疑惑
ハルカは不思議な力でナツキのことを眠らせる。
目覚めたナツキはすこぶる調子がいい。
だが、体の異変に気付く。昨日のことは覚えておらずいったい何があったのか?
目が覚めた。昨日のことを覚えていない。
夕飯を食べ終えた後自分の部屋に戻って誰かが来たような...
いや、来ていないんだっけ?でも、清々しい寝覚めだ。
ゲームのやりすぎで疲れていた体も軽くなっている。
「ナツキ、ご飯できてるわよ」
「はーい、いまいくよー」
貞操帯は着けたままだった。そのまま1階に降りる。
ユキ姉は先に降りて食べているようだ。
「ユキ姉、おはよう」「今日は早起きなんだね」
「おはよう」「入学前にやっとかないといけないことがあるからね」
昨日と違ってすごく穏やかな表情をしている。可愛い。
いけない、息子が反応してしまう。だが、貞操帯をつけているから安心だ。
ユキ姉は朝食を食べ終えて直ぐ出かけてしまった。
俺も速攻で朝食を食べて自室に戻ろうとしたとき母さんが呼び止める。
「ナツキもたまに出かけてみたらどう?」
「そうだね、この後出かけてみようかな」
貞操帯が目立たないようにゆとりのあるものを履けば大丈夫だろう。
俺は自室に戻って貞操帯の具合を確認する。違和感を感じる。
先ほどまでユキ姉や母さんを見ていたはずなのに息子が起きていない。
貞操帯を外してみるがやはりお休み中のようだ。
俺はズボンを履いて母さんの所へ向かう。
俺は母さんをじっくりと見る。傍から見るとヤバい光景だ。
「あら、ナツキどうしたの?」
母さんを見て息子を見てまた母さんを見る事情を知らなければただの変態だ。
だが、息子はずっと寝ているようだ。
「ナツキ、あまり女の人の体をジロジロと見ない方がいいわよ」
「え、あ、ごめんなさい」
俺は母さんの声ではっとなる。確かにそうだ。
いくら母親でも異性の体を嘗め回すように見るものではない。
俺は母さんに平謝りして再び自室に戻る。
念のため貞操帯を着けて出かけることにした。
新作のゲームが発売されたこともあって出かけるきっかけはあった。
ゲームショップへは、電車に乗っていかなければならない。
良くも悪くも人の乗り降りは少なくシートには座ることができる。
当たり前のことながら視界に女性は入ってくる。
なるべく視線を合わせないようにしている。息子が反応してしまうからだ。
目的の駅に着いてすぐさまトイレに駆け込む。
息子を確認するがふにゃふにゃのままだ。何がどうなっているんだ?
その後ゲームショップに向かって目的のソフトを購入した。
途中たくさんの女性を目にしたが、息子が反応することはなかった。
中にはなかなか際どい服を着ている人もいたが無反応だった。
これはこれで病気だろう。聞いたことがある。これはインポテンツだ。
なぜだ、貞操帯を着けたまま寝ていたのが原因だったのか?
俺は複雑な気持ちのまま家に帰ることにした。
帰りの電車に乗ると見覚えのある女性がいた。ユキ姉だ。
自分の両側のシートに大量の買い物袋を置いて寝ている。
あまりにも不用心だったから隣に座ることにした。
俺が乗ってくる前にいろいろと盗まれてなければいいが。
昔、ユキ姉と買い物に行ったことを思い出す。
大量の買い物袋を二人で分足して持っていた。
だが、俺が途中でくたびれてしまって荷物を持たないと駄々をこねると、
ユキ姉は嫌な顔せず俺の分まで待ってくれた。
そのうえ、俺のことを気にして休み休み歩いてくれた。
その時には既に弟思いの優しい姉ちゃんだった。
思い出にふけっていると、降りる駅に到着した。
ユキ姉はまだ寝ていた。俺は買い物袋を全部持つ。
「ユキ姉、駅に着いたよ」
「んえ?」「あれ、ナツ?なんで?」
「ほら、急がないと扉しまっちゃうよ?」
「ちょ、ちょっと待ってよぉ」
ユキ姉は突然のことに驚いているようだ。慌てて電車から降りる。
「ありがとうナツ」「荷物あたしのだから返して」
「だーめ、あの日の恩返しがしたいから」
「あの日っていつの話よ?」
「さあ?いつだったかな」
「ちょっとー...」
息子が反応しなくなったのは生物として由々しき事態だが、
こうやって何も気にせずにユキ姉とコミュニケーション取れるのは嬉しい。
結果オーライってやつだろう。あの日のように仲良く家に帰る。
「ただいまー」
「・・・」
返事がない。母さんの靴は玄関に置いてあるから出かけてはいないようだ。
ユキ姉と顔を見合わせる。恐る恐るリビングの方へ向かう。
母さんはテーブルについて、頭を抱え込んでいるようだ。
「母さん、ただいま」
「あ、あら、おかえりなさい」「帰っていたのね」
「うん、ついさっき就いたばかりだけど」
「お母さんどうかしたの?」
「うーうん、何でもないの」「さあ、夕飯の支度をしなくちゃ」
ユキ姉も俺も何か隠していることには気づいた。ユキ姉は首を横に振る。
今は追及しないでおこうということだ。
とりあえず、買い物袋をユキ姉の部屋にもっていく。
「ありがとう、ナツ」
「これくらいなんてことないよ」
「お母さんどうしたんだろう?」
「何か隠しているようだったけど聞いていいことかな?」
「わからないけど暗いままのお母さんは嫌だな」
「夕飯の時も暗いままなら聞いてみよう」
「そうね、そうしよう」
その後、順番にお風呂に入る。貞操帯も外しておこう。
風呂場に向かう途中、母さんの顔色をうかがうが暗いままだった。
ユキ姉も俺も風呂上りはまっすぐ食卓に着いて待つ。
母さんの表情は未だ暗い。相当な悩みなのだろうか。
配膳も終え、全員が食卓に着く。
「お母さん、ずっと元気ないけどどうしたの?」
ユキ姉が切り出す。
「なんでもないの大丈夫」
「そんなわけないよ、お母さんずっと暗いままだもの」
「そんなことないわ、ほらこの通り」
作り笑いだということは俺でもわかった。
「大丈夫じゃないよ」「1年間はずっと母さんの顔を人より見てきたんだ」
「ナツキ...」
「そうだよ、いつもみたいな明るいお母さんじゃないと心配だよ」
「ユキネ...」
「俺達どんなことでも受け止めるから話してくれよ」
「・・・」
「お母さん、お願い...」
「実はね...」「明日お父さんが帰ってくるの」
「!?」
俺たち姉弟に電撃が走る。
お久しぶりです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
久々の投稿になりました。次はいつ投稿できるかわかりませんが、
なるべく頑張って投稿して生きたと思います。




