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俺の息子は別の生き物  作者: 9602
5/7

装着

久々の投稿となりました。

今回、なかなか各時間が取れずに遅くなってしまいました。


夕方頃母さんが帰ってきた。

夕飯の準備は割と早く終わり、俺たちは食卓に着く。

俺もユキ姉も何事もなかったかのように振る舞う。

だが、目を合わせず言葉も交わさない。とても気まずい。

母さんはすぐに気づいて尋ねてくる。


「二人ともなんだかよそよそしいけど、何かあったの?」

「っ!、な、何にもないよ!ねっ、ナツ?」

「う、うん、なにもないよ!」

「ふーん」


俺もユキ姉も動揺を隠せないままあれこれ言い訳をする。

気付けば二人とも顔を真っ赤にしている。

そんな俺たちを見て、母さんはニヤニヤしている。


「仲がいいのは良いことだけど節度は弁えなきゃね」

「だから、違うってば!」


ユキ姉と俺の声が揃う。母さんは余計に笑う。

昨日とは違い、賑やかな夕飯になった。

 俺は夕食後自室に戻り、押し入れにしまっていたアレを掘り起こした。

以前は、サイズを合わせることができず使わずにいたが、そうも言ってられない。

何とか見つけることができた。俺は早速装着する。

腰回りのベルトのサイズを合わせる。なかなかいい履き心地だ。

服の上から見ても触らない限りは分からないと思う。

そう「貞操帯」だ。これさえ着けていれば母さんやユキ姉の前でも堂々とできる。

だが、寝てる間に蒸れたり下敷きにしたりすると辛いので外しておく。

せっかくだし、明日からの食器洗いは俺がやろう。

そう決意して眠りにつく。


 「アホーアホー」


たまにいるんだ。アホーアホーと鳴く鳥が。

その正体がカラスだと気づくのには時間はかからなかった。

目覚めてすぐ貞操帯を装着する。

うむ、ジャストフィット。

とりあえず機能性に問題が無いか確認だ。真っ先にトイレへと向かう。

まあまあ、使い勝手は良い。下着に残り汁が点かないようにふき取って流す。

とりあえずトイレは問題なさそうだ。

さて、次は...


「母さん、おはよう」

「あら、おはよう」「今日は一段と早いわね」

「まあね」


俺は自分の息子の方に目を向ける。

なるほど、少し盛り上がりはするが目立ってはいない。

これならいける!


「母さん、配膳手伝うよ」

「あら、珍しいわね」

「今日はすこぶる調子がいいんだ」


俺は軽快に朝食が乗った皿をテーブルに並べていく。

母さんはそんな俺を見て少し驚いているようだ。

なんだ、こんなに簡単なことだったんだ。

我ながら自分を哀れに思ってしまう。


「おはよ...う?」

「あ、おはようユキ姉」「朝食で来てるよ」

「ナツ、大丈夫なの?」

「うん、今絶好調だからね!」

「そ、そうなんだ」


ユキ姉も少し戸惑っている。それも仕方がない。

実家に帰ってきて2日間兄弟と微妙な雰囲気になっている中、弟はけろっとしているのだから。

昨日のことを思い出してか少し顔が赤くなっている。

俺も顔が赤くなる。


「じゃあ、みんなで食べましょうか」

「はーい」


久々にいきいきとした俺を見てうれしいのか母さんは顔を赤らめている。

うれし泣きのの兆候だろうか。そう思うと俺もうれしい。

ユキ姉もいつもに増してモジモジとしている。

ユキ姉も俺が元気であることに喜びを感じているんだろうか。

俺はなんていい家庭に生まれたんだ。

感極まって泣き出しそうだ。


「今日は俺が食器を洗うよ」

「あら、それはありがたいわね」「けど、大丈夫よ」

「いやいや、やってなかった分俺がやるよ」

「いいから、母さんに任せなさい」

「!?」


一瞬何かすごい圧を感じた。

普段優しい母さんからは聞いたことがない声だった気がする。

背筋が凍りつくような悪寒を感じた。ユキ姉は何も感じていないようだ。

俺はこの時思った。普段温厚な人を怒らせてはいけないのだと。


「わ、わかった、よろしくお願いします」

「うん、それで良いのよ」


俺は少しだけシュンとしながら自分の部屋に戻っていく。

情けない。たかが貞操帯1つ付けたぐらいで調子に乗っていた。

そうだ、今まで不愛想にしていた俺が急に元気ハツラツだと気持ち悪い。

これは反省しなければいけないな。

 部屋に戻ってしばらくしていると誰かがノックをする。


「ナツキ、ちょっといいかしら?」

「う、うん、いいよ」


以外にも母さんだった。さっきのことをまだ怒っているのだろうか?


「何があったかは分からないけど、元気が出たようで良かったわ」

「え?うん、まあね」

「でも、ちょっと元気になりすぎかな」

「それって、どういう...」

「あなたにはまだ早いかしら」


母さんは優しく俺の頭を撫でる。その途端、強烈な眠気に襲われて目を閉じてしまう。

悪くはない。とても安らかな気分だ。

ただ、何があったのかは理解できなかった。

この後、起きたとしても理解できないし、そもそも覚えていないのだ。





「ユキネ、だいじょうぶ?」

「え?う、うん、多分」

「ナツキもユキネもそういう年頃だからね...」

「だ、だからそんなんじゃないんだって」

「違うのよ、そういう時期が来ているの」

「それってどういうこと?」

「そうねぇ、ユキネは大学生になるから話しておかないとね」

「お母さん?さっきから何を言ってるの?」

「ちょっとナツキが心配だから行ってくるわね」


そう言うとハルカは2階のナツキの部屋へと向かっていった。

ユキネは一人、リビングに取り残される。

不安を抱えながらも仕方なく食器を片付ける。


「あら、洗い物ありがとうね」

「ううん、これくらいなら大丈夫」「ナツは?」

「急に元気を出しすぎて疲れちゃったみたい」「今は寝ているわ」


茶を濁されたこともあってユキネはハルカを不審に思っている。

ハルカはそれを察したのか苦笑いする。

そして、ゆっくりとユキネに向かって話し始める。


「ユキネは異性の人を見ているとなぜかドキドキすることはない?」

「!?」

「やっぱり、その反応だと間違いないと思うわ」

「でも、私たちの年頃だと当り前だと思うけど?」

「好きな人の目の前だと尚更ドキドキするんじゃないかしら?」

「なにそれ、思春期だからって言いたいの?」

「似てるようだけど、ちょっと違うかも」

「違うってどういう...」

「ユキネ、実はあなた達は―――」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

継続するというのは難しいことですね。

家庭の事情で執筆する時間が大幅に減っていしまいました。

家庭の事情といってもとても幸福な意味でです。

完結するまでは上げていこうと思いますので、今後ともご愛読お願いします。

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