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ぼっち希望は夢を見ない!  作者: 唯
第一章
27/115

ぼっち希望は誘われない!

 今日は珍しく爽やかに朝を迎えた。

 いつもなら起きる時に何度も目を開けては閉じ、開けては閉じを繰り返して、再び襲いかかってくる睡魔に抗うことを習慣としてきたのだが今日はそんなことはなく。

 あれ、睡魔さん眠っちゃってるのかな? もうあなたのお仕事の時間ですよ。

 なんてことを考えているとどんどん目が冴え、思考がクリアになっている。

 おかしい。こんな事、生まれて一度もなかったはずでは……。もしかしたらなにかの病気にでもかかったのか? なら寝れば治るな。よし、寝よう。

 再度目を閉じても、全然眠れない。むしろ自然に目が開いてしまう。

 仕方がないので起きていることにした。

 カーテンは少しだけ開いていて、そこから澄み切った青空と太陽光が暗い部屋に一筋光を差していた。

 普段なら、「うわ……まぶしっ……これ絶対目悪くなるだろ……仕方ない寝て回復だ……」とか思ってイッツ・ア・ドリームワールドへの再入場を求めるのだが。

 え、まってなにこれ。青空を見ているとなぜか心が落ち着いた。目に優しい………これ絶対目良くなるじゃん。今ならランドルト環の最下まで見えそう。

 なぜこんなことになったのか、いまいち見当がつかないまま軽い体を起こした。

 スマホを開けばまだ五時。そういえば昨日寝た時間を覚えていない。体的には九時間ほどは寝た感じ。

 体が元気なことは異常としても、精神的にはいつもどうり悪かった。

 今日は体育祭の日だった。

 待ちに待っていない。職業ぼっち、タイプインドアな俺には最もと言っていいほど相性の悪い行事だ。あーめんどいなぁ。休みたいなぁ。いっそのこと、「今日は朝から爽やかに起きてしまうという病にかかったので病院に行きます。休みます」とか言おうかしら。うん、通るわけがない。

 それに、俺には待たせている相手がいるんだ……。

 とかなんとか、さもかっこいい風に言ったけれど現実はそんな甘々な展開ではない。

 さてと、作りますか。

 今日もまた、兄’ズ・クッキングが幕を開ける。

 弁当を冷ましている間に弟が眠そうにしながらリビングに来た。


「あー……ねむ。あれ、にーちゃんまた弁当三つも作ってる」


「まぁな。おにぎりでいいか?」


 朝食のメニューを聞く。


「うん。ていうかなんか今日いつもと違くない?」


「なにが」


「んー、なんかいつもより運気高そう」


 まじか……そんなに今日の俺はいつもと違うのか。運気高そうって何? 俺って普段そんなに不運オーラ出てる?

 弟からのよく分からない指摘は置いといて、俺はおにぎりに合うようにお湯を沸かしていた。

 いや、最近てインスタント味噌汁とかあって楽だわー。お湯沸かして入れればできるとかって即席なんたらは偉大だなぁ。まあ、生まれてこのかた味噌とかして味噌汁作ったことないんだけど。

 最近の若者はインスタント世代とでも言えるんじゃないかしら。

 インスタント世代。略してインスタ世代……別のものになってしまった。

 即席世代………なんか速そう。”常に速さを求めてる”をキャッチフレーズに採用してみてはどうだろう。英語でいうと、コンスタントにインスタントをウォント? やだ、すごいバカっぽい。

 まあ、しかし……速さを求める世代というのもあながち間違っていない気がする。最近じゃあスマホ、乗り物、食べ物……いろいろ最速を求めている。それが技術を進歩させている。

 ゆっくりまったりも時には大切なんじゃないかなぁ。

 ということで、今日の体育祭、徒競走とかも速さの他に芸術点とかつけない? 足腰に自身のない人も盛り上がれるんじゃないかな。

 誰に言うわけでもない体育祭種目のルール改正を求めつつ、沸騰したお湯をインスタント味噌汁の粉末に注ぐ。ついでに温かい緑茶も淹れた。


「はいよ」


「どもね」


 俺も弟の向かいに座り、朝食を取り始める。

 調子が変に良い今日はご飯がすすむ進む。

 改めて自分のおにぎりの旨さを実感していたところ、弟が遠慮がちに聞いてきた。


「……にーちゃんってさ、そのー……彼女とか、できたの?」


「何いってんのおまえ」


 やだなーこの弟は。そんなわけ無いじゃん。ぼっちだよ、俺。しかも望んでやってんだよぼっち。


「だってにーちゃん最近ほとんど毎日弁当一個多く作ってるじゃん」


 包みに包まれる前の弁当を指差して言った。

 ついに言われてしまったか、その話題に。

 仕方ないので弟にはところどころ端折りながら事のいきさつを話した。


「……つまりにーちゃんは飯で女の子を釣ったってこと?」


「いや言い方。それに条件を提示したのはあっちだし、どうせ体育祭までのこと。つまり今日までだから釣ったとか、そういった話じゃないよ」


 ねこさんとの契約はあくまで今日まで。つまり今日が過ぎればまたいつもどうり、ぼっちなライフが始まるだけだ。

 そう、いつもどうり。


「ふーん。料理……俺もやってみようかな」


「なんでだよ……あ、まあ紫陽(しょう)は料理覚えなくても作ってもらえるだろ」


「なにいって……」


 俺の意図することに気づいたようで、


「ばっ、何いってんの! まだ作ってもらったことねーから分からないし!」


「えー、つまんないの。じゃあ何? それならこっちから胃袋つかみにかかろうってか」


「うっ……それもあるけど」


 少々照れくさそうに弟は言った。


「その、にーちゃんが料理作ってるときとか、なんというかいい感じだから俺もやったら、その……まあ、そんなとこ。それに、料理男子はモテるって言うし!」


 最後のは無理矢理感があったがその前に。

 ………不意打ち、やめてくれませんかね。

 流石に照れるな。と思って、話を逸らす。


「ま、まあこれ以上お前がモテると嫌だから教えないわ。やるなら勝手にやって」


「言われんでも教わらんわ」


 その後はお互い、なんとなく無言での朝食が続いた。

 …………ん? ちょっとまって。俺料理男子なんだけど。え? モテてなくない? 

 ねえ、モテてないんだけど。

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