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ぼっち希望は夢を見ない!  作者: 唯
第一章
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俺はぼっちを希望する!#3


 食べ終えると、昼休みはあと二十分ほど。

 普段ならここで本を読んで時間を潰し、教室には残り五分、というタイミングで戻っている。

 早く戻ってもする事ないし、かたまって楽しげに話す奴らを見てると血涙してしまいそう。かといって、ギリギリに戻るとなんか数人の視線がこっちに向いて気まずい。……なんだよ、あ、やんのか。

 はい。すいませんでした。そんなメンチきる度胸なんてありませんでした!ほんと、メンタルがチキン。略してメンチキン。……ちょっと美味しそう。


 ただ……この横にいる人どっかいってくんねーかな……。


 そう思う左には夏見さんがスマホをいじっている。


 なんかSNS?系のアプリだよな……。そういうのはやってないから正直分からない。まぁ、やっていなくても世の中生きていけるしね!逆にそういったSNS関係の問題になった時に真っ先に容疑者から外される。良い事尽くめだね!というかそもそも、普段から大体のところで仲間外れなんですけどね。


「ねぇ、秋月君」


 唐突に夏見さんが話を振る。急に話しかけないでもらえますかね。女性に話しかけられるとか、そんな耐性身につけて無いんで。


「なに?」


「秋月君てスマホ持ってる?」


 馬鹿にしてんのかな。スマホなんて今の時代もうぼっちの必須アイテムになりつつあるんですよ。電子書籍やゲームなんかできるし、まぁ、俺は書籍は紙媒体派なんだけどね。さらにその上、スマホの画面下の方を操作しとけばなんかそれなりにメールしてる風に見えるという超便利必須アイテム。……なんか自分で言って虚しくなってきた。

 まぁ疑うのも無理ないよね。俺教室で大体寝てるか、本読んでるもんね。一昔前の人かなーとか思われたたらちょっとショック。そんなに老けてはないと思うんだけどなー。


「……持ってるけど」


 そう言うと、彼女は嬉しそうに声を弾ませる。そして、俺の方に画面を向ける。


「あ、じゃあさ!交換しよ連絡先!」


 向けられた画面の先にはQRコード。えぇーちょっとー恥ずかしいしー。とかなんとか、俺が連絡先聞いた時に高確率で返ってきた返答。照れ隠しカナー。

 分かってるけどそれを認めたら流石にぼっち希望も泣いてしまいかねない。

 こうして連絡先聞かれるのには慣れていない。ぼっち希望たるものむやみやたらに連絡先交換なんてしないほうがいいとは思うが、


「いいよ」


 別に断る理由もないしな。それに、交換したとしても着信が来ることなんて滅多にない。あるとすれば、事務連絡か、ゲームの紹介したらポイントゲット!みたいなやつ。そこで紹介されるゲームって大抵やったことあるんだよなー……。


「やったー!」


 嬉しそうだな。そんな顔されたら勘違いしちゃうからね。やめようね。

 とは思いつつも実際ちょっと嬉しい俺でした。仕方ないだろ!友達居ないだけで、普通の男子高校生だぞ!……普通ではないか。


 ヴーヴー


 右手に振動が伝わる。画面をのぞくと隣の奴から。


『よろしくー!』


 隣にいるじゃん。彼女はえへへーと眩しい笑顔でこちらを見ている。その笑顔がどこか少しおさなげで、思わず可愛いと思ってしまった。

 動揺を隠そうと、適当に話題を変える。


「そういえば、授業中何か言ったのか?口ぱくぱくさせてたし、なに?金魚の真似?」


 冗談混じらせて聞くと、つっこんでくれたが次にはむすっとして声のトーンを落として話す。


「金魚じゃないし!……だって秋月君、また後でねって約束したのにずっと逃げてたから……約束破るなって……」


「おっおう、それは…………悪かった」


 そこまで落ち込まれると弱る。人に耐性がなければ女子なんて耐性どこの話ではない。そんな悲しげな顔されると謝ることしかできない。


「今度は、ちゃんと話そう……ね?」


 上目で少し右に顔を傾ける。やっ、やめろ!そんな顔されたら、断れないだろー!と、光に呑まれ存在が浄化されそうになるのを堪えて返事をする。


「うっ、わっかった」


 つまり詰まりな返事をすると、彼女は今までの表情から一変させ、笑顔に戻る。くっ!危なかった、危うく勢い任せで告り爆発しているところだった。よし、息を整えろ、そして刻め。彼女は人気者。俺はぼっち。ぼっちはぼっち。ただのぼっち。

 まだ若干テンパっている俺の脳内はさておき、彼女は立ち上がると時計を見て言った。


「あ、それじゃあ私そろそろ行くね」


 壁掛け時計を見ると残り十分といったところだろうが。この時間だと俺も戻ろうかな。ただ、夏見さんと一緒にというのはやめておきたい。だから、ここはさもまだ用事がある風にして彼女を送り出す。


「おう、俺はちょっとあれしたら行くから」


 じゃあまたーと言いながら彼女はドアの前まで歩いていく。はー……。こんな長く感じた昼休みは初めてだ。もう経験しなくていいかな。


 ………………


 ドアの前でなに突っ立ってんだよ。別に名残惜しいとか思うほど長く居てないでしょ。早く行かないと俺が出る時間なくなっちゃうんですけど。

 しかし、彼女は一向に帰ろうとしない。どうしたんだ?と思いながら見つめていると、ゆっくりと彼女がこちらに振り返る。その顔はさっきの笑顔とは全然違う、青ざめて少し引き立った笑みだった。


「どうした?」


 恐る恐る聞くと、不安の混じった声が震えながら聞こえてきた。


「ど、どうしよう……ドア、あ、開かないんだけど……」


 …………はぁ!?


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