるのよ?」


 隷属部のようなタイプの部活動では、一人目の依頼人が重要な役割を持つことが多い。男であれば主人公とヒロインの重大な問題を解決する。女であればサブヒロインとして物語の展開を広げるといった感じだ。つまりこの依頼人が、俺たちの今後の展開に強い影響を与える。さあ、どんな奴が来るのか……。俺は期待と不安が入り混じった硬い表情でじっと扉に集中した。


「お待たせ! この子が一人目の依頼人よ。じゃあ、中に入ってきて!」


「初めまして一年の一条桐葉です。あ、おにいがいた! おにい~!」


 桐葉が手を振ると、悠斗と水蓮寺は凄まじい速度でこちらに目を向ける。ああ……、今日も終わったな……。俺は静かに視線を落とし、昨日感じた嫌な予感を今更ながらに思い出していた。

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