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21 発明王トーマス・ブラウンの論文

タイトル変えてみました。

長いほうが受けがよいという情報を手に入れたので!

おかしかったら、ごめんなさい。

 今、私とベルトランは、寝台列車に乗ってリンベル帝国へと向かっている。

 相変わらず一等車で優雅な旅を楽しんでいる。


 今日のお昼は豪華にステーキ。

 ミディアムレアに焼かれたステーキをマデラソースでいただいている。

 う~ん。とってもトレビアン!

 これから行くリンベルの魔法学校ではこんな食事は食べられないだろうから、今のうちに堪能しておかなければ。


 そういえば、結局、私はリンベルの魔法学校に転入することとなった。


 リンベルの魔法学校・リーベヴァルトシューレは、帝都リンベルにある。

 大戦後、三年ほど経ってから設立されたリンベル帝国唯一の魔法学校である。

 大戦前にも魔法学校はあったが、その実態は人を殺傷するための魔法を学ぶ軍事学校であったため、戦争終結とともに閉鎖された。

 そして、平和のための魔法と、一般教養、道徳(宗教)を学ぶことのできる総合的な学び舎として新たに開校したのが、リーベヴァルトシューレなのである。

 全寮制の寄宿学校で、集団生活を送ることによって、規則、礼儀、自立心などの育成もプログラムされている。

 広く門戸が開かれていることで知られており、他国の優秀な学生、王侯貴族なども多数在籍している。

 ただし、「門戸が開かれている」といっても、この学校に入れるのは魔法の素養がある者だけだ。


 今ではどの国でも同じだが、魔法の素養があるかどうかは生まれたときに検査され、素養があるとわかれば国が成人するまでの生活を保障してくれる。

 単に親切心で、ということではなく、後々国益となる人物を育成するのが目的だ。

 リンベル帝国においては、魔法の素養がある者はほとんどリーベヴァルトシューレに入学させられ、政府の監視下に置かれる。


 この世界において、魔法使いの地位は非常に高い。

 これまでの歴史上、いかに優秀な魔法使いを有しているかで戦争の勝敗が決まってきたからだ。

 もちろん戦争以外でも、魔法は人類に多くの恩恵をもたらしてきた。

 医療、農耕、科学、文化、……影響を及ぼしてきた分野は多岐に渡る。


 だが結局は、戦争を有利に進めるために魔法使いたちは存在している。

 リーベヴァルトシューレを卒業した者たちは、すべからく国益のために働くこととなる。

 

 たまに働かずにのうのうと暮らしている人もいるけどね。

 例えば、長寿の魔法を身に着けて、貴族相手に長寿の魔法をかけてやることでパトロンになってもらうとか。

 こういうやる気のない魔法使いは軽蔑されている。

 田舎でぼーっとしてた私が言えたことじゃないけど……。


 学校に話を戻そう。

 リーベヴァルトシューレは、八年制で十歳から十八歳まで所属できる。

 生徒の数は約千二百人。一学年に約百五十人。職員の数は六百人。

 六百人いる職員のうちの約半数が授業や教育活動に従事していて、それ以外の人たちは、清掃、営繕、厨房、医療、管理などを行ってくれている。

 部屋は十三歳までは、四人で一部屋。十四歳からは二人で一部屋。十八歳になると一人一部屋になる。

 男子寮と女子寮は分けられており、お互いの寮には入れないことになっている。

 ちなみに、夜にこっそり逢引などはできない。

 なぜなら、夜は寮のチェックインがあり、寮長が必ず全員揃っていることを確認するからだ。


 三学期制で、今はちょうど二学期が始まったところだ。

 二学期は行事が盛りだくさんで、運動会と修学旅行、クリスマスパーティーがある。

 三学期にはプロム(ダンスパーティー)がある。これは最上級生を送り出すためのイベントだ。


 とまあ、こんなところだ。

 要は、スーパーマジカルエリートミリタリースクールってことね。


 私は生徒として、ベルトランは臨時の先生として潜入することとなった。

 もともとベルトランは王国の魔法学校で非常勤講師をしていたし、その名声は世界中に轟いている。

 私はそんなベルトランの推薦と、激ムズの試験をパス「したことにしてもらって」、転校生として扱われることとなった。





 私は食後のティーを飲み干し、駅で購入した科学論文を扱う機関紙に目を通していた。


「発明王トーマス・ブラウンがまた論文を投稿しているわ。『流体内における揚力の性質についての報告』だって」


「読んだよ。最近の彼の論文は中間報告的な論文ばかりだな」


「近年出した論文は『往復動的内燃機関の高効率化について』『軽金属の加工と強度について』って書いてあるわ。ベルトラン的には微妙な論文だったの?」


「微妙というわけではない。相変わらずの閃きだが、何の役に立つのかわからないものが多い。かつては冷房機や電球など、革新的な発明をしていたのだがな」


「まあ、でも、科学って何の役に立つかわからないものが重要だったりするじゃない? 昔、ワットが蒸気機関を改良したときは、実験室でガシャガシャ動く模型を見て「これ何の役に立つの?」って思ったもん。でも今じゃ、それで動いている列車に乗ってるわけだし」


