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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【36話】 狂気の夜

リリアはリリアモデル装備が出来上がってくるまで、ギルドのお仕事とバイトに出ています。

今回はペコの紹介で中級以上の冒険者パーティーに参加。

今回の仕事の内容は、ある地主が土地を国に売却希望で、その土地にある、廃村、墓地、廃屋敷の魔物の掃討、リリアとペコを含めた9人パーティーとプラス国、不動産保険ギルドの査定人、地主の代理人の合計12人。戦力になるパーティーが9人なのは、10人以上、兵士、傭兵、冒険者ギルド所属者が集まる場合は、書類が複雑になり、パーティー保証費用等が跳ね上がる。怠ると不法集会、集団武器準備等の現行犯か扇動、国家転覆罪等で公安が動きかねない。武力の集結には国もかなり神経質だ。10人以上になる場合、普通は必要に応じて役人の目の届かない城外等で集合するのだが、今回は国の役人がいるので、安全基準重視。

戦力は前衛と後衛の二人一組に分かれて4組ありプリーストが一人バックアップ。リーダーは戦力外だが地主代理人の男。リリアは弓で後衛に配属されている、前衛の相棒は剣盾のリザードマン、かなりの手練れらしい。ペコも当然後衛、相棒は同じくリザードマン、鎧しかり鱗が生まれながらの鎧、天職。


掃討開始の初日:

廃村を制圧して、全員家屋で一晩を明かす。予想以上に魔物が蔓延っているが、まぁ順調。


二日目:

昼間、廃屋敷と廃村の中間にある墓地の掃討。道中、墓地ともに予想以上に魔物がいたが、何とか順調。夕方までに廃村にもどって夜中の墓地掃討戦の準備。

査定の書類に該当土地の昼間の治安、夜間の治安の項目があるらしく、夜間も入念に掃討するらしい。査定が上がる=土地の価値なので地主代理は掃討に入念。

夕方より、低気圧で天気が崩れ、土砂降りになる。

この時点で夜の墓地掃討作戦は延期かと皆思っていたのだが、地主代理が土砂降りの中、掃討戦を決定…

1日延びるとそれだけ傭兵料があがるため、強行を決意。全員反対したが、何せ雇い主であり、リーダーである、現場の判断で中止やむなしを条件に戦力は全員墓地へ行く。

ちなみに代理人達は、書類作成等を理由に全員家屋で待機…


二日目~三日目:真夜中、土砂降りの墓地

豪雨・雷雨の暗闇の中、魔法のイヤリングの通信も全然聞こえない。

リリアと相棒も作戦開始位置らしき場所まで来たものの、自分たちの位置さえ不確かだ。

こんな状態で弓も矢もあるか!って状態だし、当然形だけやって撤収だろうと相棒と話していると

「……… 今、イヤリング聞こえた?」リリアの聞き間違いでなければ、もう誰か墓地に突入している。

「あぁ、聞き逃したか… 俺達も行くぞ」と稲光の中、相棒が墓地に入ってく。

「あ!! ちょっと! あたし全然何も見えないよ!」リリアは慌てて呼び止めようとするが、豪雨で聞こえないらしい。とにかく作戦開始しているならこちらも合わせて動かなければならない。

ここから完全にパーティーは混乱してしまった。

通信は誰が何を言っているか全然わからない。

「ゾンビ多数!!スケルトンもいる!」

「え?撤退じゃないの?もう突入してるの?」

「ソールハンターに囲まれてる!」

「援護!援護がないぞ!」

「動けない、プリーストは!助けは?」

何が起きているかさっぱりリリアには分からない。

「ゾール? どこ?どこ?」相方の名前を呼びながら墓地に入る。援護射撃どころではない、剣とランタンを手に進むがほとんど見えない、相方はどこにいったの?皆どうなってるの?



