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勇者の血を継ぐ者  作者: エコマスク
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【18.5話】 リリアと戦闘技術 ※18話の数日前の話し※

 ランカシム砦に来て、一週間くらい経っただろうか?

リリアは傭兵混成部隊から弓兵隊に編入されていた。リリアにとってはありがたい。戦場において生存確率が上がることは何事にも代えがたい。

傭兵混成部隊は“挽き肉仕事”と呼ばれている。身元の明らかでない、実力にムラがある部隊は予備、正規兵よりも最前線に立たされる。当然相手部隊も同じこと。オーガ、オーク、リザードマン、ウルフマン、ベアマン等の戦闘民族に混じり、お互いに血で血を洗い、骨まで砕けるような戦闘の最前線に出され、その勝敗の後を、これまた大型兵器が屍を挽き肉に変えながら前線を拡大していく。死んでも生きていても挽き肉作りの一環。


リリアのアーチャースキルはかなり認められ、狙撃手をも勧められた。軍の狙撃手を務めるには、まだまだ訓練が必要だが、訓練次第ではそのレベルに成り得ると訓練教官に勧められた。狙撃手に採用されれば、兵卒長以上の職と待遇になる上、乱戦のような不確定要素の強い戦場には出なくてすむそうだ。

リリアはその話を保留にして、訓練だけ参加している。

向かって来る敵を倒すならまだしも、そうではない特定個人を相手に矢を射る事にリリアは抵抗を感じる。



リリアは傭兵に参加した事を有意義だと感じている。この数日だけでも、かなりの戦闘技術が向上し、自分の弱点もはっきり見えてきた。

父ガウが「お前はシェリフになれる」とは言っていたが、リリアに戦士になれるとは一言も言わなかった。恐らくガウはリリアに戦士、兵士になること自体望んでいなかっただろうが…

リリアは時々ガウの言葉にあった、シェリフと戦士になって戦うのとどう違うのか疑問に思ったことがあったが、軍の訓練でその答えははっきりと出た。

村で文明地に出てくる魔物や自己流で剣を振り回す盗賊とは格が違う。

今までリリアが対応してきた武器なんて剣と槍くらいだ、しかもほとんど人間相手。

まず、物理攻撃に限っても武器の種類が違い過ぎる。剣、槍、薙刀、ハンマー、モーニングスター、レイピア、ハルバード、クラブ、クロー、フォーク、アックス、名前を上げたらきりがない。それぞれ特徴を把握して対応しなければならない。中には隙と間合いを与えれば、これらの攻撃の間にダガーを投げ込んで来るものがいる。リリアにしたら農具の鎌でさえ、扱う相手によっては異形の武器に十分だ。

これらの武器を手にしたオーガやウルフマン等が圧倒的なスピードとパワーの差で踏み込んでくるのだ。

リリアには逃げ回るのが精いっぱいだ。盾や武器で打ち合わせて防御するなど不可能。盾の上からぶっ飛ばされくらいだ。まして武器で防御等何の意味も無い、体ごと真っ二つにされるだろう。

逃げ回り、死角を突いて攻撃しようと工夫したが、死角に入って踏み込もうとした瞬間に武器を持っていない空いた手で、張り手をされて弾き飛ばされた。人間相手にはあり得ない動き。こんな状態なら開戦のドラが鳴り終わるころにはリリアは死んでいるだろう。

彼ら曰く、研究、工夫等をすること自体、すでにリリアは向いていないという事。遠くから弓で狙い、近づかれたら逃げ回れと笑われた。くやしいがその通りだ…

傭兵をしていたガウとアランはこの中で生き残ってきたのか…

同じ人間とは思えない…


ガウがリリアに弓を与えた意味が今になってわかる気がする。

自分が勇者の子孫である事を誇りに思っていたガウがリリアを農家以外の道に進ませる精一杯の育て方だったのだろう。母メルはリリアが武器を持つことに最後まで反対だったようだが。

もしかしたら、二人ともリリアが村でじっとしているような性格では無い事を幼い頃から見抜いていたのかもしれない。



「父さん、母さん、あたし今の生き方満足してるのよ…」

リリアは兵舎のベッド上でペンダントを見つめながら呟いた。

辺りは大男たちの大いびきが響いていた。


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