「たしかにな。我々では何の役に立つのかわからない発明でも、ブラウンの頭の中では何かアイデアがあって、それに向かってやっていることなのかもしれないな。……ところで、ワットとあなたは知り合いだったのか?」


「蒸気機関のピストンとシリンダーの改良に協力してくれって言われたのよ。わざわざバーシャム鉄工所まで呼び出されたわ。凄まじい努力家だったわよ。おかげで私も熱力学についてたくさん勉強できたし、最終的には大成功を収めたって聞いてすごく安心したのを覚えているわ」


「そうだったのか。そんな話、初めて聞いたな」


「口止めされてたのよ。シリンダー内の蒸気指圧計のことを誰にも喋るなって言われてたから。まあ、でも、もう時効よね」


「口が軽そうなあなたが、よく秘密を守れたものだ」


「そうそう、口が軽くって潜入捜査もすぐバレるのよねって、やかましいわ!」


 近頃は、本当に科学の進歩が目覚ましい。

 この調子で科学が進歩すれば、数百年、いや、百余年もすれば産業で魔法を凌駕するかもしれない。

 産業だけではなく、戦争において魔法が不要と言われる時代がくるのかもしれない。

 魔法を凌駕するほどの科学兵器の登場……。

 それはそれで、恐ろしいとは思うが……。


「あなたは潜入捜査が不得意だと聞いたことがあるが、大丈夫なのか?」


 ランベール。

 あなた、ベルトランになんでもペラペラ喋っちゃってたのね……。


「ま、まかせてよ! 年の功ってやつを見せてやるわ。それに、誰かを騙そうってわけじゃなく、単に生徒として過ごしていればいいんでしょ。それで、有事の際にだけ動けばいい」


「そのとおりだ」


「でも、転校生か~。こんな美少女が転校生として現れたら、学校中大騒ぎね。そういう意味では不安かも! ラブレターが机の中に入ってたり、放課後に校舎裏に呼び出されたり、私を巡ってケンカが起きたり、……困ったわね。潜入捜査どころじゃないわ!」


「心配せんでも、転校生ぐらいで騒ぎなど起こらんだろう。あなたが自分から騒ぎを起こせば別だがな」


「恋愛マスターの私が本気を出したら、そりゃとんでもない大騒ぎになるでしょうよ!」


「そうか、せいぜい本気は出さないよう頑張ってくれ」


「む……言ってくれるわね」


 またベルトランが「娘の話に興味のない厳格なお父さんモード」に入ってしまった。

 でもまあ、娘の恋愛話なら、耳を傾ける気になるでしょ?


「そんなこと言って、あなた。私とヴィクターのこと、気になってるんじゃないの?」


「あなたとエベル少将のことというと?」


「とぼけちゃって! ヴィクターが言ってたでしょう。あの人、私のことを口説いたことがあるのよ」


「ああ、昔のことだろう」


「だから! 口説かれたあとのことよ! 私がどう返事したのか、気になるでしょう」


「いや、別に」


「嘘おっしゃい! 愛しの師匠にどんなラブロマンスがあったのか。教えてあげましょうか。えーっと、えーっと……」


「必要ない。というか、あなたは生涯で恋人などできたことないだろう」


「…………は?」


「昔、ランベール様から聞いたぞ。「師匠は恋愛経験がないから、妄想することで心の均衡を保っている」と……。」


「…………」


「いつも自分のことを恋愛マスターだとか言っているが、それはクリスチアーヌとかサガンとかの著書を読んでノウハウを学んだだけのことだろう。つまり、妄想の域を出ていない」


「…………」


「まあ、せっかく若返ったのだから、学校で何かチャンスがあるんじゃないか? 前向きに考えれば……」


「…………」


「どうした?」


「…………違うのよ! 違うの!」


「何が?」


「恋愛にはね! 二種類あるのよ! 実践派と理論派、私はどちらかというと理論派なの! いいこと!? もし大学に恋愛工学科なるものがあるとするでしょう? そしたら、私はたぶん修士、いえ、博士号を取っているはずよ!」


「ふむ。なるほど。面白いな。最近は博士号を取っても就職難にあえぐ若者が多いと聞く。そのことと、あなたが永久就職できないことをかけたわけか。なかなか気の利いたジョークだ。頑張れ。その調子でジョークのセンスを磨けばコメディアンにはなれるだろう」


「い、今は緻密な理論を組み立ててるところなのよ! もし私の恋愛理論を論文にしたら『ルヴュ・フィロゾフィック』にだって載ると思う! それだけ慎重に積み上げてる理論なの!」


「そうか。その積み上げた理論が崩れないといいな。ジェンガみたいに」


な、生意気な!


 ふん! いいもん、いいもん。学校に行けばモテるに決まってるもん!

 大人の色香で学校中の男子を混乱させてやる!

 傾国の美女・妲己ならぬ、傾校の美女・イリスの爆誕よ!

 待ってなさい! リンベルの小坊主ども!


 いや、でも、私、二百歳超えているから、それだと犯罪になるのかしら……。



感想お待ちしてます。

ポイントのほうも、よろしくお願いいたします。

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