ある残念令嬢の1日~アルフォンス様が素晴らしすぎます! ~
ある日の昼下がり、ノートに走らせていた羽根ペンを静かに置き、憂いを帯びた表情を浮かべ、少女は言った。
「マリー。新しいノートを用意して頂戴。このノートはあと5ページしかないのよ……」
蜂蜜を糸にしたような金髪に海をそのまま閉じ込めたような碧眼。
窓から差し込む光が神々しさを引き立てていた。
窓辺にある書き物机に座っていた少女は百人が見ても百人が美少女だと認めざるを得ないであろう。
これだけ聞いたら大変絵になる光景かもしれない。
しかし、あるものが全てをぶち壊していた。
部屋中の壁に所狭しと貼られたブロマイド(非公式)である。
ちなみに写っている男性は全て婚約者のアルフォンスだ。
ソフィアが密偵を雇い、隠れて盗撮させ続けた成果の結晶がこの部屋と言えるだろう。
そんなソフィアだが、羞恥心や嫌われたくないという心は人並みに持っているためアルフォンスの前ではお淑やかな令嬢を演じている。
しかし、アルフォンスの前で気持ちを押し込めている反動もあるのか、自分の部屋の中では大変残念なことになっているのだ。
ソフィアに頼まれた新しいノートを持ってソフィアの部屋に戻ってきたメイドのマリーは呆れたように口を開いた。
「ソフィア様。 新しいノートを渡したのは3日前ですよ。何度も言っていますが、このスピードでノートを使い続けたらいくらお屋敷が広くても保管できなくなりますよ。」
「いえ。マリー違うわ。この『アルフォンス様の素晴らしさを未来永劫記録に残しちゃうぞ★ノートNo.892』を貰ったのは3日と8時間前よ。朝、散歩に行った時に稽古をされていたアルフォンス様の肉体の輝きを記すためには残りページが足りないからノートを貰ったじゃない。」
ソフィアは勝ち誇ったように声を上げた。
ドヤ顔で返答しているが、ソフィアは保管の問題を華麗に無視している。
「ソフィア様! そのご様子では分かっていらっしゃらないようですね。反省される気が無いようなので、新しいノートは暫くお渡ししません! 」
マリーが声を荒らげて言った。
どうやらソフィアのドヤ顔がマリーの逆鱗に触れてしまったようだ。
「そんな……殺生な……」
死にそうな声を出してマリーに縋り付くソフィアを冷ややかな目で一瞥だけすると
「反省してください。」
その一言だけを言って新しいノートを持って出ていってしまった。
その日の夜ソフィアの住む屋敷では一晩中
「ノートが890冊。891冊。892冊……1冊足りない。アルフォンス様の素晴らしさを称えられない……」
という声が響いたとか響いてないとかいう噂が流れた。
その日からあとはソフィアに新しいノートが潤沢に与えられるようになったそうだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
初投稿なのでお見苦しいところもあったかと思いますがお楽しみいただけたら幸いです。