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ぼっち希望は夢を見ない!  作者: 唯
第一章
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ぼっち希望は望まない!#4

 なっ、なんだと……。

 彼女からの問いに思わず固まる。え、いや、待て待て待て。俺はぼっちだから。そんなことはないから。この意味ありげな事実確認もきっと違うから。

 そう、ありえないのだ。俺にそんな淡い青春は。だから気のせい。だからしっかりと伝えよう。そう、しっかりと。


「い、いないです、けど……」


 ぎこちない返事になっていた。べっ、別にドキドキしてないんだからね!勘違いしないでよね!

 俺の中のツンデレで気を紛らわす。

 彼女からは、あっそ……と素っ気ない返事が返ってきた。どこかぶっきらぼうな彼女は少し俯き何かを考えているように見える。

 すると途端、またも睨まれ思わず背筋を正した。


「じゃあ、さ……」


 え、まさか、とうとう来るのか……。なわけないな。うん、でも言い出し辛そうにしている様子を見るともしや……やっぱりないな。


「じゃあ、あおとはどうなってるわけ?」


 …………ん?

 あお?誰?知らないよ、そんな人。

 表情でもなんのことやらと伝えると、若干の苛立ちが見えるような語尾を強く彼女は言い放つ。


「だから、あおだって!夏見葵だよ!」


 あー!葵だから()()ね。なるほどなるほど理解理解。

 どうでもいいことを理解し、本題。夏見さんとどういうわけか?どういうわけ、とは?

 答え方がよく分からないので、当たり障りのないような回答をする。


「あー、夏見さんですか。夏見さんとは特にこれといったわけはないですねはい。強いてあげるなら、クラスメイトですかね」


 よし、これぞ模範回答。と、思ったのだが彼女は一層訝しそうにこちらを見ている。うぅ……こわいよぉ……。

 そして、はぁと短いため息をつかれた。どうやら意味を理解していないことを汲み取ってくれたらしい。


「だからさ、あおとは付き合ったりしてないの?ってこと」


「はぁ?」


 思わず反射的に返してしまった。それくらいには素っ頓狂だったからだ。どうしたらそうなるの。俺とあの人ですよ?住む世界がまず違う。

 とりあえず、変な誤解を解かなくては。


「いや、ありえんだろ」


「だったらなんでお前なんかとあおは一緒にいるの?」


 なんかとはなんだ。俺だって一応良い方だろ。基本スペックは、そこらの男子どもよりか上な気がするぞ。特にぼっちというステータスだけ、数値が異常。みんなが百ならその十倍はある自信がある。はぁ、ぼっちのステータス高くてもチート無双とか出来んからなぁ。ステ振り絶対間違ってる。おのれ神め……。

 まぁだが確かに、側から見れば俺のようなぼっち陰キャと、彼女のような陽キャが話している姿は奇怪に見えるだろう。なんか申し訳ないな。よし、今度からまたぼっちらしくしないとな!……と、何回目だ?決断を変更したのは。

 答え待ちの彼女の顔はじーっとこちらを見ていた。

 ただ、その問いにはこちらも分からないために逆にこちらからも質問をしてやろうと、彼女に問う。


「それは俺が一番知りたいんだが……なんで君がそんなことを聞くんだよ」


 うっ、と言葉を詰まらせ返答に困る彼女。良いですねぇ、攻め受けの交代。アリですね!

 そんな余裕を持ったのも束の間。明らかに攻撃態勢に変わる。いや、元から攻撃態勢だったけども。ギラリと睨む視線はこちらへ、もう慣れたかな。あれだ、よく見れば反抗期の猫みたいで愛嬌あるな。うん、だから怖くない。怖くないよー俺。おっと、怯えていたのはこちらでした。

 明らかに今に触発しそうな空気が流れる。ダメだ、耐えられん。

 その時に、まさしく正義のヒーロー。遅れてくるのがお決まりの助け舟が入った。


「おーい、つゆー、いくらなんでも長い……」


 そこにいたのは夏見さんだった。こちらを見て、口をあんぐり開けている。

 彼女の方は、睨んでいた目を夏見さんの方へ移し尖った口調や一変。明るい、好意の含んだ口調に変わっている。君、そんな優しい目ができたのかい?


「あっ、やっほー夏見。ごめんごめん、今行くよ」


「あ、うん……なんかお邪魔しちゃったみたいだね」


 遠慮がちな声。視線はチラチラと俺たち二人を見ていた。

 いや、お邪魔どころかむしろ助かりましたよ。今度奢る飲み物のランク上げちゃおう!値段、水からエナジードリンクくらいにしちゃおう!


「まぁ、またいつか聞くわ。……あんまり調子に乗るなよ」


 先ほどよりも強さや鋭さは落ちたにせよ怖さは常にキープされている一言。

 ただまぁ、どうやら夏見さんが空気を変えてくれたようで、彼女、つゆさん?もそれだけ言い残すとスタスタと夏見さんの方へ向かっていき、俺を残して教室を出て行った。

 教室の外からは二人の会話が途切れながらだけども聞こえてきて、その声も次第に遠のいていった。

 いつもなら心地の良い静寂も、どこか呼吸がしづらい。そんな中、自身を確認するように、先までの唐突な出来事から切り替えるようにぽつりと事実確認を行う。


 俺はぼっち。ぼっちを望む。


 下手な関わりなんて望んでいない。ましてや、あんな怖い人こちらからお断りしたいと願う今日この頃の俺でした。


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