リリア、ゾール、ペコと後衛の術士ヨルダの4人は墓地で固まっていた。

リリアは墓地で死霊共を相手に奮戦するゾールを発見合流。二人で奮戦しているところに、相方行方不明のペコが合流。周りの魔物を倒して落ち着いて来たところで、大けがしたヨルダも合流したのだ。ヨルダの相方も行方不明。

死霊系は生命活動に寄ってくるので、皆あまり動かないようにかたまって待機中。

移動せず、近寄って来るやつを確実に倒す、ゾールの作戦。

そのゾールは雨で体が冷えると動けなくなると、ペコの魔法と松明で暖を取っている。

問題はヨルダ。乱戦で、アイテム類を全部落としたらしく、ケガはリリア達のポーションを分けて回復したが、ゾンビに引っかかれ、ゾンビフィーバーに病むとパニックになっている。高熱発症とゾンビ化までに1週間程度ある上、先ほどリリアの解毒剤を飲ませたのだが、完全にパニック状態で教会に連れていけと大騒ぎしているのだ。

リリア達がいくら落ち着かせようと説明しても聞いてくれない。身を潜めたいのに大変な状態。


ゾールは一体いったい、近づく魔物を仕留める。ペコは松明、ランタン等に炎を送り続ける。リリアはヨルダを必死になだめている。ゾールの冷静さとペコの気力にかなり救われる。

秋口の豪雨に打たれ続けるリリア達なので、低体温症が出始めるのを、少しづつ気力、体力、精神のポーションを飲んで凌ぐ、ゾールの動きもだいぶ悪くなってきた。

ヨルダは大人しくなった、一安心だが大人し過ぎないか?大丈夫?リリアがヨルダに多めに精神のポーションを飲ませた時だった

「うげげげえええぇぇぇぇぇ、魔物め!私をゾンビにする魔物めぇぇぇ!」突然錯乱しだした。

「ちょ、だめ!ヨルダ!大丈夫!解毒剤飲んでる!飲んでるよ!」リリアはなだめるが、リリアを魔物と呼ばわり、襲い始めた。素手で凄い力。

「だめだめ!落ち着いて!魔物が集まっちゃう!痛い!ヨルダいたあぁぁぁぃ!」泥んこデスマッチの始まりだ、錯乱したヨルダの決死の攻撃。まさにデスマッチ。

魔物が一気に集まりだした。“ヨルダお願い正気に戻って!”

「そいつに、幻想薬と睡眠薬を飲ませろ」一人で団体を相手にするゾール、動きが落ちているが冷静だ。

「ペコ!薬!薬ちょうだい!」ボコられ中のリリア。

「無理無理!火を絶やせないわよ、薬はあるから自分でやって!」灯りは生命線。

「ペコ、お願いぃ、火なんてどうでも… ヨルダが… いだぃぃぃよぉぉヨルダやめてぇ」

「魔物おおおぉぉぉぉ、魔物退治よおおぉぉぉぉ」小柄な魔法使いなのに恐ろしい力のヨルダ。リリアに馬乗りになり、首を締めあげ、拳を振るい続ける。退治してしまうわけにもいかない、一番厄介。



雨が止み夜が明け始めた。

皆、軽度だが低体温になり、リリア達は身を寄せ合ってブルブルと震えている。ゾールも動けなくなっている。ヨルダを何とか寝かせてからはリリアが奮戦、何体倒したかわかりゃしない…

辺りが白み始める。頭を上げて見ると、リリア達は墓地の中、魔物もちらほら散見されるが問題なさそうだ。空には雲の切れ目が見え始め、朝日が木漏れ日となって差し始めた。

僅かな光だが、体が温まるのがよくわかる。

「朝日が昇るだけでこんなに感謝できるなんて… 父さん母さん、リリアは生き残りました。神のご加護に感謝」リリアの目に涙が溢れる。


「よし、いったん廃村まで戻るぞ」ゾールがぐったりしたヨルダを担いで立ち上がる。

「ゾール、魔物はリリアに任せて」リリアが弓を手に立ち上がる。

「皆乾かすから集まって」ペコは言うとポーションの残りを飲み干し、大きくオレンジ色の炎を灯した。


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