第1章 依頼(1)
この作品は、一言で言うと『格闘アクション』です。
作者としましては、一応『香港やハリウッドのアクション映画(カンフーアクション+銃撃戦)』
のような物語を書いていこうと考えています。
拙い文章の上に理屈っぽい所が多い作品ではありますが、
上記の物が好きな方などに読んで頂けると幸いです。
ご意見・ご感想などありましたら、遠慮無くどんどんお願い致します。
第1章 依頼
1.
−8月14日 16時30分
「うわっちょちょちょっ、ちょっと待った!!タンマタンマ!!」
坂本羽矢人は、大慌てでゲームコントローラーを動かした。
しかし、時遅し。
ゲーム画面には大きく、『K.O』という文字が映し出された。
「また負けたーっ!」
羽矢人は、コントローラーを放り投げた。
「なんだ。また負けたのか」
羽矢人の近くで漫画雑誌を読んでいた辻内堯誠は、雑誌から顔を上げて羽矢人に聞いた。
「また負けた!!」
「ダッセ」
「なんやと!コラ!」
からかうように言った堯誠の言葉に、羽矢人の目が三角になった。
「お前また超必殺技、出し惜しみしただろ」
「出し惜しみなんかしてへんて。ただ、最後にドカーンと格好良く決めようと・・・」
「だから、それが駄目なんだよ。
相手はボスなんだから、ゲージ溜まったらすぐに超必殺技を連続技に組み込んで攻めないと」
と、堯誠は雑誌を閉じて言った。
「そんな、いきなり使ったらもったいないやないか!
ええか?ああいうモンはな、最後に華々しく決めてこそ、その価値が・・・」
「さっきから、それで負けてんだろ」
「それを言うたら、身も蓋もないやろ」
堯誠の冷静な指摘に羽矢人は口を尖らせながら、放り投げたコントローラーを拾い上げた。
ゲームは既に、タイトル画面に戻っている。
「よーし!リターンマッチや!」
と羽矢人は気合いを入れながら、コントローラーのスタートボタンを押す。
「リターンマッチや!って、もう10回越えてんじゃん。再挑戦始めて。
ていうか、いつも最初からやり直さないで、ボス戦の所でコンテニューすりゃいいのに」
「うるさいのう。外野は黙っとれ。
俺はな、お前みたいにクリアできればそれで満足っちゅう、つまらんプレイはせんのや。
もっと内容のある、クリアするにもこうビシッと決まる・・・
いわゆる『魅せるプレイ』を追求しとんのや!」
「いや・・・魅せるプレイは分かるけど、難易度設定が最低の状態で負け続けている状況をもっと・・・」
「シャラーップ!!」
画面を見たまま堯誠の言葉を制するように言うと、キャラクターを選択してゲームをスタートさせた。
ちなみに使用するキャラクターも、さっきからずっと変わっていない。
「・・・そんなに『魅せるプレイ』がしたいなら、改造コードでも使えよ」
「拒否!・・・っと、ヤバイ!食らった!!くっそ!やりおうたな!!倍返しじゃ!!」
と、堯誠が言った言葉を一蹴すると、羽矢人はせわしなくコントローラーを動かし始めた。
「やれ やれ」
と堯誠は呟くと、さっき途中まで読んでいた漫画雑誌を取り、まだ読んでいないページを開いた。
坂本羽矢人 現在29歳
辻内 堯誠 現在28歳
年齢・学年が、共に同じの『同級生』だ。
出会ってからもう、かれこれ8年の付き合いになる。
二人が初めて顔を合わせたのは現在の職業に就く前、別の職に就いていた時だ。
偶然にも同業者であり、年も同じだったため意気投合。親友となった。
その後、紆余曲折あって二人共その時生業にしていた職業を辞める事になり、
二人そろって現在の職業へ転職した。
ちなみに今の職業では、二人はコンビを組んで仕事をしている。
