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ぼっち希望は夢を見ない!  作者: 唯
第一章
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俺はぼっちを希望する!


 夏が嫌い。

 暑いし、汗かくし、虫もいる。何より、そんな虫どもよりも青春を謳歌せし者たちがどこからともなく湧いて出る。

 俺は、思うに青春は虚像に過ぎない。

 都会の、アスファルトが焼かれビル群の窓が日光を反射し、空気が淀んだ中の蜃気楼のような、蒙昧で曖昧な像。

 でも、そんな像でも殆どの人間が当たり前のように許容し、あたかも現実のように振る舞う。

ーーだから、俺は嘘が嫌いだーー


 と、ここまでだ。

 朝のチャイムが鳴り、俺の意識を強制的に現実へと引き戻す。ここは学校。窓側後ろから二番目。俺はぼっち。よし。

 事実確認を終え、今日も一日が始まる。正確には学校生活がだが。この確認も思えばもう入学してから半年はやってんのか……。

 そう思うと途端に周りの声が入ってくる。クラスの、所謂上位カースト者達は今日も楽しそうな笑い声を上げている。

 ガラガラー……

 教室前方のドアが開くと途端に話していた奴らは自分の席に向かう。入ってきたのは、担任である春宮先生(はるみやせんせい)だ。

 カツカツとヒールを鳴らし教団の前まで来る。いつもの事ながら、険しい顔だ。顔立ちが良いためか、余計に怖く見える。


「じゃあ号令」


「きりーつ」


 掛け声とともに椅子を引く音がクラスの中を走り抜ける。それが静かになれば、気をつけ、礼。と続き、再び椅子の引かれる音。

 着席し、先生の話をそれとなく耳に入れながら窓の向こう、外の世界をぼーっと眺めている。


 元々一人が好きだったから、今のこの状況にも容認している俺がいる。なんだって、誰かといることが必ずしも正義であるはずはない。……別に!ぼっちの虚しい言い訳とかじゃないし!

 

 そう、望んで一人でいるんだ。だからずっとこのまま、高校も、なんとなく過ごしていつか卒業していくんだ。

 そう思ってはいたものの、実際世の中うまくいく方が少ないのだと身をもって知ってしまった。


「あ!おっはよー!秋月君あきづきくん


朝のホームルームが終わり、一時限目の準備をしていると、そいつは俺に声をかけた。

 夏見 葵(なつみ あおい)、クラスの中の上位階層者のうち一人だ。明るめの色のショートボブ?を揺らし、元気が溢れた明るい笑顔が似合う顔立ち。美人というか、可愛いというか、まぁその間くらいの。つまり、高校男子からすれば狙いやすい位置にある。今日も懲りずに俺に話しかけるって、何?好きなの?

 まぁ、そんなこと思ってないってわかりますけどね。こんなぼっちの陰キャ、どっかの小説かラノベでもなければ惚れられるなんてことはない。たぶん、こいつはいい奴なのだろう。一人でいる者を放っておけない。そんな、責任感のある奴なんだろう。

 だけどね、夏見さん、そういうのはやめていいんですよ。ほら、あなたのお仲間であろう人たちは、また声かけてるよ。飽きないねー(笑)的な感じで見てますよー。


「お……おう」


 普段からあまり人と喋らないせいか咄嗟に声が出ずそっけない返事になってしまう。だが、これでいい。こうやっていればいつか離れていくだろう。

 そう思ってもういくつ経っただろう。ほんとねばるな!もうここまで来れば尊敬だわ。

 

「あれー?秋月君元気ないなー、体調でも悪いの?」


 上目で結構本気で心配しているように見える夏見さん。そんな心配しなくても体調崩すほど生活習慣狂ってないんで大丈夫なんですけどね。


「いや、大丈夫だ。元気がないんじゃなくて話す気がないだけだから」


「なぁんだ、それなら問題ない……ってあるわ!問題あるわ!もっと話す気も出してよー」


 パァっと明るい顔になったかと思えば、今度は少し頬を膨らませて、むーっと怒ったような顔。表情豊かってこういうことを言うんだろうか。

 鐘がなり、彼女との間の空気に風が通る。


「あ、鐘鳴っちゃっちゃった!じゃあ、後でねー」


 いや、後でとか約束されてもな……。よし、次の休み時間からなんとなくトイレとか、離れたとこの廊下とか、階段とか往復しておこう。


 そうして、次の時間から決行した俺である。チャイム鳴りぎわで帰ってくる。中々スリルがあるなぁと、途中から楽しんじゃってました。


 ふと、授業中何やら視線を感じる。おかしいな、ぼっちに向けられる視線なんて三ヶ月もすれば消滅するはずなのに。初めの方とか、友達と話しているのにたまにチラチラとこちらを見るとかなんなん。あれ。俺別に悲しんでないよ?むしろハッピー。

 辺りを、気取られないように静かに見渡す。その正体にはすぐ気付けた。

 

 ……何見てんだよ、夏見さん……


 じーーっと、授業そっちのけでこっちを見ている。気のせいかと、疑いようもなく見られている。そんな暑い視線向けんなよ。夏なんだから余計暑く感じるだろ。

 口元は少しむすっとさせて頬を軽く膨らませている。ジト目で見ている彼女はなんとも……


 なんであんな可愛いんだろう?


 自然と湧いてしまった疑問にキモさを覚える。

 こちらが気付いたことに気付いたのだろうか、表情は変えず、ゆっくりと口を動かす。


「あ、う、お、う、あ、う、う、あ」


 発声練習かな?うん、発声してないけどね。


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