【22話】 舞台下のリリア
“けっこう高い櫓ねぇ”
リリアは浜辺の中ほどに建てられた櫓を下から見上げてみた。
練習でこの浜辺からなら射た事あるが、櫓の上なんて逆に慣れないかも知れない。両砦を見上げると、確かに木々の死角になっている場所もあるが、果たしてこだわる必要あったのだろうか?
で、リリアは櫓の下まで来て、状況待ちになっている。なんでイチイチすんなりいかないのか…
両軍から進行係りのような者と雑用係りみたいなのが来ていてもめている。
両軍がかけるバナーのポールの高さが少し違うという理由で、どちらの軍が高い方に自軍のバナーを掲げるか論争中なのである。なんで国の連中はこうも見栄っ張りなのだろうか。
面倒極まりないので、リリアがさっさと櫓に上がろうとしたら、両軍に羽交い絞めにされた。
「勝手な事しないでくれ」と言うのだ。
リリアからしたら、全て国のかってでこうなっているような物なのだが…
結局ポールの高さを調整しなおして事が収まる。
聞いたことがある商人ギルドのバナーも掲げてある。あれは何なのか尋ねたら、両軍ともここから資金や物資提供をしてもらっているらしいのだ。どちらが勝っても商人の一人勝ちは決定している。
“商人ギルドが力を持つわけねぇ”リリアは思う。
そして、ご存じのごとく誰かのスピーチ… はいはい、かってにしてください。皆どうしてこんなにスピーチ好きなのかしら?櫓の下にいるリリアでさえ、ほとんど聞こえない、いったい誰に向かって喋っているのだか…
商人ギルド代表者と名乗る男のスピーチだけ印象に残る。
「お陰様で、ギルドは好景気」的な事を言っていやがった。暗殺でもされてしまえ。
ようやくリリア、進行係と数名が櫓にあがる。いよいよか…っと思っているがまだまだ何かやるらしい。
まずはインタビュー。ここで喋って何になるのかと思ったら、魔法のイヤリングを通じて両軍に伝わっているようだ。さっきの商人詰んだな。
インタビューの内容が「戦争経済について」とか「生命の尊さとは?」とかお題がやたら深い。
村育ちのリリアには何と答えて良いのか見当もつかない。
ミスなんちゃらから花束贈呈。ミスなんちゃら可愛い。女性はいつでも花束貰うと嬉しいものなよねぇ。ただし、リリアは活動的なのでじっとしている植物と相性が良くない。帰ったらニャンとピョンに世話してもらおうと思う。とりあえず、買い物リストに花瓶を追加だ。
国歌斉唱。自軍は大合唱、相手は大ブーイング。国歌でブーイングはマナー違反じゃない?
まぁ、面白いから、じゃんじゃんやれぇ、くらいにしかリリアは思っていない。
天気は快晴、進行の遅延さえ目をつぶれば最高の舞台である。