結局、羽矢人はその後5回ほど『リターンマッチ』を行って、ようやく念願のオールクリアを達成した。
「よっしゃーっ!!!見たかボケェ!!!」
エンディングが流れる画面の前で、大きくガッツポーズを作る。
そして、堯誠の方を振り返り、
「見たか!俺の信念を!」
と、どうだと言わんばかりの顔をした。
が、
「あれ?」
そこに堯誠の姿は無かった。
「あいつ、何処いきおった!?」
と言いながら、辺りを見回していると
「あん、呼んだか?」
と、堯誠が居間に入ってきた。
「呼んだか?じゃないて!クリアクリア!ワンプレイクリアしたで!見てみい!」
「おー!とうとうクリアしたか」
「やっぱり、最後はああいう風に魅せるキメ方をせんとな!」
「そりゃあ良かった」
そう言いながら、堯誠はキッチンに向かうと冷蔵庫を開けて、
アクエリアスのペットボトルを取り出した。
そして、食器入れからグラスを取りながら
「ハヤト、アクエリ飲むか?」
と、羽矢人に聞いた。
床に寝っ転がって、クリアの余韻に浸っていた羽矢人は
「ん?おお、頼むわ」
と堯誠に答えると、
「いや〜・・・余は満足じゃ!」
と言って大きく伸びをした。
が、すぐに「あ、そうや!」
と、何かを思い出したように呟くと首を上げて堯誠に言った。
「おい、タカ!俺のジュースは・・・」
「分かってるよ。氷入れんだろ?」
「ご名答。よろしゅう頼むで!」
「注文が多い野郎だ」
堯誠は小さくかぶりを振りながら呟くと、グラスに氷を放り込む。
ちなみに『ハヤト』というのは、今の職場で付けられている羽矢人の愛称であり、
『タカ』は堯誠の愛称である。(非常に単純だが)
「ほいよ」
堯誠は、氷を浮かべたアクエリアスのグラスを羽矢人に渡した。
「あい、どーも、おおきに」
と羽矢人は体を起こしてグラスを受け取ると、それを一気飲みし大きく息をついた。
「カァーッ!苦しい戦いに勝利した後の、アクエリアスは格別や!」
「ハヤト、まだ足りないなら冷蔵庫にボトル入ってっから」
堯誠はカーペットの上に腰を下ろすと、アクエリアスを一口飲んで言った。
「いや、取り敢えず一杯でええよ。この部屋クーラー効いとるし」
と、羽矢人はグラスを近くの座卓に置くと、背中を少し倒して左手を床につき体を支えると、
ポケットから携帯電話を取り出す。
「ところで、今何時や・・・?」
ディスプレイを覗き込むと、『17:40』と表示されていた。
「・・・なんや、もうこんな時間かいな?はっやいなあ」
少し驚いた声を上げ、近くにあったリモコンを取りテレビをつけた。
見慣れた女性アナウンサーの顔が、目に飛び込んでくる。
「お。ウスイさんや・・・・・」
一人ブツブツ言いながら、リモコンを傍らに置く。
「ハヤト、8に替えてくれ」
と堯誠が言った。
「8?なんで?」
「いや、この時間は8見てる事が多いから」
「あ、そう。別にええで。お前の家のテレビやしな」
羽矢人がそう言って、チャンネルを替えた時−。
座卓に置いてあった、堯誠の携帯電話が鳴り出した。
「誰だろ?」
と、堯誠が携帯電話に手を伸ばす。
「タムちゃんやな」
羽矢人が、テレビから目を離さず言った。
「んなバカな・・・・・・・ってホンマや!!」
羽矢人の言葉を鼻で笑って電話を見た堯誠は、思わず叫んだ。
羽矢人の言葉が的中していたからだ。
「!」
羽矢人はテレビに集中したまま、右手の指を勢いよく鳴らした。
何かあると指を鳴らすのは、羽矢人の癖だ。
ちなみに堯誠の方には、何かあると人差し指を立てる癖がある
「ビンゴや。さっすが俺やな・・・っていうか、お前東京人やろ」
羽矢人のツッコミには耳を貸さず、堯誠は電話に応答した。
「はい、辻内です・・・・」