表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
66/802

【33.5話】 バーのお客様 ※ストーンヘンジ出発前の話し※

コトロに呼ばれ、リリアは階段を下りて、バー・ルーダの風に顔を出した。お店は繁盛している。結構な事だ。

「リリア、ちょっとお客の相手してください、忙しくって猫の手も借りたいところです」

「もう猫に手を借りてるじゃない」リリアが答える。

「リリたん、それは差別ニャン」ネーコとラビが笑う。

「ちゃんとバイト料もらいますからね、それから許可なくリリアのお尻触る客はひっぱたいて追い出しますからね」全然お客の機嫌を取る気が無いリリアだが、それはそれで人気があるらしい。


今日は特にお客が入れ替わり立ち代わり、コトロも演奏する暇がない。コトロ、ニャンとピョンがお客の相手とサービスをバンバン行う。リリアはカウンター裏で飲み物をついで、つまみを作る。

「リリアが出てるなら、今日は演奏より乱闘だな」

「今日は胸元、第一ボタンまで止めてるな」

「今日はお皿とグラスが何枚割れるか」

「あんまりからかうとほっぽり出されるぞ」

お客が勝手なことを言う。

“ニコニコしようと思ったけど、やっぱやめるわ”腹立たしい。

リリアは自分では短気だと思っていない。事実短気では… 無い… と思える…

が、気性が激しい。理不尽な事も嫌な事も結構こらえているのだが、あんまりおかしいと思えてくると絶対口を出さずにはいられない。言い出したら最後、自分をぶち通す。

リリアにしたら、そこまで怒らす相手も悪いと思っていて、それもそうなのだろうが、怒りだしてからの行動と内容が衝撃的過ぎて、リリアの我慢期間は誰の頭にも残らない。

まぁ、これはこれでありなのだ、お客の中にはこのリリアのぶっきらぼうサービスを見て喜んでいる人もいる。また、たまにニコニコ愛想良い時があると可愛らし。ギャップ萌えだ。

「はい、発泡酒」「炙りチーズアボカド」「サラダとカリカリソーセージ」「はい、ピリピリチキン」

わりかしテキパキと仕事しながら、腹が立つ相手にはコップやお皿をちょっと「ガン」と置く。うるさいやつは睨んで制す。

しつこいやつは「まだよ、あんまりうるさいと後回しよ」適当に黙らす。

一方、コトロ、ニャン、ピョン、お客も慣れたもので、適当にリリアをからかうが、あまり不機嫌になると、「胸元がセクシーだ」「装備がお似合いだ」「髪が綺麗だ」等ちょっと褒めながら、葡萄酒を御馳走するとリリアも結構ニコニコして、さりげなく胸元のボタンを外す。

単純明快、どちらが手玉にとられているやら…


リリアがカリカリソーセージ以上にカリカリだったせいか、ちょっと気を引いてもらって、葡萄酒を出してもらった。リリアもサービス精神を出して片目だけ笑ってあげる。

「さっきまで全員まとめてつまみだそうかと思ってたけど、機嫌よくなったんでつまみ出しますよん」っと渾身のギャグをかましながらおつまみを出すリリアだが、誰も笑わない。話に夢中で聞いてさえいない。

“なによ!もう絶対愛想振りまいてやんない”リリアはまた不機嫌。



店内もたけなわを過ぎた頃…

コトロもほろ酔いで演奏を続けている。ニャン、ピョンも落ち着いたところ。

リリアはカウンターの若いのの相手をしている。“若いの”と言ってもリリアよりは上だが、リリアは尊敬語を使わないので態度が大きく見えるのと、若いのの態度が特に良いせいだ。育ちがよい、郷士の子で小隊だが兵士隊長の位置にあるらしい。

バーに来るお客は粗暴で口が悪い連中が多いが、この若いのはリリアをレディ扱いしてくる。リリアにはわかりにくかったがどうやら、口説いているっぽい。

「気の利いた口説き文句があるなら聞くけど、リリアはお客さんとどうかならないのよ」

こんな小さなバーで狩り装備姿のお手伝を本気になって口説いているわけでもあるまい、適当にはぐらかす、慣れたものだ。郷士で小隊長ならもっと身の丈にあった娘がいるでしょう。


なんだかんだ時間が経ち、若いのもそろそろと席を立つ。

「残念だけど、また来ますよ」と、確かに残念そうだ。

「……… 一言であたしの気を引けたらお店の外で会ってもいいわ、デート?って言うのそれ?…」なんとなくリリアの思いつきだ。自分の事を高く評価してくれた事は確からしい、完封試合にしては失礼かも。

その場の全員が、“珍しい”っと言わんばかりにリリア達を振り返った。


「…… そのペンダント、趣味、実用ではなく… 形見だね、大切な…」

「………………………大切な形見なら、あたしにとって一番の実よ… 2週間程旅するの、その後ならデート、1回だけいいわよ」キョトンとしながらリリアが答える。

「では2週間と1日後に…」若いのは帰って行った。


「兵士でしょ?たらしニャン、リリたん泣かされるニャン」

「約束したらフラグるピョン、お互いにハッピーはないピョン」

「リリア、ああいうのタイプなんですね?意外です」コトロが言う。

「お店の客の慈善事業よ、勘違いしないでよ」

「そ?一番の殺し文句じゃないですか」コトロが笑う。

「… もういいでしょ、お皿洗ったら、あたし引っ込むからね」

リリアは言うと、汚れた食器類を片付ける。


「コトロ、景気の良い曲頼むよ」

お客がリクエストを入れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