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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【49話】 覚悟

「お前らいけえぇぇ!」

賊頭の号令が下ると、盾に隠れていた賊共が一気に馬車に走り寄ってきた。

だいたいこちらの倍の人数、一人で二人片づける計算。

これを射たら乱戦ね… リリアの苦手な乱戦を覚悟、最後のこの矢は外せない。

矢で一死、剣で一死でリリアの最低限の責務は果たされる。

標的からこちらに走って来るのだ、しかも、荷台に取り付くことで頭がいっぱいなので動きが直線的、十分引き付けて狙い通りに喉元に一矢。

“よし、もう一人ならなんとか”リリアは弓から剣に換装。

と、荷台の淵により構えようとしたら、急に馬車が発車して、転倒しかけた。

「痛あぁぁい…」見ると積み荷の槍で太ももをざっくりと切っている。

とりあえず薬草で止血しながら見ると馬車が動き、荷台に取り付いた賊は護衛達にめった刺しされている。

“馬車で上手い事相手の勢力を分断してるのね!こんな戦い方あるんだ”リリアは感心。

馬車は誘うような速度でノロノロ走っていく。何回この手が通用するかわからないけど、もう一人一殺程度の数になった。勝てる!

リリアは再び弓を手に、直線的な動きになった賊の一人に狙いを定めた。



戦いは終了。頭と数名は逃げ出したようだが、追う必要はない。再起には当分時間がかかるだろうし、今日はもう襲ってこないだろう。

先行して逃げた馬車も合流。


皆、道々転がる賊の死体を丸裸にしていく。全部戦利して荷物に足すらしい。

どっちが賊だろうか?わかりゃしない…

「おもえも手伝えよ、リリア」と怒られるが

「あたし、矢と転がってる武器を拾うわ」とリリア。

「戦闘力は認めるが… 女護衛は使えねぇなぁ!」嫌みを背中に武器を拾っていく。

転がる賊の傍らから剣を拾う

“こんな剣で戦っているのかぁ”安い剣だが、良く研がれて手入れされているようだ。

喉に矢が刺さっている、自分がやったのかぁ… リリアは思う。

「…………」

“まだ… 生きている… けっこう息がある… 止めか… やりたくないなぁ…”

「おい… 女…」血を吐き、呼吸の度に喉をヒューと鳴らせている。

見ると、喉元から少し鎖骨の方へ外れて、生き延びている。

「女… やれよ… やれよ…」声無く呟く。

「……」

「やれよ……… たのむ… 苦しい…」

「…… 自分で決めた道でしょ… 覚悟なさいよ…」

「… おまえ… 極悪人め…」

“何であたしが、賊に極悪呼ばわれされなければいけないわけ?”

「…… そんなに望むなら自分でしなさいよ… あなたの剣…」

リリアは賊に剣を握らせる。怖い、止めなんかさせたものじゃない…

「…… 慈悲は無いのか…」賊が恨めし気に言う。

「慈悲… どの口が…」お願いいくなら早くいって… リリアは声を震わす。

賊は力なく震える手で剣を持ち上げると、自分の喉元へ…

どうみても、自分でかき切る力が残っているとは思えない…

「… こんな… 世の中… せいせいだ…」言うと賊は自分の剣を喉元に突き立てた…


「… っは… っが… っは…」

顔を背けていたリリアだが、見ると賊は苦しんでいる。全然刺せていな…

お願い、リリアの方が地獄よ、逝くなら逝ってちょうだい!

「… た… たのむ… じひ… じひを…」

「もう、あんた全然賊向きじゃなかったのよ!」リリアは泣きながら喉の剣に手をかける。

「やるわよ、やってやるわよ! 最後よ!言いたい事あるの?」大声で言うリリア。

血の池のドロッとした感覚がリリアの膝に伝わる。

「…… おまえ、しろうとか… やりそこないそうだな…… のこりのバツはあっちで… じひを… じひを…」

「か、かく… 覚悟!!」



「一人にどんだけ時間かかるんだよ」

「物語読んでるみたいだったぜぇ」

「リリアちゃんは矢を抜いてあげて、薬草でもつけてやるのかと思ったけどな」

「あんだけじらされたら、俺なら漏れちまう」

リリアは散々言われるが、男達の声も心なしか暗い。リリアには反論の気力も無い、吐きそう…

「身包み剥いだら集めて焼くぞ、次来るときにゾンビでウロウロされたらたまらん」


馬車は国境目指して再び山中を移動しだした。リリアが馬車から振り向くと枯れ草と油をかけて死体を焼いている煙が上がっている。

嘔吐しきったリリアは水をゆっくり飲む。

「おまえ程、残酷な止めを刺すやつみたことねぇよ」

「最後のもっとも苦しい懲罰だったんだろ」

「リリアには最後を頼みたくないなぁ」

散々言われる、当分は聞かされそうだ。

「やるならサッサとやれ、やれないなら手を出すな」ジャックにも注意される。

リリアはずっとうつ向いている。


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